伊勢物語と仁勢物語

パロディーと諧謔の、仮名草子。

和哥奇徳物語

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和哥奇徳物語5

和哥奇徳物語-5

和泉しきふ か事

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いつみ式部は 大江の雅致(まさむね)のむすめなり 和泉守道貞
の妻となるゆへに 和泉式部とはいへり よく敷しまの
みちに 達せる人なり

  物おもへは 沢のほたるも 我身より あくかれいてし
玉かとそみる とよみけれは 貴舩明神 かんじ給ひ

  おく山に たきりておつる 瀧つせも 玉ちるはかり
物なおもひそ とこたへさせ給ひけるとなり また書写山
性空上人 ある時 弟子たちをあつめて の給ひけるは 明日
は 定る鬼の来るへきぞ 内をとして一人も出あふへからす
と しめし給ふにより 弟子たち こわおそろしと いひて
山門を戸ざしてありけるに 上東門院 女房たちを あ
また くさせ給ひ 行●いりしに 弟子たち すはや是こそ 上
人の の給ふ鬼ならむとて 一人も出合す 其時 式部

  くらきより なをもくらきに まよふへし はるかにてらせ 山の
はの月 と詠して門のはしらに書付けるに 折節 上人は法
華経 読誦しておわしけるか 従冥入冥 永不聞仏名
と云文を よみあわせ給へり もとより 六根浄を得たる上
人なれは とをく 此哥をきゝ 其躰を見て あはれにおもひ
よひかへして しはらく法談ありけるに 門院 御気色うる
わしく還御なりしと也 されは敷島の道においては
ならひなき哥仙なりとそ 式部か辞世に

  水はみつ 火はもとの火に かへしけり おもひし事よ
すはされはこそ 誠に其見識をみつへし いみしき心
に あらすや


和泉しきふ=和泉式部。平安中期の女流歌人。大江雅致の娘。和泉守橘道貞と結婚し、
  小式部内侍を産んだ。為尊親王、次いでその弟の敦道親王と恋をし、
  上東門院彰子に仕えてのち藤原保昌に嫁す。
敷しまのみち=敷島の道。和歌の道。歌道。
物おもへは・・・=ものを思い悩んでいると、沢の蛍も私の身体から抜け出した、
  魂(玉)ではないかと見えます。
貴舩明神=貴船神社。平安京の「水の神」と「火の神」を祀る神社。
おく山に・・・=奥山にたぎりて落ちる瀧の飛沫の玉ように、
  魂が飛び散り消えそうだなんて、そんなに思い悩むなよ。
書写山=兵庫県姫路市にある山。山頂に円教寺があり、「西の比叡山」とよばれる。
性空上人=平安中期の天台宗の僧。書写上人。
上東門院=一条天皇の中宮藤原彰子の院号。藤原道長の娘。後一条・後朱雀天皇の母。
  紫式部・和泉式部ら多くの才媛が仕えた。
行●いりしに=読めません。教えてください?
くらきより・・・=暗きから暗きへと、煩悩に迷っています。
  行く道を遥かに照らし出して下さい、山の端の真如の月よ。
  1. 拾遺和歌集 雅致娘式部
  真如の月=明月が闇を照らすのにたとえ。真理が人の迷妄を破ること。
読誦=お経(経典)・偈文などを称える事。
従冥入冥 永不聞仏名=冥(くら)きより冥きに入り、永く仏名を 聞かず
六根浄=六根から生じる迷いを断って、清らかな身になること。六根清浄。
法談ありけるに 門院 御気色うるわしく=上東門院は永承7年に重篤な病に陥る時の話か?
水はみつ・・・=水は水、火は元の火へ還ります。
  思い患いごとも、それ そのように還しなさい。
いみしき心=たいそう立派な心

1. 拾遺和歌集 雅致娘式部
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性空上人、都から権勢を誇る「鬼」が数多来る。
閉じこもって、会ってはならぬぞ!山門を閉じろ!
ガッカリして帰る上東門院・和泉式部など。
式部は残念に思い、哥を柱に書き残しました。
式部の「くらきより・・・」。この哥の返歌として、
性空上人、

  日は入りて 月はまだ出ぬ たそがれに 
掲げて照らす 法のともしび

掲げて照らす 法のともしび」。この哥により、
上東門院・和泉式部ともに、頼もしく道筋を、
仏法により照らし出してもらったのでしょう。
私達も、それぞれの立場で善を為すことで、
「一燈照隅」に成ります。
イメージ 3
辞世に「水はみつ・・・」とあるけど、
和泉式部の作なのか、出典も不明です。
とても後世において、伝説や作り話の多い人ですから。
一番 和泉式部の辞世に近いと思われる一首(2.和泉式部続集から)

   七日 例ならぬ心ちのみすれは けふや我世の と
おほゆるに                

いくへくも おもほえぬかな 別にし 人のこゝろそ いのち成ける

  七日 いつもと違って様子が悪いので、今日は我世の最後と
思えたので、
生きていられそうには思えません。
死別した人の心が、私の命でした。
2.和泉式部続集


閉じる コメント(4)

こんにちは。

「くさせ給ひ」は、文法的には「こさせ給ひ」なのですが、誤写でしょうか。

●はわかりません。

「くらきより なをもくらきに まよふへし はるかにてらせ 山の
はの月 」

この歌」は「くらきより くらき道にぞ 入りぬべき はるかにてらせ 山の端の月」という『拾遺集』掲載歌の方に馴染んでいます。


「いくへくも おもほえぬかな 別にし 人のこゝろそ いのち成ける」

和泉式部らしい歌ですね。
私は彼女を喪失の歌人だと思っています。

ナイスぽっちん。

明日、「伊勢」の歌を記事にする予定です。
宜しかったら、是非またお教え下さいね。

2013/11/30(土) 午後 4:17 [ sofashiroihana ]

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sofashiroihanaさん、こんばんは〜〜。
「くさせ給ひ」は、私は誤写ではなく「具させ給ひ」と理解しました。
「くらきより・・・」は、1. 拾遺和歌集 雅致娘式部の方ですね。
和哥奇徳物語の方は、きっと暗記違いでしょうね。

辞世「いくへくも・・・」は、ホントにホントに愛に生きた人。
死ぬまで歌人です。本当に素晴らしすぎる。

「「鬼」が数多来る」の説話、
出典が分からないので、宿題で調べておきます。

2013/11/30(土) 午後 7:22 yoshy

「具す」はサ変なので、「具せさせ給ひ」となるかも。
間違っていたら、すんまへん。

2013/11/30(土) 午後 7:38 [ sofashiroihana ]

顔アイコン

sofashiroihanaさん。
むずかしいね〜。
原文は「くさせ給ひ」でまちがいありません。
だいたいの大意で、まー、いいか!
文法は苦手で>^_^<

2013/11/30(土) 午後 7:53 yoshy


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