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4月8日に神戸で行なわれたトリプル世界戦。粟生隆寛、西岡利晃がKO勝ちし、残る長谷川穂積が続けば「3王者揃ってKO防衛」。スポーツ紙の一面見出しも決まったようなものだった。しかし、無情にもその夢を打ち砕いたのが、挑戦者ジョニー・ゴンサレスが4回に放った右のロングだった。長谷川は痛烈なダウンを喫し、直後に試合を止められWBC世界フェザー級王座から転落した。
打ち合いを選んだ長谷川の作戦ミスとの指摘もあるが、それとは別に、あらためてゴンサレスというボクサーのすごさとはこういうことだったのかと納得した。過去に何度もポカをやりながら、人気選手として機会が与えられ続けたのもわかる。新チャンピオンは言ったものだ。
「長谷川陣営は西岡にやられた試合の僕をイメージしていたろうが、あのときの調子は100%ではなかったからね」
渡辺二郎、辰吉丈一郎の前にも立ちはだかった名参謀。
たしかに「西岡に倒された男」というのがわれわれの描いたゴンサレス像だった。2年前、西岡の左一撃で失神させられたシーンが強烈で、実際あのような惨敗を喫した後に精気を失ってフェードアウトしてしまう選手がほとんどだ。しかし、メキシカンには、派手に負けてもすぐに回復して長くキャリアを続ける選手がめずらしくない。古くはジョー・メデルやルーベン・オリバレスもそうだった。強打と打たれ弱さが同居しているから、勝つときも負けるときも派手なのだ。西岡戦の惨敗後、後を引かずに勝ち続けたゴンサレスは、そんなメキシコの職人的ボクサーの正統派とも言える。
西岡戦と今回の違いを言えば、体重を上げ、トレーナーの父を外してメキシコ随一の名参謀ナチョ・ベリスタインを迎えたことだ。「20人の世界チャンピオンを手がけてきた人。自分もそのリストに名を加えたい」とゴンサレスが願っていた通りの結果になった。
今年6月には米国のボクシング殿堂入りが決まっている。渡辺二郎の王座を攻略したヒルベルト・ローマン、辰吉丈一郎の挑戦を2度退けたダニエル・サラゴサの傍らにもこの人がいた。教え方が特に奇抜ということはないが、「勝たせるのがうまい」との定評がある。今回も3回開始前、ゴンサレスに「長谷川が左を意識しているから、右を狙え」と指示していた。これが“ナチョ・マジック”か。
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