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 裁判員制度は裁判員として参加する人に関しても、また刑事被告人としてこの制度に巻き込まれる人に関しても、憲法が保障した基本的人権を損なう危険が大きいため、基本的に私は反対なのでありますが、2009年5月21日に施行されて3年目の見直し期にはいっていることと、では反対の立場とはこの裁判員法を廃止することがベストの選択なのかどうか、先入観をできるだけ排除して改めてこの機会に考え直してみようと思いました。というのも、現時点で憲法に抵触すると私は考えておりますが、現行の司法が憲法を逸脱し、特に基本的人権はすでに何ら実体を伴わないものとなっているときに、憲法を拠り所とする闘いだけではいかにも心もとない、未来への展望が全く見えないと感じるにいたりました。
 
 司法とは何か、職業裁判官とは何か、そして冤罪はどうして起こるのか、さらに死刑制度をどう捉えるべきかというさまざまな疑問に、この制度を通じて、一般の市民が多様な目で判断し、現行制度の矛盾点に斬り込んでいく機会が転がり込んできたことも事実です。いかに制度全体が公権力のおもわくに満ちたものであるとはいえ、この制度自体がやりかたひとつで傲慢なる反動国家が不用意に出してきた渾身のブロウに対して、力なき者たちによる力なきパンチが絶妙のカウンターとなって炸裂する可能性もあるといえます。
 
 憲法を守るという立場から、憲法違反に目を光らせておくという態度は重要です。しかし、いったん憲法の人権ラインが反動国家によってなし崩しにされた場合は、護送船団方式による憲法擁護は急速に力を失ってしまうのです。思えば、私自身が国民のもつ可能性をいつの間にか軽視しておりました。
 
 能書きの長くなりすぎるところが私の欠点です。
 具体的に見ていきますと裁判員法の第1条がまず問題です。


第一条  この法律は、国民の中から選任された裁判員が裁判官と共に刑事訴訟手続に関与することが司法に対する国民の理解の増進とその信頼の向上に資することにかんがみ、裁判員の参加する刑事裁判に関し、裁判所法(昭和二十二年法律第五十九号)及び刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)の特則その他の必要な事項を定めるものとする。

 「司法に対する国民の理解の増進とその信頼の向上に資する」の部分は、まるで司法当局にはなんら間違いはないのだが、国民の無理解のために信頼関係を損ないかねないので、国民に対する教育の意味で実施するという意味に聞こえる文脈です。実際、日弁連のことはよくわかりませんが、検察と裁判所はまさにそのように考えているようです。
 
 私は、この法律全般にそういう考え方が、色濃く反映されているなかで、国民の権利をまもるためだといわれても嘘っぽく聞こえてしまうのは当然です。いまは制度の定着に懸命な裁判所が国民に歩みよった運用をしてはいますが、この法律の危険性が尋常でないことは間違いありません。私は、この裁判員法という器を活かしながら、冤罪をふせぐためには検察に対する裁判所の独立性を確保することも肝心だという視点も含めて、次のように改めるべきだと考えています。


第一条(改定案)  この法律は、国民の中から選任された裁判員が裁判官と共に刑事訴訟手続に関与することが司法に対する国民の権利に関する理解を増進させるとともに司法上の手続について監視し以て誤判を防ぐことが、その信頼の向上に資することにかんがみ、裁判員の参加する刑事裁判に関し、裁判所法(昭和二十二年法律第五十九号)及び刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)の特則その他の必要な事項を定めるものとする。 (赤字で書かれた部分が改正点です)

 こうすれば、国民の参加が国民の権利をまもるというスタンスになり、それぞれがどういう立場で臨むのかが、より鮮明になります。こういう意図で裁判員が意味づけられ、この目的に沿って法律の改定が進むのであれば「裁判員の『出頭』する刑事裁判に関する法律」と揶揄される状況は改善され、それこそ、なぜ迅速でわかりやすい裁判が必要で、具体的にそれはどういう具合に進むべきなのかについて裁判員の実践を踏まえた幅広い議論が可能になると思いますが、いかがでしょうか。

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