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和哥奇徳物語
衣通姫の御事
衣通姫は允恭てんおう(天皇)の御后なりて いとく(威徳)とふと(尊)く
ましまし そのうへ和哥のことがら たへなりけり
立かへり 又も此世に あとたれん 名もおもしろき
わかのうらなみ(和歌の浦波) この神詠によりて ならの御かと(奈良の帝)の
御時 玉つしま明しん(玉津島明神)と あがめ奉り 和哥の祖神と
あかめ(崇)給ひし 御さいせ(在世)の御時 てん皇(天皇)皇姫をともな(伴)わせ
たまひ 和哥のうら(和歌の浦)にみゆき(御幸)し給ひしに にはかに波かせ(風)
あら(荒)ふして 御ふね(舟)すでにくつかへ(覆)らんとするに みかと(帝)を は
しめ(始)たてまつり ぐぶ(供奉)の人/\ あわてさわぎ侍りしに
后 あへてさはか(騒)せ給はす(ず) 舟はた(端)に立出させ給ひて
日の本は あまつひつき(天津日嗣)の みことのり わか大君の国と
しらす(知らず)や と 詠しさせ給ひしかは あめつちの神も この尊
詠に かん(感)し給ひしにや 波風も しつ(静)まり 御舩 めてたく
還行なりしとなり 又ある時 后姫 ひとり国*のうちに
まし/\て みかと(帝)を こひ(恋)給ひしに 折ふし 御まへに 蜘といふ
むし(虫)そら(空)より さか(下)り来しかは
わかせこが 来へき宵なり さゝかにの 蜘のふるまひ
かねてしるしも と 詠しさせ給ひけれは ほとなく みかと(帝)
姫の国*中に みゆき(御幸)なりけり さゝかには蜘といふなり 蜘
さか(下)れは 婦人 さいわい(幸)を得るといふ本文あり 今の人 夜の
さかりぐも(下り蜘)は さ(い・脱字?)わいありと いふ事 此いわれなりといふめり
衣通姫=記紀に絶世の美女と伝承される人物。
神詠=神が詠んだという和歌。
玉津島明神=和歌の神として住吉明神、北野天満宮と並ぶ和歌3神の1柱。
衣通姫も祀られている。
天津日嗣=皇位継承をする者。
大君の国=天皇が治める国、神武王朝の国。
あめつちの神=天地の神。
わかせこが・・・=今晩は、きっとあの人が来てくれるに違いない。
笹の根元で蜘蛛が巣を張っている、今夜はそれがはっきり見えるもの。
蜘=蜘蛛・クモ。
さゝかに=ささがに・細蟹、蜘蛛の別名。
国*=国か園か、別の漢字か、判りませんでした。??教えてください。m(__)m
和歌の威徳により、衣通姫は、
波風を静め船の転覆を防ぎました。
衣通姫は、美しさが衣を通して輝くことから、
衣通姫と云われました。
透きとおるような美女だったんですね。
今回は「和哥奇徳物語」から、
初めての翻刻でした。
次ページは「紫式部が事」と有りますが、
扱うかどうかは未定です。
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