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ロンドン五輪代表選考会を兼ねた陸上日本選手権が6月8日より大阪・長居陸上競技場で行われる。今年は大会初日に男子5000メートル決勝、2日目に1万メートル決勝が組まれ、男子長距離では両種目の挑戦が難しいスケジュールになった。それだけに有力選手がどちらの種目で狙ってくるかによって、戦況は変わってくる。ここでその2種目の戦いを展望しよう。
■V候補は渡辺、上野か? 他の有力選手の挑戦は?
大会初日に行われる男子5000メートル、現時点での派遣標準記録突破者は以下の2人だ。
・男子5000メートル ロンドン五輪標準記録突破者(6月6日現在)
(有効期間2011年5月1日〜2012年7月8日)
B標準(13分27秒00)突破
渡辺和也(四国電力) 13分23秒15
佐藤悠基(日清食品グループ) 13分25秒53
佐藤はエントリーせず、1万メートル1本に絞るため、5000メートルは渡辺と、標準記録をまだ突破していない上野裕一郎(エスビー食品)の2人が有力と見られる。
昨年の優勝者、渡辺は1万メートルでもB標準を切っているが、この5000メートルだけにエントリー。しかし、昨年の世界選手権(韓国)5000メートルに出場後にアキレスけんを痛め、レースに参戦していない。
対して上野も冬場の故障から仕上がりが遅く、標準記録突破を狙った5月3日の静岡国際も13分46秒35に終わっている。
状態の見えない渡辺と復調途上の上野。どちらが有利かを判断するのは難しいが、上野の調子が上がっているのは確か。5月12日のゴールデンゲームズinのべおかでは13分38秒21。通常、記録を狙う場合はイーブンペースでレースを進めるが、上野はこの日、序盤からペースメーカーの前をいく突っ込みを見せ、型にはまらない走りを披露。そのことで自身のレース勘を再確認したようだ。「自分らしさを取り戻すレースができた。気持ちも吹っ切れたし、これで日本選手権も勝負できる気持ちになった」とレース後に明るい表情を見せた。
とはいえラストスパートの切れ味は渡辺も同等、もしくは上野以上のものを持つ。カギは渡辺の回復次第。それによってはラストで2人の壮絶な戦いが見られるかもしれない。
しかし渡辺、上野の状態から、この5000メートルが穴種目だと考え、標準記録未突破の竹沢健介(エスビー食品)がこちらで優勝を狙ってくる可能性もゼロではない。そうなれば渡辺、上野のマッチレースの構図も崩れ、レースの行方はさらに読めなくなってくる。オープン参加の外国人選手がうまくリードすれば、この日本選手権でB標準の突破までは可能性がありそうだ。
■A標準突破者3人 佐藤のV2なるか
大会2日目の1万メートルは、A標準突破者が3人。この中から優勝者が出れば、ほぼ間違いなく五輪代表の座を射止めることになる。その顔ぶれは以下の通り。
男子1万メートル ロンドン五輪標準記録突破者(6月6日現在)
(有効期間2011年1月1日〜2012年7月8日)
A標準(27分45秒00)突破
宇賀地強(コニカミノルタ) 27分40秒69
宮脇千博(トヨタ自動車) 27分41秒57
鎧坂哲哉(旭化成) 27分44秒30
B標準(28分05秒00)突破
渡辺和也(四国電力) 27分47秒79
清水大輔(カネボウ) 27分50秒50
村沢明伸(東海大) 27分50秒59
大迫傑(早大) 27分56秒94
佐藤悠基(日清食品グループ) 27分57秒07
深津卓也(旭化成) 28分01秒31
油布郁人(駒大) 28分02秒46
撹上宏光(駒大) 28分03秒27
松岡佑起(大塚製薬) 28分03秒46
箱根駅伝で見なれた名前が並ぶ中、注目は宮脇。愛知・中京高時代はインターハイ5000メートルで予選落ちの選手だが、高卒でトヨタ自動車入社後に急成長。2年目の昨季にA標準を突破した。今季も3月にハーフマラソンを日本歴代3位となる60分53秒で走っている男子長距離界、旬の選手だ。また宇賀地も昨年から好調を維持。ロングスパート気味に引き離す終盤のペースアップが成功すれば、一気にレースを決める力はある。
A標準突破者の中では鎧坂の状態が不安だ。今年1月の箱根駅伝前から抱えている故障の回復が思わしくなく、本格的な練習復帰は4月末。しかし旭化成の宗猛監督は「彼本来の持つスピードさえ戻れば、日本選手権は戦えるはず」と自信を見せる。ひと月少々の練習でどこまで戻せたか注目だ。
しかし、優勝候補を挙げるとすれば、A標準に届いていないがこれまで4度、27分台で走っている佐藤だろう。特に昨年、この種目で優勝した際に見せたラスト300メートルのスプリント力は、選手としてひとつ上のステージに上がったことを示した。終盤まで集団に身を潜め、ラストで競り勝つパターンを今年も再現できれば初の五輪が現実に近づいてくる。
ラスト勝負になった時の強敵は、標準記録未突破の竹沢。今季は好調を維持しながら記録を破れなかったが、この日本選手権で大逆転を狙う。早大4年だった2008年の日本選手権も故障明け、しかもシーズン初レースとなった日本選手権で北京五輪代表の座を決めた。土壇場での勝負強さ、集中力では他を圧倒する。スパート力ならば佐藤を上回るだけに、終盤までトップから離されない位置にいれば竹沢の勝ちパターンだ。
また大学生は4人が標準記録を突破し、うち3人を含む計6人がエントリー。最有力は昨年2位の村沢か。前回、ラストで佐藤に負けたことを教訓にスピード強化に1年間努めてきた。「今年は周りを驚かせるレースをしたい」と新たなレーススタイルに含みを持たす。早大の大迫も5月に自身初の27分台をマークし、五輪代表争いに加わってきた。「もっと記録は出ると思うが、日本選手権は勝負にこだわる」と初のタイトルを目指す。
多くの選手が5000メートル、1万メートルの両方にエントリーしている今大会。まずは大会初日の5000メートルにどの選手が出てくるか。コンディションの調整、そしてライバル選手の動向まで予測した心理戦はすでに始まっている。男子長距離の五輪出場枠をひとつでも多く増やせるような、ハイレベルなレースを期待したい。
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