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○前橋商3−0宇和島東●(第2日第2試合)
先制した前橋商がエース左腕、野口の三塁を踏ませぬ好投で逃げ切った。一回に斎藤の右越え三塁打に始まり、後藤、箱田の連打に暴投もあって2点を先取。七回にも森沢の犠飛で1点を加えて差を広げた。宇和島東は二回以降、先発の山本が立ち直るなど投手陣は踏ん張りを見せたが、打線が3安打と振るわなかった。
◇155球の完封劇 創意工夫にあふれ…野口投手
身長163センチのエースは最後の打者を仕留めると、グラブを軽くたたいて軽やかにマウンドを駆け下りた。「身長が小さくなければこんな経験できなかったかもしれない」。115球の完封劇は、体格を補うための創意工夫にあふれていた。
キレのある直球の軌道を意識させた上で、多彩な変化球で仕留めるのが真骨頂だ。マスクをかぶる原田は「(サインを出す)指で対話するのが楽しい」と語る。唯一のピンチともいえる六回2死二塁では、右打者の外角低めに落ちる得意のスクリューボールで空振り三振。左ひざに死球を受けた直後の八回には先頭打者に安打を許すが、次打者をスライダーで併殺に仕留めた。いずれも、計算通りの投球だった。
加えてもう一つの武器があった。「あれがベストピッチだった」と振り返るけん制術。「餌をまいた」という緩いけん制球で一塁走者を誘い出し、2度にわたり刺した。
初めて甲子園に臨んだ昨春は1回戦の終盤に力尽きた。学校近くの坂道を黙々と走り続けた成果か、この日は盛夏のマウンド上でも、打者の表情から狙いを読むほど余裕があった。頼もしくなって大舞台に帰ってきた。【田原和宏】
○…09年のセンバツ出場メンバー7人が先発に名を連ねた前橋商。初戦敗退を喫したあの春の教訓が、一回の攻撃に生きた。2番・斎藤は鋭いスイングで右翼フェンス直撃の三塁打。「今年は野口だけに頼らない打撃のチームを目指してきた。だから思い切り振ろう」という気迫を込めた一打だった。甘いカーブを中前へはじき返し2点目の走者を迎え入れた箱田は昨春、九回のサヨナラ機に凡退し最後の打者となった苦い経験がある。それだけに「あの時は初球の甘い球を見逃した。だから今回は積極的に」と狙い通りの適時打に笑顔を見せた。
○…宇和島東の左翼・浅野が、名誉挽回(ばんかい)の美技で魅了した。八回、前橋商の先頭、後藤が放った左翼線へのライナーをダイビングキャッチ。打球が飛んだ瞬間に反応して全力疾走から横っ跳び、身長158センチの体をいっぱいに伸ばすと、ボールはグラブの中へ。七回1死二、三塁ではタッチアップを防ごうと焦るあまりフライを落球していたこともあり、「今度は投手を助けられた」とほっとした。攻撃でも無安打ながら2度四球で出塁し、「自分の仕事はできた」と敗戦にも充実の表情だった。
▽前橋商・富岡潤一監督 3年ぶりの勝利で感慨深い。野口は持ち味を出してコーナーに丁寧に投げたのが良かった。早めに点が取れたのも大きかった。
▽宇和島東・土居浩二監督 野口君の球の切れと制球が素晴らしく、球を見過ぎてしまった。夏は積極的に攻めないと勝てないと痛感した。
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