|
いよいよ明日27日に開幕する陸上世界選手権(世界陸上)韓国・テグ大会。前回のベルリン大会では銀メダル1つ、銅メダル1つを含め、入賞7という結果を残した日本チーム。テグでは来年のロンドン五輪へ向けて、新たなメダル候補に登場してもらいたいところだが、冷静に見て現時点で可能性があるといえるのは、すでにメダリストになっている選手のみというのが現実だろう。
■室伏は“じっくり”仕上げ、ピークを本番へ
その筆頭の位置にいるのは、2大会ぶりの出場となる男子ハンマー投げの室伏広治(ミズノ)だ。今年はまだ国内の2試合しか出場しておらず、ベスト記録は今季世界ランキング12位の78メートル10。しかし、じっくり練習をしてピークを本番へ持っていこうというハッキリしたビジョンを持って取り組んでいる。
その自信の裏付けとなっているのが、昨年の結果だ。身体のケアだけではなく、競技を続けるためにも理学療法が重要だと考えた彼は、2008年北京五輪の翌年に休養をとりながら、身体の基本的な動きの機能であるファンダメンタルを意識したトレーニングを始めた。
そして試合に復帰した10年は、ピークをシーズン終盤に持っていくことを意図し、8月の末には同年世界ランキング1位となる80メートル99を筆頭に80メートル台を連発。イタリアのリエティ国際とクロアチアのザグレブ国際を連覇し、初開催だったハンマースローチャレンジの総合優勝まで果たしたのだ。
昨年80メートル99を投げた時も、「もう少し試合間隔があくなど条件がよければ、さらにいけたと思う」と手応えを持ったと言う。さらに、ファンダメンタルを意識したトレーニングについても、昨年より今年の方が充実しているのは確かだ。
今季はアレクセイ・ザゴルニー(ロシア)が81メートル73を投げてリードしている状況だが、“じっくり”仕上げている室伏が意識するのは、82〜83メートル台だ。まだ世界大会で唯一手にしていない世界選手権の金メダル。それを狙う気持ちは満々だ。
■前回銅のやり投・村上、85メートル超えでメダルを狙う
その室伏に次いでメダルの可能性を持っているのが、男子やり投げの村上幸史(スズキ浜松AC)だ。前回の銅メダリストだが、その記録は82メートル97。本人も「五輪翌年で記録が下がるはずだからチャンスはあると思った」という狙いがズバリと当たった結果だ。
だが今回は五輪前年でレベルが上がる可能性は高く、本人も「最低でも85メートル超え」を意識している。その第一段階である予選を、余裕を持って通過するために「1投目で82mを超える」という目標は、5月のゴールデングランプリ川崎と6月の日本選手権(埼玉)でクリアした。そして決勝の勝負へ向けても、7月のアジア選手権(兵庫)で83メートル27の自己新記録をマーク。さらに8月、調整で出場した国体愛媛県予選会で83メートル53と自己記録を伸ばし、85メートル超えの準備は着々と整っている。
現在の今季世界ランキングはアンドレアス・トルキルドセン(ノルウェー)の90メートル61を筆頭に、3位のセルゲイ・マカロフ(ロシア)でも87メートル12。メダル獲得に関してはライバルたちの出来にもよるが、ロンドン五輪で勝負するためにも85メートル超えを確実に果たし、87メートル60の日本記録更新まで視野に入れたいものだ。
■女子マラソン、尾崎の2大会連続メダルに期待
続いてメダルの可能性があるのは大会初日(8月27日)の女子マラソンだろう。前回のベルリン大会で、落ち着いた走りを見せて銀メダリストになった尾崎好美(第一生命)が、今回もキッチリと代表に入ってきたことは心強い。
米国・ボルダー合宿では故障もなく、順調に距離を踏めたという彼女が、前回並みに仕上がっているかどうかが焦点になるだろう。ただ、今年は世界のレベルも上がっているのは事実だ。4月のロンドンマラソンではメアリー・ケイタニー(ケニア)が3年ぶりに2時間19分台を出し、今季の世界ランキングでも3位までは2時間20分台で走っている。
ベルリンのように気温が上がって、スローペースで始まるようなら尾崎へのチャンスも大きくなるが、今回は全体的にフラットなスピードコースで、天候は雨で最高気温26度と予想されている。もしかしたらベルリンより多少速い展開になるかもしれないが、そうなってもどこまで粘りきれるかが、大きなカギになるだろう。
■好調の男子4継リレーチーム
入賞期待種目となると、男女の4×100メートルリレーがある。その中でも男子4×100メートルリレーは前回出場の塚原直貴(富士通)が出場できず、江里口匡史(大阪ガス)も100メートルの標準記録を突破できず、男子100メートル出場者ゼロというやや寂しい状況になっている。
だが8月10日の陸連合宿の通し練習では、小林雄一(法大)、江里口、高平慎士(富士通)、斎藤仁志(サンメッセ)でつなぎ、各選手がバトンパス区間以外は力を抜いて走りながらも手動計時で39秒14と、合宿過去最高タイムを出していた。
これは本番でもうまくつなげば38秒台中盤は確実に出せる数字。しかも選手たちは決勝でどう勝負するかを意識している。順位はともかく、決勝で勝負をしてベルリンの38秒30を上回るタイムを出せば、出場した選手だけではなく塚原や前回出場の藤光謙司(セーレン)なども刺激され、ロンドン五輪へ向けてもますますいい状態になっていくはずだ。
■女子短距離・福島の活躍は!? リレーチームもけん引
一方女子は、唯一短距離の個人レースへ出場する福島千里(北海道ハイテクAC)が、100メートルと200メートルで準決勝へ進んで勢いをつけられるかどうかにかかっているだろう。
今大会から男女ともに100メートルは予選、準決勝、決勝という3ラウンド制になった。その分、準決勝は2組16人から、3組24人となり進出の可能性は高くなったが、1発目から11秒2台のタイムも必要になってくるかもしれない。それは彼女も十分に意識しているところだ。
また前回のベルリン大会も3ラウンド制だった200メートルは、0秒05差で準決勝を逃しているだけに、戦い方も分かっていて進出の可能性は高いだろう。
その上で挑む女子4×100メートルリレーだが、アンダーハンドパスを取り入れたチームは前回より安定していると言っていい。初レースだった5月の川崎では43秒39の日本新記録を出しているが、今大会の決勝進出にはもう一歩必要だ。さらに、今季急成長の市川華菜(中京大)が、8月のユニバーシアードでは11秒90がベストタイムだったというのも不安だが、彼女を含めたほかの選手たちが、「福島頼りから脱却しよう」という意識をどこまで強く持てるかが重要だろう。
初めての大舞台でいきなり決勝を狙うのは、簡単ではない。だが例えそれが実現しなくても、「惜しい!」といえるような戦いをすること。必ず日本記録前後では走ることが、ロンドン五輪へ向けての絶対条件になる。
■男子マラソン、競歩なども入賞有望か
ほかでは、スピードレースになるだろう男子マラソンで、北岡幸浩(NTN)が難コースながら終盤粘って銀メダルを獲得した、昨年のアジア大会(中国)のような走りができればチャンスは生まれる。
また、女子長距離では復活して5000メートルで代表になった絹川愛(ミズノ)にもチャンスはあるが、6月のホクレンディスタンスチャレンジでA標準突破の31分10秒02を出した1万メートルにもエントリー。好調なだけに期待がかかる。
前回、渕瀬真寿美(大塚製薬)が7位になった女子20キロ競歩も入賞有望種目のひとつだ。渕瀬は今年、もうひとつの状態だが、昨年のアジア大会でも2位になったように勝負強さがある。
さらに前回までは3番手だったが、歩型の安定感には定評がある大利久美(富士通)が今年は急激に力をつけている。そしてベテランの川崎真裕美(富士通)もそろそろ意地を見せたいところ。ロシアと中国は強力だが、粘りを見せれば競歩での複数入賞もあり得るだろう。
|