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東日本大震災で津波などによる大きな被害を受けた宮城県石巻市で20日午後4時頃、倒壊した住宅から阿部寿美(すみ)さん(80)と孫の高校1年生・任(じん)さん(16)が救出された。11日の地震発生から9日ぶり、約217時間ぶりの“奇跡の生還”となった。2人は家の台所にいた時に被災し、任さんは「冷蔵庫のヨーグルトなどでしのいでいた」と話している。
恐怖と空腹の中、がれきの下で救助を待ち続けた16歳の少年は、体にタオルを何枚も巻いて震えていた。足の不自由な80歳のおばあちゃんは、倒壊した家の中でレスキュー隊員と目が合うと「よかった…」と言って泣いた。
地震が発生した11日午後2時46分から約217時間、9日ぶりの生還だった。宮城県警によると、同県石巻市門脇町2丁目付近で不明者を捜索していた警察官4人が20日午後4時頃、住宅の屋根の上から「助けてください」と叫ぶ任さんの姿を見つけた。「まだ、家の中におばあちゃんがいる」との訴えで家の中を捜すと、クローゼットの上で布団にくるまり座っていた寿美さんを発見した。
県警は、消防のレスキュー隊と協力して2人を救出。同4時50分頃、複数の隊員に抱えられ家から運び出された寿美さんは「けがは?」「痛いところは?」との呼び掛けに、しっかりとした口調で「ないです」と答えた。任さんは「地震があった日から、ずっとがれきの下に閉じ込められていた」と説明した。
県警のヘリコプターにつり上げられた2人は、市内の石巻赤十字病院に搬送。2人とも軽度の脱水症状と軽い凍傷などはあるが、意識ははっきりしている。任さんは体温が28度まで下がって低体温症の症状が出ているが、救出されて雨ガッパ、カイロ、菓子を渡されると「ありがとうございます」と返事した。
被災した場所が台所で、わずかに冷蔵庫のドアが開いたことが2人の命をつないだ。任さんは「冷蔵庫にあったヨーグルトやコーラ、水などでしのいでいた」と話しており、ヨーグルト飲料や牛乳2本、お茶菓子などを口にして9日間を耐え抜いた。木造2階建ての1階部分は完全に押し潰されたが、2人がいた台所は2階にあった。市内は16日から断続的に雪が降り、最低気温が氷点下まで下がる寒さが続いていたが、2人は厚着をして毛布にくるまり、寒さをしのいだ。
左足の感覚を失い治療を受けている任さんは「(避難した)母親に状況を伝えていたが、途中で連絡が途絶えた。今日になって(がれきに)すき間ができたので外に出ることができた」と話している。任さんの父・明さん(57)は、救出後に会見し「(連絡を受け)探しに行ったが、家は(流されていて)見つけられなかった」と語った。阿部さん宅は両親、長男、任さん、寿美さんの5人家族。明さんは「(任さんは)おばあちゃん子で優しい。頑張るヤツなんだなと思いました」と感心していた。
大津波が直撃した石巻市では、20日午後7時現在で1826人の死亡を確認。救出現場は旧北上川の河口から約1キロ上流沿岸で、甚大な被害が出た地点のひとつだった。
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