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絵入 本 朝 美 人 鑑
本朝美人鑑 巻㐧一
衣通姫(そとをりひめ)
(・・・衣通姫とは申けり) 御かどへ まいり給ふ 其初を尋る
に 此姫の御あね 忍坂姫(をしざか)と申は 天皇㐧一のきさきなりしが
みかど 御気色よろしき折ふし 自が いもうとは 生れつきたる美
質なり と申させ給ひしより 事おこりて みかど はやみぬ恋に
しづませ給ひ すみやかに 御使をつかはされ まいるべきとの 勅定
なり 時に衣通姫は 御あねの后を はゞかり 御免のよしを申
させ給へども とかく勅詔おもきうへはと しいて御使ともなひ奉
て 御門へは まいらせけり いつしか此姫君に 心うつらせ給ひ 御いと
をしみも ふかゝりければ 後はあね子(ご)も 御心よからず くやしくも覚し
めすさまに 見え給ひけり まことに うつりかはる世の中とて 物ごとに
あはれなれど 恋路は 猶まさりて いとかなしう覚えけり 一とせの
春 天皇 そとをり姫の御もとへ ひそかに御ゆきありて 物のひま
より 御ありさまを えいらんありしに 姫は かくともしらせ給は
ず みかどを こひしくおもひ給て
わがせこが くべき宵也ささかにの
くものふるまひ かねてしるしも
と ひとり口ずさみたまひしを きこしめして御門 いとど
ゆふに御いとをしく 覚しめし 御契 ふかく聞え給ふ
忍坂姫=忍坂大中姫(おしさかのおおなかつひめ)、允恭天皇の皇后
はゞかり 御免のよし=(姉を)気兼ねして、参上は許して下さいとのよし
ささかに=細蟹、ささがに、クモ、クモの糸、恋人が来る予兆。糸の枕詞、哥は古今1110
気兼ねしていたけれど、妃となり、
いつしか愛するようになった衣通姫。
春のある時、大好きな和歌を詠いました。
「こんなにも愛してくれているんだ」と知った天皇様。
さ〜、正妻の忍坂姫は?? |
本朝美人鑑
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絵入 本 朝 美 人 鑑
本朝美人鑑 巻㐧一
衣通姫(そとをりひめ)
允恭天皇に愛された美夫人を衣通姫と言います。
美しさは隣国まで聞こえ、和歌の道にも通じていました。
また琴も上手で、恐ろしいイノシシでさえ、
うっとりと臥してしまうほどです。
美人は古来、多くいましたが化粧や飾り立てで美しくしているだけで、
直ぐに化けの皮が剥がれてしまいますが、
衣通姫は、生まれながら蘭の花とじゃこうのよい香りがし、
美しさは衣服を通して輝いていらっしゃるお姫様でした。
本朝神武天皇より 㐧二十代の御門 允恭(いんげう)天皇の 御てうあいの
美夫人を衣通姫と申奉る 其すがた三国にならびなし 殊に
御心直(すなを)にして やまとしまねの詞うるはしく 情 人にすぐれて みぬ
もろこしの人まで したひけり 御歳十とせに あまる春のころ
花にたはふれ 琴を弾じ給ひければ おそろしき ゐのしゝも ふすゐ
の床に しきたへの かしらをかたぶけ ちやうもんし 虫 うろくづ
に至る迄 苦をはなるべき風情也 そも/\我てうのむかしより
美人といへる数おほし 然れ共皆ものをよせて 身をいろどり
人めを まどはすばかりにて 生れつきたる美女なし べにお
しろいの さいしきにおこたれば 忽(たちまち)いぬばこのはげたるがごとくし
湯水を以て 身をあらはねば わづかに一両日のうちにも はやいぶ
せくかほり来て さながら 魚肉のくさりたるがごとし 衣通姫は
しからず 天性の相好を ぐして生れ給へば あながち身をつく
ろい給はね共 いつもらんじやの匂ひし 御身のつや/\ かゝやきたる
が いくへも/\ 衣のうへに すきとをりて やみをもてらす 御よそ
をいなれば 衣通姫とは申けり
允恭天皇=第19代の天皇。仁徳天皇の第4皇子。
御てうあい=ご寵愛
やまとしまねの詞=和歌
ふすゐの床=臥猪の床、イノシシが茅・葦・枯草などを敷いて寝ている所。
また、人が野宿するためにそれをまねて作ったもの。
ちやうもん=聴聞、説法・法話などを聞くこと。
うろくづ=鱗、魚
いぬばこの=犬箱、犬が伏した形に作った、雌雄で一対の小箱。
昔、安産や子供の健康を祈るまじないに用いられた。犬張り子の源流といわれる。
らんじやの匂ひ=蘭麝、蘭の花と麝香(じゃこう)の香り。よい香り。
いぶせく=煩わしく、窮屈に、不快に
衣のうへに すきとをりて やみをもてらす 御よそをい
=衣通姫の語源になる、美しさが衣を通して輝く姫の意
透きとおるような美人っていますよね。
目が合うと吸い込まれるような・・・(^_^;)
そんな美人を見つけたら、
一日中、その方のことを思い続けるでしょうね。
衣通姫の記述は、「記紀」にありますが、
今回の話の展開は、「古事記」ではなく、
「日本書紀」の系統のお話になります。
あと2回、衣通姫のエピソードが続きます。
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絵入 本 朝 美 人 鑑
まずは格調高く「序文」。
中国の仙人の話や浦島太郎のお伽噺は、
伝説で明らかな話ではないですが、
いにしえの美人の名を得た人の経緯を学べば、
教養が高まり、心映えは素直になり、見習う鑑(かがみ)になります。
まずは「衣通姫」から始めて、計36人の美女の選び出して、
この本を「本朝美人鑑」と題しました。
・・・こんな内容です。
廬生の見し栄花の夢=邯鄲(かんたん)の夢、盧生(ろせい)という青年が、邯鄲で道士から枕を借りて
眠ったところ、富貴を極めた五十余年を送る夢を見たが、目覚めてみると、炊きかけの黄粱も
まだ炊き上がっていないわずかな時間であったという「枕中記」の故事。
人生の栄枯盛衰のはかないことのたとえ。
浦嶋=御伽草子・浦島太郎の玉手箱の話
侫女・ねじけおうな=心がねじけている女
そとをり姫=衣通姫、絶世の美女、詳しくは次回で。
珎説=珍説、異字体
貞享四年=1687年
鶴屋=鶴の異字体表示できません。雨冠の下に鶴
板=板木は板元のもので、本を刷る権利を持っていた。板株・いたかぶ
2つの板元が書かれているので、相合版・あいあいばん。板木を分担して持って共同出版か?
この草子を通して36人の美女の美しさと、
「心映え」を、学んでいくことになります。
一人目は「衣通姫」です。
次回、乞うご期待!
美人が大好きな_____φ(.. ) 軽鴨の介
本文は、基本は京都大学版を使いたいのですが、序文の抜けがあるので、他からもってきています。また、読めない字や虫食いなどありましたら、他の版を参照します。どうしても読めないモノは、古典文庫から教えてもらいます。なお「和国玉かつら」は、「本朝美人鑑」の改訂版の名前です。
奈良のデータは、1,5巻のみ。このサイトには翻刻したモノ(エンコーディングの変更が必要かも?)がありますが、ちょっと「難」ありですので参考にはしません。
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予告編
みなさん、こんにちは。
いつも読んでくださりありがとうございます。
「女郎花物語」が終わり、次に何を始めるか迷っていましたが、
やっと決めることが出来ました。
「本朝美人鑑(和国玉かつら)」という仮名草子です。
我が日本の美人を紹介する仮名草子です。
単に美しいから取り上げられたのではありません。
「容姿と心」の美しさが大事です。
外国の美女は美しくて有名ですが、
英雄に引き立てられる美人ばかりです。
しかし日本の美人は、違います。皆「才色兼備」ですね。
その美人の行い、歴史、和歌などを学べる、
「女訓モノ」になっています。
当ブログへお越しの女性の皆さんは、
薔薇も恥じ入る美女ばかり??と思いますが、
更に「才女・才媛」として、より一層の磨きをかけて、
無敵の美しさを追求してくださいね。
「女郎花物語」の続編として、
仮名草子「本朝美人鑑」をご紹介しますね。
只今、準備中。
乞う、ご期待。
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