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伊勢物語(第110段)仁勢物語(第110段)
伊勢物語(第110段)
むかしおとこみそかにかよふ女ありけり
それかもとよりこよひゆめになん
見えたまひつるといへりけれはおとこ
おもひあまりいてにしたまのあるな
らん
夜ふかく見えはたまむすひせよ
仁勢物語(第110段)
をかし男味噌つきにやとふ女有けりそれか許より今宵
夢になんみえ給ひつるといへりけれは男
おもひあまり 味噌玉ほしく あるならん
夜ふかくきつゝ 玉ぬすみせよ
参考1(第110段)
みそかに=ひそかに(伊)
いてにしたま=身体から抜け出た魂(伊)
たまむすひ=魂結び、魂がからだから浮かれ出るのを結びとどめるまじない、
平安末期「袋草紙・人魂を見る哥」を参照(伊)
味噌つきにやとふ女=大豆や空豆を潰す為に雇った女(仁)
おもひあまり=「余り」に掛詞(仁)
夜ふかく=「欲深く」掛詞(仁)
参考2
袋草紙から(右ページ4行目から)
袋草紙(愛知県立大学図書館蔵)
夜更けに、女性を盗むのも、
味噌玉を盗むのも、
たいして変わらないか???
______φ(.. ) 軽鴨の介
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伊勢・仁勢物語
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伊勢物語(第109段)仁勢物語(第109段)
伊勢物語(第109段)
むかしおとこともたちの人をうし
なへるかもとにやりける
花よりも人こそあたになりにけれ
いつれをさきにこひんとか見し
仁勢物語(第109段)
をかし男友達の額を腫せける許にいひやりけり
鼻よりも額そたかくなりにける
いつ顋先(ホウサキ)を小鬂とかみし
参考1(第109段)
人=妻(伊)
うしなへるかもとに=喪へるが元へ(伊)
あた=あだ、徒、はかなくもろいさま(伊)
こひん=恋ん、桜と人 どちらを先に恋い慕うことになると思っていましたか?(伊)
顋先(ホウサキ)=頬先、ほゝさき(仁)
小鬂=こびん、小鬢、「こ」は接頭語・髪のびん、頭の左右側面の髪(仁)
小鬂とかみし=小鬢とか、見し。(仁)
参考2
古今集 850
さくらをうゑてありけるに、やうやく花さきぬべき時に、かのうゑける人、身まかりにければ、その花をみてよめる きのもちゆき
花よりも 人こそあだに なりにけれ いづれをさきに こひんとかみし
病気したり、歳って来ると、「あと何回「桜」が見られるんだろう」とか、
「桜が、また見られた」で感動します。
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伊勢物語(第108段)仁勢物語(第108段)
伊勢物語(第108段)
むかし女ひとの心をうらみて
風ふけはとはに浪こすいはなれや
わか衣手のかはく時なき
とつねのことくさにいひけるをきゝ
おひけるおとこ
夜ゐことにかはつのあまたなくたには
水こそまされ雨はふらねと
仁勢物語(第108段)
をかし年より女の人の心をうらみて
風吹はとはに浪こす額にも
わかほうけたもかはく時なき
と常のたはことにいひけるを聞おぢける男
宵ことに烏のあたましろきこそ
とし月まされ雪はふらねと
参考1(第108段)
ひとの心をうらみて=男の心を恨んで(伊)
いはなれや=岩なれや、岩なのだろうか(伊)
ことくさ=言種・言草、常に口にすること、口ぐせ(伊)
きゝおひけるおとこ=聞いて負いこんだ男、自分の所為だと思った男(伊)
夜ゐことに=宵事に(伊)
かはつ=蛙、かはづ(伊)
あまたなくたには=多くの雄蛙が鳴く田んぼには(伊)
浪こす額=額の皺を浪に例える(仁)
ほうけた=頬桁、頬骨あたりの頬(仁)
聞おぢける=聞き怖じける、聞いてゾッとした(仁)
烏のあたましろき=烏の頭が白くなることは無いのに、このお婆ちゃんは既に白くなっている(仁)
「友白髪まで」、なんて難しいことなんだろう。
_______________φ(.. ) 軽鴨の介
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伊勢物語は、前日分にあります。
仁勢物語(第107段)
をかし下手なる鍛冶ありけるその男の本の主也
ける人を内證にたのみけり此鍛冶藤原の何ゆきと
あらんいひけりされとまたわかけれは物もおさ/\しからす
刃もつけしらすいかんや銘はきらさりけれはかの主なる
人本をかきてきらせて質におくさて主のよめる
つぶ/\と 長銘きれる 奈良かたな
手間のみとりて 賣るよしもなし
返し
やすくとも 金はとるらめ 奈良かたな
身さへなかると きかは請けなん
といへりけれは主いといとう誉て柄まて卷て刀
箱に入てやるとなんいふなる男文をこせたり質に
おくきて後の事也けりあく目のいてきぬへきにみ
わつらひ侍る御幸あらは此あくめは出しといへりけれは
例のかち色かはりてよみてとりかへしにやる
たび/\に 拭(ノコヒ)のこはす鉄漿(サビ)刀
躬(ミ)のこしらへに損そまされる
とよみてやれりけれは躬も鞘もとりあへす鵐(シトゝ)目
添へてもとしけり
参考1(第107段)
鍛冶=刀鍛冶(仁)
内證にたのみけり=内緒・内証に頼りにしていた(仁)
おさ/\しからす=しっかりしていない、未熟である(仁)
刃もつけしらす=焼き入れて刃を付けることも知らない(仁)
銘はきらさりけれは=銘刻出来ない(仁)
つぶつぶ=ことこまかなさま、くわしいさま(仁)
長銘=刀の、住国・姓名・名乗・製作年月日などまで刻んだ、長い銘(仁)
奈良刀=鈍刀の代名詞、奈良物(仁)
なかる=質流れ(仁)
あく目=悪目、欠点、刀に縦にできる裂けめ、ひび(仁)
拭(ノコヒ)のこはす鉄漿(サビ)刀=砥粉で刀剣を磨くムラで錆が出た刀(仁)
こしらへ=拵え、刀剣類の柄巻・金物・塗りなど、外装の総称(仁)
鵐=しとど、刀の柄頭や鞘の栗形などの紐通しの孔にはめる飾り金具(仁)
下手な職人、温かく見守る親方。努力、努力で笑えます。
♪わしとお前は奈良刀、切っても切れぬ仲かいな♪ http://www.alrincon.com/foro/images/smiles/0325.gif
鈍刀でも、切れ味が悪くても、折れなければ戦場では名刀です。
脳震盪させて、鎧通しでとどめ。討ち取ったぞ〜。そんなもんです。
名刀と言われた「千本木の烏口」だったな。__________________φ(.. ) 軽鴨の介 |




