薔薇好きパパの気まぐれ日記

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WBC世界スーパーバンタム級チャンピオンの西岡利晃が10月1日(日本時間2日)、米国ラスベガスで挑戦者のラファエル・マルケス(メキシコ)を判定で下して7度目の防衛に成功した。

 特筆すべきは日本人ボクサーが本場ラスベガスのリングでメインイベントを張り、マルケスというビッグネームに勝利した事実だ。西岡は日本ボクシング界を覆い尽くす閉塞感を打ち破り、ボクシング新時代の幕開けを告げる希望のゴングを打ち鳴らしたのである。
 閉塞感とは何か。
 詰まるところは一点に集約される。いくら努力を重ねて世界チャンピオンを作っても、往時のような注目と尊敬を集められず、ビジネスとしての旨味にも恵まれない、というシビアな現実だ。
日本人世界王者は多くいるのに、ボクシング人気がサッパリの理由。
 最大の原因は、統括団体(WBAやWBC)がメジャーと呼ばれる団体だけでも4つ存在し、同一クラスに数多くの世界チャンピオンが存在することである。
 ただでさえチャンピオンは乱発傾向だというのに、近年では暫定王者やスーパー王者という名の新たな“チャンピオン”が次々と新設され、正規王者と暫定王者がそれぞれ防衛戦を重ねるという支離滅裂な事態まで起きている。
 チャンピオンが増えれば当然チャンスは広がる。国内でもずいぶん前から毎月のように世界タイトルマッチが開催され、昔に比べて世界王者誕生のペースも上がった。その結果、日本では世界チャンピオンがしょっちゅう生まれるのに、ボクシング人気はさっぱり回復しないというジレンマに陥った。

 ボクシング関係者はこのジレンマに頭を悩ませ続けた。

 世界タイトルマッチは本来であればサッカーのワールドカップのように真の世界一を決める価値ある試合であってほしい。その願いとは裏腹に現実と理想のギャップは広がっていくばかりなのである。
 この状況をどうにか打破する方法はないのか。関係者が常々模索していた道がアメリカへの進出だった。
アメリカのリングで勝ち続けることこそが「真の世界一」。
 時代によって浮き沈みがあるとはいえ、アメリカが世界一のボクシング大国であることに異論はないだろう。1試合で10億円以上を稼ぐボクサーが存在し、ビッグマネーを求めて才能ある若者たちが世界各地から集まってくる。レベルの高い争いが繰り広げられるから、世界中のファンが会場に足を運び、有料テレビ放送の料金を支払う。だからこそ高額のファイトマネーも用意できる。

 さらにアメリカでは、統括団体の思惑を超えて、ファンの最も望む好カード、言い換えれば本当の世界一を決めようという意欲的なマッチメークが数多く組まれている。

 ボクシングではワールドカップのような世界大会が存在しない以上、アメリカのリングで戦い続け、結果を残すことが真の世界一に近づく最も有力な方法なのだ(大金をはたいて有力選手を日本にバンバン呼ぶという方法もあるが、今の日本の状況では経済的に不可能だ)。

大リーグにおける野茂の役割を、西岡はボクシングで果たせるか?
 このような現状は広く日本の業界でも認識されている。

 心の底で海外での試合を渇望しているボクサーはたくさんいる。

 ところがいざ試合をしようとしても、無名の日本人(たとえ世界チャンピオンであっても)は対戦相手に指名してもらえない。見たこともない東洋人が相手では好カードにならず、商売にならないからだ。このようにして日本人ボクサーは世界で最も魅力のあるマーケットに参加できないでいた。

 そこで西岡が登場するのだ。 

 この世界王者は'09年にメキシコへ遠征し、ジョニー・ゴンサレスというネームバリューのあるメキシカンをノックアウトで下したキャリアがあり、アメリカで名前を知られる数少ない日本人ボクサーだった。国内最大手の帝拳プロモーションは、大リーグへの道を切り開いたプロ野球の野茂英雄のような役割を西岡に託し、対戦相手に満を持してラスベガスのビッグネームを用意した。

 相手がマルケスとなれば海外のファンも注目する。帝拳は数々の名勝負の舞台となったMGMグランドホテルを会場に定め、西岡の試合をメインイベントに据えた。その大一番に35歳のサウスポーは見事勝利したのである。

アメリカで大スターになったパッキャオの通ってきた道。
 ボクシング界の大スター、マニー・パッキャオをご存じの方も多いだろう。

 フィリピンの貧しい農家に生まれたパッキャオは母国でボクシングキャリアをスタートさせ、'98年にWBC世界フライ級タイトルを獲得した。この時点で世界的にまったく無名だったパッキャオは、やがてアメリカのプロモーターと契約し、全米デビューを果たしてからスター街道を歩み始めた。

 無名のフィリピン人はチャンスをつかんだ。'03年にメキシコのスター選手、マルコ・アントニオ・バレラから衝撃の勝利を奪うと、そこから怒涛の快進撃が始まった。ラスベガスの名だたる猛者たちを次々に撃破し、世界最高のボクサーという称号を手に入れたのだ。いまやパッキャオの試合は世界中で放送され、20億円を超えるファイトマネーを手にする超スーパースターとなったのである。

 注目すべきはパッキャオの成功が本人の成功だけに終わらなかったことだろう。腕利きのプロモーターたちが第2のパッキャオを発掘しようと多くのフィリピン人ボクサーと契約を交わし、いまやアメリカのボクシングシーンにフィリピン人はなくてはならない存在となっている。

次戦はパッキャオ効果で米国デビューした期待のフィリピン人選手か。
 言うまでもなく現時点における西岡の成功はパッキャオの成功に及ばない。

 ただ今回の勝利は海外における日本人ボクサーの評価を確実に変えたはずだ。極東の島国に引きこもり、ジャパンマネーをコツコツと稼ぐかつての日本人ではなく、海外のリングを貪欲に目指す逞しいサムライたちなのだと。

 西岡自身はマルケス撃破でノニト・ドネアと対戦するチャンスを手に入れそうだ。ドネアはパッキャオ効果によって米国デビューを果たしたフィリピン人選手で、現在の軽量級では最も期待値の高いホープである。ドネアと試合をやるとなれば、マルケス戦以上の注目を集めることは間違いない。ドネアと好試合を演じれば、日本人ボクサーの評価がさらに高まることはパッキャオの例を出すまでもなく明らかであろう。

 西岡に続けとサンドバッグを叩く拳に力を込めるボクサーがこの列島にはたくさんいる。ボクシングというスポーツの明るい未来を信じたい。

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