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10月8日に行われる出雲駅伝で2012年の大学駅伝シーズンが始まる。ここ4年間、大学駅伝界を席巻した通称“山の神”、柏原竜二(東洋大卒、現富士通)が卒業し、新たな局面を迎えた今季。柏原に変わる新たなスターは生まれるのか。そして前回の箱根駅伝を圧倒的な強さで制した東洋大はその覇権を守れるのか。ここでシーズン前半戦を展望しよう。
■優勝候補は選手のそろう駒大
10月には1区間6キロから10キロの出雲駅伝、その1カ月後には1区間13キロ前後の全日本大学駅伝(11月4日)が開催される。昨年は東洋大が出雲を、駒大が全日本を制した。しかし今季、この2戦は駒大を優勝候補に挙げるべきだろう。
何といっても、駒大はスピードで他を圧倒する。5000メートルで13分台の選手がチームに10人。1万メートルで28分台の選手を9人そろえる。トラックの記録は駅伝での強さに必ずしも直結しないのだが、多くの学生選手はこの13分台、28分台を目標としており、有力選手としてのひとつの指標となっている。この基準をクリアする人数で駒大は他を大きく引き離す。
「出雲、全日本は優勝を狙わなければいけないでしょう。今季はそれだけの選手がいると思います」と大八木弘明監督も育て上げたチームに自信を持つ。昨年の出雲では1区で出遅れ2位。「その悔しさをチーム全員が覚えている。今年は駅伝でも強さを見せつけ、トラックのタイムだけでないところを見せつけたい」とエース格の窪田忍(3年)も意気込む。圧倒的な戦力に余裕を持つどころか、リベンジに燃えているだけに隙を見せる可能性は低そうだ。
それに立ち向かう一番手は前回王者の東洋大。柏原は抜けたが双子のエース設楽啓太、悠太(3年)はともにチームの中心区間を担う存在に成長した。もともとロードを得意とし、大崩れしない安定感のあるチーム。レースでは常にトップに近い位置で展開し、ワンチャンスでトップを奪い逃げ切るレース巧者ぶりを見せたいところだ。
2季前に出雲、全日本、箱根のシーズン3冠を成し遂げた早大はエース大迫傑(3年)を軸にスピードランナーをそろえる。特に6区間の出雲ならば上記2校に匹敵する戦力だ。また近年、高校時代にトップクラスだった選手が多数進学している明大も侮れない。昨年の箱根駅伝経験者が8人残り、ルーキーの横手健が学年ナンバー1として大学でも結果を残している。今季はどのレースでも確実に3位以内を確実に狙える戦力がそろった。
柏原のいない大学駅伝シーズンだが、有力選手は他にも多くいる。今年の顔となる選手は果たしてどの選手だろうか?
出雲、全日本では最終区間に注目してもらいたい。出雲の最終6区は10.2キロ、全日本8区は19.7キロとどちらもレースの最長区間。ここを担うのが各チームのエースであり、主役候補だ。
駒大では窪田、東洋大で言えば設楽兄弟のどちらか、早大は大迫がここに登場し、火花を散らすはず。昨年の出雲では1位でタスキを受けた設楽啓がそのまま逃げ切ってフィニッシュテープを切り、全日本では東洋大・柏原の猛追を窪田が振り切り、優勝を手にしている。今季、個人としての実績を見ると1万メートルのロンドン五輪B標準記録(28分05秒00)を突破し、日本選手権同種目で2位に入った大迫が群を抜く。しかし駅伝ともなれば、他校のエースも黙ってはいない。意地とプライドのぶつかり合いが見られるはずだ。
また出雲には出場しないが、1万メートルで今季学生トップの記録(27分50秒59)を出している村澤明伸(東海大4年)は現時点の学生ナンバー1と言える存在だ。今季、目標としていたロンドン五輪出場はならなかったが、6月にはスイスのサンモリッツで高地トレーニングも経験し、来年のモスクワ世界選手権を視野に入れてすでに始動している。「これからのレースは全部が学生最後になる。すべてで結果を残します」と、駅伝シーズンでは結果にこだわるつもりだ。箱根駅伝予選会(10月20日)、そして全日本に出場予定だ。
トラックでの実績で村澤、大迫はすでに柏原を大きく上回る。世界への通過点として挑む大学駅伝でもインパクトを残すことは間違いなさそうだ。
■厳しさを増す予選会 初戦から全開レースの予感
そして来年1月の東京箱根間往復大学駅伝競走、通称箱根駅伝の出場権をかけた予選会も10月に行われる。前回10位までに入れなかったチームが9つの枠を争い、しのぎを削る。昨年、この予選会で落選した日大の例を挙げるまでもなく、近年は各大学が箱根出場を目標に強化を進めていて、予選通過は狭き門となっている。今年はその日大や村澤を擁する東海大、前回の箱根で19位に沈んだ日体大などを中心にレースは展開しそうだ。各大学から12人の選手が出場して20キロを走り、上位10名のタイムの合計で競う予選会。タフさだけで言えば、出雲、全日本をしのぐ。新春の箱根路を目指す戦いにも注目だ。
つい最近まで、初戦の出雲は下級生の経験の場、もしくは戦力の確認という意味合いが強かった。それはほとんどの大学が最終目標を箱根駅伝においていることに加え、1区間の短い出雲と1区間20キロ前後の箱根は別物と考えていたからだ。
しかし、近年では箱根駅伝自体がスピード化しており、かつてのように「1キロ3分ペースでいい」といった考えでは優勝が狙えなくなってしまった。箱根で勝つためには出雲のスピードレースにも対応できる戦力が必要となったのである。2季前に3冠を成し遂げた早大、昨季に出雲と箱根を制した東洋大がその事実を裏付ける。「強いチームは箱根だけでなく3冠を狙う」といった流れは今後も加速しそうだ。
昨年度、2冠の東洋大に、巨大戦力で挑む駒大。今季の主役は果たしてどの大学になるだろうか。間もなく駅伝シーズン開幕を告げる号砲が鳴る。
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