伊勢物語と仁勢物語

パロディーと諧謔の、仮名草子。

因果物語

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因果物語2-2

ちょっと怖〜〜い、仮名草子。
因果ものかたり 平仮名本     赤木文庫本複製  古典文庫
因果物語 巻二

二 人に金かしたる法師 死して呵責に逢事

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相州小田原に 高木何かし殿 居住の時分 金田と
いふ所の近所に 真言宗の僧あり かの殿の祖父
正順禅門の月忌日に 斎(とき)にまいらるべしと かたく
けいやく有しに その日参られす二日過て参りて
申さるゝやう 御斎をわすれてまいらざるにあらす
世にめづらしき事侍へり 是故に不参いたせし
其故は近き村に 草庵をしめてすむ坊主 頓死を(い・欠
たし侍へり 日比は 金少もちたるやうに沙汰せしか
只金子壱歩(ぶ)ひとつならてはなし とかくまかなひ
て 葬礼いたせしか一周忌の時分 かの村の庄や 余所へ

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行けるに 彼法師の幽㚑 いかにも疲衰へよろ/\
としてあゆみ来る 大におどろきてみる所に 跡
より長(たけ)一丈計成男 板を持来り かの坊主をとらへ
此板にはさみて押かけて責たり おそろしさ いふ
はかりなく 庄や 肝をけし 面を伏て居たるが 心
もとなくおもひて 面をあげてみれば 男はなし
坊主は又よろ/\と あゆみ来る 庄や問けるやう
さるにても いか成 罪障によりて かゝる責をば
うけらるゝといへば 坊主なく/\申けるは 我死し
て後 跡を弔ものなき故に 一日一夜も六たびつゝ
責をうけてくるしむ也 我 金すこしもちたるを
旦那に金子五両を借(かし)をきたり 又寺屋前の柹の
木の本に 壷に入 蚫の貝を蓋にして置たり 是を
もつて わが跡をとふらひて給はれ もし かの旦那 金
は かゝずとあらそはゞ 慥成せうごを みせ申すへしと
なく/\かたりて きえ/\と うせにけり 庄や いそ
ぎ帰りて 寺の旦那方へ 此よし委しくかたりけ
れば 金かりたるものは 五両をとゝのへ 出しけり
木の根にうづみける金をも ほり出し すなはち
一七日のあひだ 経をよみ 今朝まで とふらひあり
ける故に 御斎にまいらざりしと かたられける
と也 かくれなき事也

参考

相州=相模国の別称、神奈川県
金田=神奈川県厚木市金田??
月忌日=死んだ人の命日にあたる毎月の忌日
斎(とき)=年忌法要などの仏事が終わった後に頂く食事、本来は僧侶の食事のこと
長(たけ)一丈計成男=背丈が3mばかりなる男、大男、ここでは地獄の卒
罪障=仏語、往生・成仏の妨げとなる悪い行為
弔=葬式、法事、追善
一日一夜も六たびつゝ=昼夜6回づつ、1日を十二刻として
旦那=檀家
柹=柿の異字体
蚫=鮑の異字体
かゝず=かりず
慥成せうごを=たしかなる証拠
一七日=いちしちにち、七日間、普通は初七日

「跡を弔ものなき故に・・・」
幽霊になって出て来ました。
とてもリアルな怖い話でした。

_______\¤\᡼\¸ 2 軽鴨の介

因果物語2-1

今日の話は長くて恐いよ!!

ちょっと怖〜〜い、仮名草子。
因果ものかたり 平仮名本     赤木文庫本複製  古典文庫
因果物語 巻二

一 妬(ねたみ)て殺せし女 主の女房をとり殺す事

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濃州(ぜうしう)より或牢人 尾州名古屋に行て帰りける
に 日暮になりて くり舟にのりて川を渡る時
女の聲にて しきりに呼かくる 何とやらん 心に
いぶせく思ひけれども 聲の聞ゆる方に立寄て
みれば 足を上になして さかさに立たり人也
いよ/\おそろしかりけれとも 心を静め こと葉を
かけて 汝は何者ぞ といへば 我は此所の庄屋の内に
つかはれし者也 不慮の妬によりて 非分の死を
いたしけり 敵(かたき)をとりに参らんとおもふ ねがはくは

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此舟を わたして給はれかしといふ 是はあやしき
くせ物かな もし否といはゞ いか成ことをか なすべき
と おもひ いとやすき事也 とて舟にのせたれば
さかさまながら のりけり 岸につきて侍へりしかば
舟よりおりけり 漕帰らんとするに かの者いはく
家の口々に牛王の札 おほくありて 内に入がたし
(とても)の事に これをまくりて給はれ といふ 力及ばず
ひそかに かの家にゆき 牛王屋札をはぎ取たり
かの幽㚑 内に入たりとおほえて 只今まて女共
七八人居ならびて 綿車をよりて ありしが
さわがしく聞ゆ あくる夜 かの亡㚑は 牢人の
家に来りけるが 今は常のごとく 真様に成て
窓の前なる庭に立て云やう 此夜 おもふ敵を
とりて 今は真さまに成て 身のくるしみを の
がれたり ひとへに大恩 浅からず 今よりのちは
御身の守りとなり 自然の事あらん時 必らず
御用に立て 此御恩ほうじ奉るへし とて かきけす
ことく うせにけり さては庄やの女房 俄に むなし
く成たるは この女の敵にて有けりと 此由来を
委しく尋ねきけば かの亡㚑は 庄やの手かけ也
女房ふかく ねたみけるが 夫 有馬へ湯治しける
留守に 下男を頼み 川向に古き井のもとの 有

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けるに 彼女を すかし出し 井のはたに立より
古き井なれども 水よくすみて 人影のあり/\と
みゆるといへば 彼女立よりて のぞきける所を
さかさまにつきはめてころし 世には 身をなげた
りと 披露しけり 其夜より亡㚑となりて くり
舟の渡りに来り さかさまにたちて 人には みえ
けり これを見たる人は 化物(ばけもの)有とて おそれ沙汰
かの庄や 有馬に居けるを 飛脚を立て つけゝれ共
身を投て死けるは をのれが愚痴の科(とが)よ とて
さのみ おとろきもせず 三七日 湯に入て帰りしと也
寛永廿年八月の事也 是は江戸にて さる大名
の 家中に しよ用事ゆへ 濃州の 彼牢人 来
りて 直にかたり侍へり まことに おそろしき
幽㚑になりて うらみを ほうぜし事 其ためし
かす/\ おほしと いへども まさしく 目の前に
かゝる事を 見るにつけては よこしまなる
事には かならす むくひあり といふ事 いよ/\
いつはりに あらず おそれても おそるへし と申さ
れし
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参考

濃州=じょうしゅう・のうしゅう、美濃、「じょう」は「濃」の漢音
尾州=尾張国の異称
くり舟=刳り舟、1本の木をくりぬいてつくった舟、丸木舟
いぶせく=鬱悒く、気がかり、気味が悪く、うっとうしく
庄屋=関東では名主、年貢納入責任をもち、村の自治一般をつかさどった
非分=道理にはずれたこと、非理
くせ物=曲者、あやしい者
牛王の札=牛王宝印、熊野神社・高野山・八坂神社をはじめ、山王・白山・熱田・富士浅間など
    各地の社寺で出す「牛王宝印」と書いた災厄除けの護符をいう
幽㚑=幽霊、㚑は異字体
真様=まさま、正常なさま
自然の事=自然に起こる予測不能の事件、万一のこと
手かけ=情婦、隠し女 、囲い者
すかし出し=欺し出し・賺し出し、騙して誘い出す
愚痴の科=心の迷いによるしくじり
さのみ=然のみ、それほど、さほど
三七日 湯に入て=俳諧の宗匠・篤老(あつおい)は湯治に三七日をかけた、「温泉津日記」
    三七日=さんしちにち・みなぬか、21日間。さんしちにちの参籠などの使い方??

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牛王宝印
因果物語・巻の二・初段、
長い所ですが、
読み応えのある恐い話でした。
「邪(よこしま)なる事には、必ず報い有り」
肝に銘じて、悪から遠ざかりましょう!

_______\¤\᡼\¸ 2 軽鴨の介

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因果物語1-17

ちょっと怖〜〜い、仮名草子。
因果ものかたり 平仮名本     赤木文庫本複製  古典文庫
因果物語 巻一

十七 母の亡㚑(まうれい)来りて子を生立(そたて)し事

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紀伊の国に尾張 なにかしと云 人の子息 三才の時
大事に わつらひけり 母 あなかちに 悲しみ嘆きて
いはく 此子むなしくならは 我もかならす死すべし
(とて)も死すべき命を 此子が命に いのり替て 給はれと
申けれとも さやうのためしは なき事也とて うけ
(あふ)事なし 子のわつらひ ことの外に おもりて せんかた
なし 母 いよ/\かなしみ嘆き 験者の山伏を頼みて
祈りければ すなはち 母は死して 子は本復しけり
それより母の 亡㚑(まうれい) 夜な/\ 来りて その子に乳を
のませけるが 更に物をば いはざりけり すてに五

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歳に成まで 生立(そだて)て 母 ある夜 涙を流し いとま乞
して申すやう 今は此子も子細なく 生立(そだち)侍へらん 今
より後は 来るましき也と なく/\申けれは 平左衛
門 申されしは せめて七才になるまでは 来り給へかし
と 生(いき)たる時の心地して 死して はなれし物より
猶悲しさは まさりて おつる涙は雨のことし 女房の
いはく わかれは 誰もおなじけれども 思ひきり給へ
重ねて 又来らじ とて かきけすやうに うせに
けり けにも 母の申せしごとく 其子 いかにも すくや
かに 成人しけり その人は五十斗(ばかり)にて 今に存命也

因果物語 巻一 をはり

参考

紀伊の国=現在の和歌山県全域および三重県の一部
尾張=愛知県西半分にあたる、尾州(びしゆう)
大事に わつらひけり=大変な病気に罹る
あなかちに=異常なほどはなはだしいさまに
おもりて=病気が重くなる
験者の山伏=修験道の行者、山野に起き伏しして仏道修行に励む僧


子に代わって命を投げ出し、
死して後までも、子を育てあげる。
母の愛は、亡霊ともいえども、
有難いものです。

ここで「因果物語 巻一」は、終わりです。
次回は「因果物語 巻二」に、入ります。

親に感謝をするのを忘れてしまった__\¤\᡼\¸ 2 軽鴨の介

因果物語1-16

ちょっと怖〜〜い、仮名草子。
因果ものかたり 平仮名本     赤木文庫本複製  古典文庫
因果物語 巻一

十六 夫の亡㚑(まうれい)妻の病を療治しける事

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おなし江戸の牛込に 呑養といふ禅僧の有しか
七歳のとき 父にはなれたり 九才の時 母大熱病
を わつらひ すでに むなしくなるに及ふ時 父
の亡㚑(まうれい)夜中に 木履(ぼくり)を はきたる音のことく
かた/\として来り 細目にあきたる戸より
内に入て呑養に むかひて云けるは 我は昨日も
来りけれとも 其方には逢ずして帰りしなり
とて 女房の臥たる傍に立より 頭を押へて こ
れは大事の わつらひ也 大形は死すべきに極まる 此
二人の子は 母が死したらば 何とか成へきと思へば

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悲しく侍へり 姉娘は十二歳也 父の亡㚑(まうれい)云やうは
今は我が薬をあたへてみんといふ 病人 いひけるは
いまほとは 作庵の薬を飲侍へる 餘仁の薬は いやと
云ければ 父の亡㚑 重ねていふやう 是ほと極めて
大事の わつらひに ゆる/\と思ひ居は 勿躰なし
まづこれを飲とて 印籠より煉薬(ねりやく)をとり
出し 口に入てはやく湯をのませよ といふ 娘のいはく
湯はぬるく侍りへ といふ ぬるくとも のませよと
いふて のませてのち 呑養に いとまごひして云
やう 此薬にて 病はなをるへし さらはよ と云て出け
るが 戸はひしとたてゝ侍り 今のは父の幽㚑(ゆうれい)也と
心付けり 父の手の小指 すこしまがりて有しが
薬をとりいだす時も 右の小指の勾(まがり)たるを見付
たり 扨(さて)又 二階に寝たる助市といふ つかひ男の
申すやう 只今の人の聲はまさしく 父の弥兵衛殿
の聲と 慥(たし)かに聞たりといふ 母の練薬をのみて
より 口の中 冷々として 能(よき)やうにおほえしきり
に 汗出て 其夜の子の刻はかりに わづらひ本復し
けり かくて二人の子も ふさせけり 夜あけてはやく
おきて 隣あたりの人に 茶を煮てまいらせけれ
ば 人/\ 此事を聞て きとくの事に おもひけり
寛永の末の年 江戸鉄砲町にての事也

イメージ 3

江戸のうしごみ

参考

亡㚑=亡霊・まうれい・ぼうれい、死者の霊がこの世に現れたもの
江戸の牛込=東京都新宿区
木履=ぼくり、ぽっくり、浅い木ぐつ
作庵の薬を=作庵という医者の薬を
幽㚑=幽霊
つかひ男=お使い男
能やうに=良きように
わづらひ本復=病気が本復し、病が癒えて
きとく=奇特・きどく、神仏の持っている超人間的な力、霊験
寛永の末の年=1644年頃
江戸鉄砲町=日本橋本町3・4

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死しても親の愛は、
子の行く末を案じて、
薬を届けに来たというお話です。
証人もいて中々リアルですね。

_________\¤\᡼\¸ 2軽鴨の介
文字がかすれて読みにくいので、
ちょっと心配な翻刻です。



因果物語1-15

ちょっと怖〜〜い、仮名草子。
因果ものかたり 平仮名本     赤木文庫本複製  古典文庫
因果物語 巻一

十五 亡者をあしく弔(とふらひ)たる僧の事

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武州江戸の牛込といふ所に 清隆寺といふ法花(ほっけ)
寺あり 此寺中に妙行院の日徳と云 僧ありけり
此僧 きはめたる無道心なりければ 亡者を弔らふ
事も 中/\をろそかなり 慶安四年の春比より
わづらひ付て 秋に成て 大におもりけり 色々療
治すれども いよ/\おもく成まゝに八月十二日より
死入ては息ふき出して よみがへり 又 絶入しては
生かへりて あら悲しや われ年比とふらひたりし
亡者とも おほく来りて 我をとりまはしせむる
故にくるしみ堪がたし これたすけて給はれと
手をあがき 涙をながし もだえかなしむ事
かきりなし 寺中 一山 あつまりて 法花経を
よみ さま/\祈祷すれども すこしもしるしなし
いよ/\くるしみて つゐに九月八日に死けり 其躰(そのてい)

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おそろしかりけり 此事を見聞たる當宗の
ともがらは ふかくつゝしみて 人にかくし侍へりとかや
法師の無道心にして智恵もなく 徳もなきもの
亡者を あしくとふらひ いたつらに施物を むさぼり
侍へらんは 来世の悲しからん事 いか斗なるへきや
よくおもひはかるへし 又学文もなく 師傳もなき
醫師の脈躰をも しかとしらず 只假名がきの 書
を よみて 病人にかゝり 薬ちがへをして 人をころす
もの 世におほく侍へり これも無道心の法師の
人を あしくとふらひ いたづらに施物を むさぼる
に おなじかるへきにや

参考

武州江戸=武州は武蔵国の別名、
牛込=東京都新宿区の東部の地名、もと牛込区
法花・法花経=法華・法華教(ほけきょう、ほっけきょう)
無道心=仏法を求める心がないこと
慶安四年=1651年、江戸開府から48年ごろ
絶入=ぜつじゅ・せつじゅ・ぜつにゅう、息が絶えること、気絶すること
施物=せもつ、僧や貧しい人に施す品物
斗=はかり・ばかり
学文=学問
師傳=しでん、師匠からじきじきに伝授される奥義のこと
脈躰=脈搏の状態


似非(えせ)坊主に、罰が当たった話です。
仮名草子で一番有名なお話に、
似非医師ではなく、藪(やぶ)医者モノがあります。
仮名草子「竹斎(ちくさい)」です。
藪医者の竹斎は、以後の藪医者モノのはしりです。
また、旅行記もの「東海道中名所記」や
「東海道中膝栗毛」にも、影響を与えた傑作です。
ぜひ「竹斎」、機会があったら読んでみて下さい。

___________¥¤¥᡼¥¸ 2  似非師匠の軽鴨の介


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