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【星の瞬き】近いうちに必ず☆

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       「ジュンちゃん!面倒だからみんなまとめて連れて来たよ!」
 
        ヤマンバ綾美は何度も飛び跳ねながら満面に笑みを浮かべていた。

       「全然分からなかったよ!しかし見事なメイクだね、綾美ちゃん」
 
        イェーイ!綾美はど派手なネイルチップでダブルピースを連発した。

       「いったい何人いるの?まさかみんな綾美ちゃんの友だち?」 
 
        女の子をひとりずつ指差して数えはじめた俺は早々にあきらめる。

       「うーん。だいたいそうだよ。でもあんまし知らない子もいる。正確な人数はよく分かん

       ないけど、40人以上はいるんじゃない。ねえ?これでジュンちゃんとの約束はたせた、で

       しょ?」
 
        綾美はさっと俺に寄り添い、真っ黒に縁取りされた目を大きく見開いて俺を見つめた。

        ヤマンバ軍団の白い眼差しが俺たちに集中しているのがわかっていたが、俺はヘビに睨

       まれた蛙のようにどうすることもできなかった。相変わらず綾美の瞳からは恋するお姫さ

       まのように際限なく星の結晶が飛び散っていた。

       「綾美ラブラブ!イェーイ!ヒューヒュー!」
 
        一斉に同じフレーズをハモりながら女子高生たちは大歓声を上げた。

        俺は恥ずかしさのあまり心臓が破裂しそうなくらい暴れだし、思わず倒れそうになる。

        まるでJR渋谷駅南口構内が男子禁制区域に指定されてしまったかのように、ここは渋谷

       女子学院の花咲く青春のキャンパスだった。すべてが桃色一色に染まって見えた。

        一路インタープロへと向かう俺たちは、どの角度から見ても滑稽な集団として映ったこ

       とだろう。俺と綾美を先頭に、制服組から渋谷系、そしてヤマンバまで総勢40数名にも及

       ぶ女子高生の群れがつづいていた。目の色変えてナンパを仕掛けてくる渋谷系の男どもの

       姿もちらほら。この分だと何人が無事インタープロまでたどり着くことができるのかと俺

       は不安でしょうがなかった。そんな俺の横顔を見て察したのか、列が少しでも乱れると、

       綾美の罵声が飛んだ。

       「すいません専務。突然なんですが、今から45人近くの女子高生を連れていきますので、

       面接の準備をお願いします」

        俺の興奮した様子がケイタイを通じて石井専務にもはっきり伝わったことだろう。

       「なに!45人だって?よし!分かった」

        残暑の斜陽が樹木の光合成を促して空気の浄化作用が急速に進む時間帯。夕暮れ直前の

       木洩れ日は目に痛いほど刺激的だった。郵便局を曲がるとほどなくして12階建の雑居ビル

       が見えてきた。俺たち一行は30分もの時間を費やしてようやく事務所に到着した。
 
        するとどうだろう。さっそく40数名の女子高生たちはまるで窓ガラスに張り付いたヤモ

       リの大群のように事務所の様子を興味深く覗き見しながら、口々に勝手なお喋りをはじめ

       た。

       「なんか蒸し暑いしー超疲れたしー綾美!芸能事務所だったらもっと駅の近くに作るよう

       に交渉するー」

       「そもそも南口なんてダサくない?」

       「へえー。ガラス張りのオフィスなんて結構お洒落じゃん!さすがプロダクションってと

       こかな。ヤバっ!それって褒めすぎ」

       「なーんだ。もっと大きなビルだと思っていたのにマンションのワンフロアーだけ?」

       「あんまし大したことないじゃん」

       「あたしさーこないだ友だちとモリプロの事務所に行ったけどー、たしか30階建ビルの最

       上階だったよー!超差つくー」

       「まあこんなもんじゃん!綾美、どうでもいいから早くはいろっ!」

       「綾美ちゃん、少しだけみんなを待たせておいてくれる?一度に全員じゃとても入りきれ

       ないから、うちの専務と面接の段取りを打ち合わせてくるよ」
 
        そうは言ったものの、少女たちをこれ以上待たせては女子高生大ブーイング大会がはじ

       まりそうだ。大急ぎで登録手続を済ませないと面倒なことになるぞ。もし元チーマーコン

       ビが女子大生軍団を連れて来ていたとしたら?俺は事務所が天手古舞いになってないか心

       配だった。

       「本当だったのかジュン!しかしよくこれだけの女の子を連れて来たな」
 
        いつものようにデジカメで女の子の顔写真を撮影していた石井専務が、俺を見るなり驚

       きの声を上げた。
 
        どうやらパニックだけはまぬがれそうだ。高橋たちが連れて来た女子大生は5人だっ

       た。目を点にしてゴムでぶら下げたような顔で高橋がだらしなく口を開けていた。

       「ジュンさん、いったいどこの学校をスカウトしたんすか」
 
        すっかり高慢な鼻をへし折られた山田が恐れ入った様子で訊いてくる。

        多勢に無勢ではないが、高橋と山田がいくら本気でスカウトをしたところで、この45名

       近くの女子高生にはぜったい敵うまいと思ったものだ。
 
        口が達者な割にはみんな素直な?少女だったお陰で、登録手続きはじつにスムーズに進

       んだ。俺は持田みどりと組んで4名を同時に面接した。それにしても石井専務はすっかり

       デジタルカメラマンぶりが板についたようで、両腕でホールドしたデジカメの脇からやさ

       しい目線を送りながら、俺が舌を巻くほどの話術を駆使して彼女たちの表情を引きだして

       いた。

        最大の懸念であった登録料は、綾美の顔を立てるために一律で5千円に設定した。これ

       にはシビアな黒い眼鏡、大谷社長も目を瞑ってくれたそうだ。

        事務所からまたみんなを連れて駅に戻る道すがら、俺は大きな仕事を達成したという満

       足感に浸っていた。しかしよくよく考えてみれば、これはすべて綾美のおかげなのだっ

       た。俺があらためて礼を言おうとして、大人しそうに隣を歩いている綾美に微笑みかけた

       ときケイタイが鳴り出した。慌ててフリップを開くなりワン切りされてしまった。

       「そうそう。ジュンちゃん、さっき新しいケイタイに替えたんだ。今の着信が新しい番号

       だから。いつでもいいよ。アヤミを遊びに誘ってね。ねえ、わかってる?」
 
        俺が呆然とケイタイ画面を見つめていると、綾美は父親におねだりする甘えん坊の子供

       みたいに俺の身体を揺すぶった。

        俺は何度も頷きながら苦笑いを浮かべるしかなかった。どうやら俺はこの可愛いフェイ

       スにますます懐かれてしまったらしい。

                                          ーつづくー

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おーおーおー!!なんかすげよ★
よしゆきは才能がありすぎ!!
次回も楽しみにまっとるよ^^

2008/1/25(金) 午後 10:47 AYU

読むたびにコメントに困るくらい上手い{は

うちの小説まだ10話しか行ってない;;
頑張らなければ{あ

傑作してくねw

2008/1/26(土) 午前 9:52 [ *** ]

あゆみ、いつもありがとっ☆
次回も頑張るよー☆

2008/1/26(土) 午後 6:12 yos*i8*94

ありがとうー☆
さくらも頑張れっ☆

2008/1/26(土) 午後 6:13 yos*i8*94

訪問してみたら13話目行ってたんですね・・・・
(気がつかなかった。)

やっぱりすごいことになってた・・・。

次回を楽しみにしています。

2008/2/3(日) 午後 5:39 高崎紀希

紀希さん、ありがとうー☆
ぼくこそ更新の報告を忘れていたかも・・

2008/2/3(日) 午後 7:32 yos*i8*94

久々に来たら、すごい進んでた(吃驚

読むと、情景が頭にボンって浮かんでくる!
よしゆきサンの文才が羨ましいです^^

2009/3/18(水) 午後 5:49 瑞祈@メッセ返せません

覚えてくれててありがとう☆
ぼくもすっかり更新してなくてごめんなさい。。

2009/3/24(火) 午後 7:19 yos*i8*94


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