伊勢物語と仁勢物語

パロディーと諧謔の、仮名草子。

大和物語

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大和物語 上 43

群書類従巻第三百八上

大和物語 上 四十三段

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この大とく 房にしける所の前に きりかけをなむ せ
させける そのけつりくつに かきつけゝる

  まかきする ひたのたくみの たつき音の あなかしかまし なそ
やよの中  なといひて をこなひしに ふかき山に
いりなんとす といひていにけり ほとへて いつく
にかあらんといひて 深き山にこもり給ひぬ とありし
はいつくそ といひやりたまひたりけれは

  なにはかり ふかくもあらす よの常の ひえをとやまと 
見るはかりなり となんいひたりける よかはといふ
ところに有なりけり

参考1

この大とく=前段の「ゑしう」。大徳は徳の高い僧。
きりかけ= 切掛け・切懸け。柱の間に,板を横によろい戸のように張った板塀。
  目隠し用のもので,中庭の坪などに立てた。
けつりくつ=削り屑。削り屑に哥を書いた。
まかき=まがき・籬。竹や柴などで目を粗く編んだ垣根。ませ。ませがき。
ひたのたくみ=飛騨の匠。優れた木工技術を持った飛騨の匠は、奈良平安時代、
  都で腕の良い大工・木工職人として働き、名工の誉れを受けて、
  現代まで語り継がれています。
たつき音=鐇。木を伐採するのに用いる刃はばの広い大きな手斧を言う。斧の音。
かしまし=囂し・姦し・喧し。大いに耳障りである。やかましい。かしがましい。
なそやよの中=なぞや世の中。どうして世の中は?
まかきする・・・=(前段に続き、女性といい仲について)垣根を作る飛騨の匠の斧音のように、
  どうして世の中は、うるさいのだろう。
をこなひしに=行いしに。修行するために。
ふかき山にいりなんとす=深き山に入ってしまおうと思う。
いつくにかあらん=(女が)「ゑしう」さんは、何所へ行ったのだろうか?
なにはかり・・・=そんなに深い山ではありません。世の常として比叡の辺りの、
  人里に近い山と見ているほどの所です。
よかは=横川。比叡山延暦寺の三塔の一。根本中堂の北方の横川谷の峰にある諸堂塔の総称。

参考2
イメージ 2
「ゑしう」さん、もてるね〜。
世間で二人の仲を、うるさく噂され、山奥に籠もってしまいました。
その話を聞いた女性、「ゑしうさんは、何所へ行ったの?」と、心配しています。
比叡山延暦寺の横川、とても山深い修行の地です。
それでも「ゑしう」さん、女性を心配させないため、
そんなに山深くない所だよ!」といいました。
「ゑしう」さん、その優しさが罪なんだよ〜〜

美男のお坊さん、
しかも優しすぎる。

____φ(.. )軽鴨の介


大和物語 上 42

群書類従巻第三百八上

大和物語 上 四十二段

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ゑしうといふ ほうしの ある人の御験者つかう
まつりけるほとに とかく世中に 云事有けれは
よみたりける

  里はいふ 山にはさはく 白雲の 空にはかなき みとや成なん

となん有ける 又此人の御もとに よみたりける

  朝ほらけ 我身は庭の 霜なから 何をたねにて 心おひけん

参考1

ゑしう=恵秀、恵寿、延昌など諸説有り、詳しくは不明。
ある人=女性です。
御験者=おほんげんざ。「御・おほん」が付いているので高貴な女性。
   験者(げんざ)は加持祈祷をして病気を治す人。
世中に 云事有けれは=世間でとやかく噂を立てられると言う事があったので
里はいふ・・・=里(俗世間)で言われる、山(比叡山・寺のある山)でも騒がれる、
   身の置き所が無く白雲の空に、儚く消えてしまう身となってしまおう。
此人の御もとに=高貴な女性の元に
朝ほらけ・・・=朝ほのぼのと日が昇ってくると庭の霜が消えるように、
   下々の冷え切った者なのに、何を種にして私の心に恋が生いでたのでしょうか。

参考2

魑魅魍魎、物の怪などが普通に存在した時代。
ある高貴な女性の加持祈祷を依頼されました。
女性は物の怪にでも取り憑かれたのでしょうか?
「ゑしう」さん、お姫様と二人きりで部屋に籠もり、加持祈祷。
世間でも、お寺のある山でも、あの二人は怪しいと噂が立ってしまいました。
そこで哥を詠じました。
世間でも、寺でも身の置き所が無く、雲となって消えてしまいたい。

でも「ゑしう」さん、哥でちゃっかりと、
身分の低い下々(霜)の身に、恋心が芽生えたことを、
高貴な女性に知らせました。

イメージ 2

噂が原因で、一層 意識してしまう。
恋が芽生えてしまうのは仕方ないですね。
 
 むかし、「アタックyoshy」と、
囃し立てられた事が有りました。
学年下のマドンナとデートしたのが、
学年下の男達にバレたから・・・。
人の恋路は邪魔するモノではなく、
ナマ暖かく見守るモノですよ。

_______φ(.. )軽鴨の介



大和物語 上 41

群書類従巻第三百八上

大和物語 上 四十一段

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源大納言の君の御もとに としこはつねにまいりけり
そうしゝてすむときもありけり おかしき人にて よろ
つのことを 常にいひかはし給ひにけり つれ/\なる
日 このおとゝ としこ 又このむすめあねにあたる あ
やつこと いひて有けり 母にゝて 心もおかしかり
けり 又このおとこのもとに よふこ といふ 人有けり
それも 物の哀 しりて いと心おかしき 人なりけ
り これ四人 つとひて よろつの物かたりし 世中
の はかなきこと せけんのあはれなること いひ/\て
かのおとゝの よみ給ける

  いひつゝも 世ははかなきを かたみには
  哀といかて 君にみえまし

と よみ給けれは たれ/\も 返しはせて あつまりて
よゝとなん なきける あやしかりけるものともにこそ
は ありけれ

参考1

源大納言の君=源清蔭、陽成天皇の第1皇子、後撰和歌集に8首。3、11、12段既出
としこ=源清蔭の義弟藤原千兼の妻、承香殿俊子、後撰和歌集に7首。3, 9, 13段既出
あやつこ=俊子の娘で姉の方
母にゝて 心もおかしかりけり=俊子の娘は母に似て美人で心根も良かった。
よふこ=清蔭のそばに「よぶこ」と言う人もいたが、やはりステキな人だった。
いひつゝも・・・=このように話し合っていても、人の世は儚いモノで、
  いつ死んでしまうか分からないので、せめて形見・互いに、
  しみじみ愛しい人だと、相手の人達(君)に思われたいモノです。
かたみ=「形見」と「互(かたみ)に」が掛かる。
あやしかりけるもの=めずらしい人達だった

参考2

気の合う人達の会話で、ふと、世の儚さについて話し合い、
しみじみと哥を詠じたら「よゝとなん なきける」。
そう、声をあげてみんなで泣いてしまったんだ。
この時代、病気などでアッと言う間に死んでしまう。
みんな思い当たることが有ったのかもしれません。
それにしても良く泣くよ、昔の人は。
互いにあの人は、良い人だったと言われたいね。
だから今を、精一杯仲良く生きましょう!

イメージ 2
   ぬばたま(檜扇・ヒオウギ) 
イメージ 3


_____φ(.. )少し心に余裕が出て来た軽鴨の介



大和物語 上 40

群書類従巻第三百八上

大和物語 上 四十段

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桂のみこに 式部卿の宮すみ給ける時 その宮に
さふらひける うなゐなん このおとこ宮を いとめて
たしと 思ひかけ奉りけるをも えしり給はさり
けり ほたるのとひありきけるを かれとらへて
と 此わらはに のたまはせけれは かさみの袖にほたる
をとらへて つゝみて御覧せさすとて 聞えさせける

  つゝめとも かくれぬものは 夏虫の
  みよりあまれる 思ひ成けり

参考1

桂のみこ=宇多天皇皇女・孚子(たかこ)内親王、式部卿宮とは異母妹 20・26段既出
式部卿の宮=敦慶親王(あつよし)、宇多天皇の第四皇子、
   容姿端麗で玉光宮と称され光源氏のモデルのひとり。17・18・19・29段既出
うなゐ=うない・髫、7、8歳の童児の髪をうなじのあたりで結んで垂らしたもの。
   またその童児。
いとめてたし=たいそう好ましく
かさみ=かざみ・汗衫、後宮に奉仕する童女が表着(うわぎ)の上に着た正装用の服。
   脇が空き、裾を長く引く。
つゝめとも・・・=蛍が薄い汗衫の袖を通して見えるように、私の思いも表れてしまいます。
  「思ひ」「火」が掛かる。
夏虫=ここでは蛍

参考2 あらすじ

ちょっと「おませな女の子」、カッコイイ光源氏のような貴公子に憧れていました。
夏の夜に、その方から「蛍を捕らえてきてよ!」と頼まれました。
大好きな方の頼み事、うれしくてうれしくて少女は必死に蛍を追いかけます。
蛍を捕らえた時、「やった!これであの方に、手渡しでプレゼント出来る。」
蛍を「かざみ」の袖に入れ、貴公子の元へ。
蛍と共に、少女の思いを哥にして伝えます。
「どんなに包んでいても、隠せない蛍の光は、かざみから透けてあらわれます。
私の切ない思いも、この蛍のように隠せません。」

イメージ 2

おまけ:後撰和歌集-夏
   桂のみこの ほたるをとらへてといひ侍けれは わらはの
   かさみの袖につゝみて

つゝめとも かくれぬ物は 夏虫の 身よりあまれる 思ひ成けり




ちょっとおませな女の子。
告白されたら、どうしよう??
な わけないか!

真夏の夜の夢_____φ(.. )軽鴨の介

大和物語 上 39

群書類従巻第三百八上

大和物語 上 三十九段


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伊勢のかみ もろみちのむすめを たゝあきらの
中将のきみに あはせたりける時に そこなりける
うなゐを 右京のかみ よひいてゝ かたらひて あし
たによみて をこせたりける

  置露の ほとをもまたぬ 朝かほは
  みすそ中々 有へかりける



参考1

伊勢のかみ もろみち=源衆望、藤原諸藤の説もある。
たゝあきらの中将=源正明、是忠親王の王子。近衛中将。
あはせたりける時=結婚させていた時
そこなりける=当時の結婚生活は女性の家を指す
うなゐ=髫、童児の髪をうなじのあたりで結んで垂らしたもの。
  また、女児の髪を襟首のあたりで切り下げておくもの。
  うないがみ・髫髪。
  妻側の家にいる少女を指している。
右京のかみ=源宗于(むねゆき)、源正明とは兄弟。宗于が正明を訪ねて行った場面か。
  大和物語30,31,32段前出、百人一首28番前出。
よひいてゝ かたらひて=呼び出して語り合ったのだから、少女としちゃったんだ。
あしたによみて=翌朝歌を詠んで、つまり後朝(きぬぎぬ)として少女に文を贈った
置露の・・・=露を置く間もなく萎んでしまう朝顔。惜しむ故に儚い花を見なかった方が
  良かった。可愛い朝顔のような貴女と契りを結んで、人目を忍ぶ故、
  すぐに帰えらなければいけない、貴女に逢わなかった方が良かった。
  儚い逢瀬の辛さを詠っています。

参考2

この段は、ロリコン男・宗于(むねゆき)さんが、まだお下げ髪の可愛い子と良い事して翌朝、哥を詠んで贈ったんです。あっという間に夜が明けて、お下げ髪の少女は帰ってしまう。こんなに愛おしく別れが辛いのだったら、逢わなかった方が良かったと・・・。
どこかの歌謡曲に有ったような??
この宗于さん、出世できずに哥を亭子の帝(宇多天皇)に送った人だけど、
出世できないから、こんな事ばかりしてたのかな〜

イメージ 2


以前に宗于(むねゆき)さんを扱った記事:
小倉百人一首 28番 源宗于(むねゆき)朝臣


ロリロリロリコン、羨ましくもある。
_________\?\᡼\? 12軽鴨の介



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