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松林図屏風(長谷川等伯、国宝)
<<山水画の魅力>>
中国の山水画は、岩や木、あるいは山や川ということばをとおして語られた、中国人の人生観そのものにほかならない。私は悠久の風景を写し、時代を超えて人々を魅了する山水画の、漠々たる魅力に惹かれる。
「山水画の魅力って、なんですか? よく分からないんですけど…」
そのとき私は「それは風景に向けられた細やかなまなざしですよ」と答える。大自然のなかの小さな人間の営みに注目し、天候や湿度、光の移ろいをも描ききるのが優れた山水画の魅力だと思うからである。
特に光線の妙を描くには水墨画、つまりモノクロームが好まれた。彩色を手放すことは大きな冒険だが、それは眼に見える世界を白黒写真のようにすべて光の明暗に置きかえる行為である。
水墨画(すいぼくが)とは、「墨」一色で表現される絵画で、墨線だけでなく、墨を面的に使用し、暈かしで濃淡・明暗を表す。墨絵(すみえ)とも言う。
中国で唐代後半に山水画の技法として成立し、宋代には、文人官僚の余技としての、四君子(松竹梅菊)の水墨画が行われた。また、禅宗の普及に伴い、禅宗的故事人物画が水墨で制作された。明代には花卉、果物、野菜、魚などを描く水墨雑画も描かれた。
日本には鎌倉時代に禅とともに伝わった。日本に伝わった絵画は、『達磨図』・『瓢鮎図』などのように禅の思想を表すものであったが、徐々に変化を遂げ、風景を描く山水画も書かれるようになった。
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