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53・5キロが上限体重のバンタム級で5年間に10度の防衛を重ねた長谷川だが、57・1キロがリミットのフェザー級はまったく未知の階級といえる。両階級の体重差は3・6キロだが、この間にスーパー・バンタム級(55・3キロ以下)が設けられていることでも分かるように、ボクシングにおける軽量級の体重差は大きな意味を持つ。現に力量が接近している選手同士の対戦の場合、体格差が勝敗を分けることは多い。
日本では40年以上前、フライ級とバンタム級で王座を獲得したファイティング原田が3階級制覇を狙って2度、フェザー級王座に挑んだが、いずれもはね返されている。世界ではエデル・ジョフレ(ブラジル)ルーベン・オリバレス(メキシコ)ルイシト・エスピノサ(比)のようにバンタム級とフェザー級を制覇した例はあるが、いずれも転級後に何試合もテストマッチを挟んだ上での挑戦だった。原田も1年半の間に5試合をこなし、上のクラスに馴染んでから挑戦したものだった。
長谷川の場合はまったく状況が異なる。4月にWBO王者フェルナンド・モンティエル(メキシコ)に4回TKO負けを喫した長谷川は、その試合でアゴの骨を骨折するアクシデントにも見舞われた。それ以来の試合なのである。
常識的に考えれば、7カ月後の再起戦=2階級上の世界戦、という計画は無謀といえよう。しかも王座決定戦の相手は25戦全勝(18KO)の戦績を誇る新進気鋭で、体も大きい。長谷川自身「強くてデカい相手」とブルゴスを評しているほどだ。さらに先月末には最愛の母・裕美子さんが逝去したばかりでもある。
自ら望んだこととはいえ逆風どころか暴風雨のなかでの挑戦といえる。勝てば日本はもちろん世界でも前例のない快挙だが、負ければ暴挙と言われかねない冒険マッチ。
長谷川は自分に言い聞かせるように話す。
「ボクシングは一度負けたらリーチがかかるスポーツ。だからいまの俺は崖っぷち、背水の陣です。次の試合に関しても分かっているのは厳しい展開になるということだけ。でも、崖っぷちだから頑張れるということもありますからね」。
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