伊勢物語と仁勢物語

パロディーと諧謔の、仮名草子。

大和物語

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大和物語 上 14

群書類従巻第三百八上

大和物語 上 14段

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本院の北方の御をとゝの わらは名をおほつふねといふ
いますかりけり 陽成院のみかとに奉りたりけるに
おはしまさゝりけれは よみてたてまつりける

  あら玉の 年はへねとも さるさはの
  池のたまもは みつへかりけり

参考1

本院の北方=藤原時平の妻・在原棟梁(むねやな)の娘、在原業平の孫
御をとゝ=みおとうと、男女とはず弟・妹、この段では妹
わらは名=童名、元服以前の名、子供のときの名、幼名
おほつふね=名前、後撰集に2首あり、参考2
いますかりけり=いらっしゃった
陽成院のみかと=第57代天皇、869〜949年
奉りたりけるに=側室として差し上げたが
おはしまさゝりけれは=帝はおいでにならなかったので
あら玉の・・・=まだ月日はそれほどたっていませんが、帝のおいでがないけれど、
  猿沢の池の美しい藻(美しい緑の黒髪)が、満ちるほど広がっているのが見ることができます。
  (あまりお見限りでは、采女(うねめ)のお話もあることですから・・・。)
あら玉=新玉、年・月・春にかかる枕詞
さるさは=猿沢の池、奈良市三条通の南側にある池、
  寵愛を失ってこの池に身を投げた采女(うねめ)の話がある
たまも=玉藻、美しい藻
みつ=「見つ」と「満つ」
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参考2

後撰集634 おほつふね
人はいさ 我はなきなの をしけれは 昔も今も しらすとをいはん

後撰集659 おほつふね
ちはやふる 神もみみこそ なれぬらし さまさまいのる 年もへぬれは

能・采女(うねめ)
「わぎもこが 寝ぐたれ髪を 猿沢の 池の玉藻と 見るぞ悲しき」と、叡慮に懸けし御情、かたじけなやな下として、君を恨みしはかなさは、たとへば及びなき水の月取る猿沢の、生ける身と思すかや。我は采女の幽霊とて、池水に入りにけり。池水の底に入りにけり。

美しい黒髪を見に来てください。
さもないとあの「采女」のように、
猿沢の池に身投げして、
池の玉藻を見ることになりますよ。

あんまりご無沙汰ですと、
承知しませんことよ!
なんて、言われてみたい。

ご無沙汰の_________\?\᡼\? 12軽鴨の介

大和物語 上 13

群書類従巻第三百八上

大和物語 上 13段

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むまのせう 藤原のちかぬといふ人のめには としこと
いふ人なん有ける 子ともあまたいてきておもひて
住けるほとに なくなりにけれは かきりなくかな
しくのみ思ひありくほとに 内の蔵人にて有ける
一条のきみといひける人は としこをいとよくしれり
ける人なりけり かく成にけるほとにしも とはさり
けれは あやしと思ひありくほとに とはぬ人の すさ
の女なむ あひたりけるを見て かくなむ

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  思ひきや 過にし人の 悲しきに
  君さへつらく ならん物とは

と聞えよといひけれは 返し

  なき人を 君かきかくに かけしとて
  なく/\忍ふ 程な恨そ

参考1

むまのせう=右馬允、右馬寮の第三等官
藤原のちかぬ=藤原千兼、11段の藤原忠房の子
め=妻(め)
としこ=俊子、承香殿俊子、後撰和歌集に7首、3・9段参照
内の蔵人=内裏の女蔵人、内侍・命婦の次の位
一条のきみ=清和天皇皇子貞平親王女、京極御息所女房
とはさりけれは=(弔問に)訪れないので
とはぬ人=一条君
すさ=從者
思ひきや・・=思ったでしょうか、亡くなった人(妻)の悲しいのに、
        貴女(一条のきみ)まで非情になられるとは。
なき人を・・=亡くなった人のことを君(千兼)が聞く(思い出す)ことがないよう、
        泣く泣く忍んでいるので恨まないでください。
君がきかくに かけじとて=君が聞くことがないように

参考2

生前はあんなに仲が良かったのに、どうして弔問に来てくれないのですか?と、夫の千兼さんは、一条君の従者に会ったので、哥を手渡しました。一条君の返り事は、亡くなった俊子さんの思い出話になると、また貴男が悲しむと思って行けないのです。恨まないでね。


不義理を詰(なじ)るより、
和歌でそっと雅な遣り取り。
人のあいだを和ませます。

_______\¤\᡼\¸ 12 軽鴨の介


大和物語 上 12

群書類従巻第三百八上

大和物語 上 十二段

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おなしおとゝ かのみやをえ奉り給ふて みかとのあは
せたてまつり給へりけれと はしめころ しのひて よる
よるかよひ給ひけるころ かへりて

  あくといへは しつ心なき 春夜の
  夢とや君を よるのみはみん

参考1

おなしおとゝ=同じ大臣、源清蔭、陽成天皇の第1皇子、後撰和歌集に8首、大和11段参照
かのみや=かの宮、醍醐天皇皇女・韶子内親王、大和11段参照
え奉り給ふて=得・妻となさって
みかとのあはせたてまつり給へりけれと=帝が結婚させてくださったのだけど、妻合せる
あくといへは・・=春の夜が明けると、別れて行かなければならないので静心がなく、夢のように夜のみしか逢えないのでしょうか。

参考2

この段の帝は、父・醍醐天皇ではなく、宇多法皇。醍醐天皇はすでに亡くなり、宇多法皇は、斎院を退かれた韶子内親王を、正式に結婚させようとしたのも。この段の場面は、まだ喪が明けていないので、清蔭は夜な夜な忍んで通って来て、明け方に帰って行く。そんな寂しさを詠ったものです。

¥¤¥᡼¥¸ 2

恋する者同士、明け方の別れは辛いものです。
なんでこんなに早く夜が、明けてしまうんだろう。

_____________\¤\᡼\¸ 12 軽鴨の介

大和物語 上 11

群書類従巻第三百八上

大和物語 上 十一段

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故源大納言のきみ たゝふさのぬしのみむすめ 東の
かたを 年比思てすみわたり給けるを 亭子院の若
宮に つき奉り給ふて ほとへにけり 子ともなと あ
りけれは こともたえす おなしところになんすみ給
ける さてよみてやり給ひける

  住の江の 松ならなくに 久しくも
  きみとねぬよの 成にけるかな

とありけれは返し

  久しくも おもほえねとも 住のえの
  松やふたゝひ 生かはるらん

となむありける

参考1

故源大納言のきみ=故・源清蔭、陽成天皇の第1皇子、後撰和歌集に8首、大和3段参照
たゝふさ=藤原忠房、「としこ」の夫(千兼)の父親、忠房は清蔭の義弟
ぬし=主、主人、「君」より低い身分
東のかた=寝殿造りの家で東の対にいた娘
すみわたり給ける=住んでおられた
亭子院の若宮=醍醐天皇皇女・韶子内親王
つき奉り給ふて=(心を)付き奉り給ふて、「東のかた」から「亭子院の若宮」に心変わり
こともたえす=言(こと・消息)を絶えず、消息を交わしていた
住の江の・・=住の江(久しいの枕詞)の松ではないが、
    あなたと寝ない夜がひさしくなりましたね〜
久しくも・・=私は久しいとは思いませんが、住の江の古い松が
    新しい松に再び生え代わるのでしょうね、移り気な方。

参考2

拾遺和歌集 卷第十二 戀二

大納言きよかげ
忠房がむすめのもとに久しうまからで遣しける

住吉の 松ならねども 久しくも 君とねぬ夜の なりにける哉

返し

久しくも 思ほえねども 住吉の 松やふたゝび おひかはる覽

\¤\᡼\¸ 35

愛情は途切れてしまったけど、
子供がいたので、遣り取りがあった元夫婦。
ぶち切れても、哥でなじって、
第三番目の勅撰和歌集に、名を残しました。
忠房の娘、あっぱれ! 清蔭、タジタジ・・・残念!

___________________\¤\᡼\¸ 12 軽鴨の介


藤原忠房の脚注、誤りを訂正・加筆してます。




大和物語 上 10

群書類従巻第三百八上

大和物語 上 十段

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監の命婦 つゝみにありけるいへを 人にうりて後
あはたといふところにいきけるに その家のまへを
わたりけれは よみたりける

  古郷を かはとみつゝも わたるかな
  渕瀬有とは むへもいひけり

参考1

監の命婦=げんのみょうぶ、監は近衛府の将監、命婦は中ろうの女房
つゝみ=堤、賀茂川の堤、土手
あはた=京都 粟田
その家のまへを=売った家の前を通ったので哥を詠んだ
古郷を・・・=かつて住んでいた辺りを眺めながら、川を渡るとき
  「(世の中は)淵瀬(ふちせ)あり」とは、いかにもそのとおりだなあ
かはとみつゝも わたる=「川・彼は」掛詞、「川・わたる・渕瀬」縁語

参考2

古今和歌集 巻十八 雑哥下 933 読人知らず
  世中は なにかつねなる あすかがは 
  きのふのふちぞ けふはせになる 

古今和歌集 巻十八 雑哥下 990 伊勢
家をうりてよめる
  あすかがは ふちにもあらぬ わがやども
  せにかはりゆく 物にぞ有りける 

監の命婦は、当然これらの古今集の哥を踏まえて、詠んでいます。
飛鳥川の速い水の流れで、昨日の淵は、今日には瀬になる。
世の中の「うつろい」の早さを詠っています。

¥¤¥᡼¥¸ 52

一昨年、失業したときの気持ちです。
あす知れぬ 餅にありつけぬ わが財布
銭がなくなり 空にぞなりけり

___________\¤\᡼\¸ 12軽鴨の介


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