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 コンプレックスも大切な自分の一面です。綺麗ごとに聞こえるかも知れませんが、これを斬り捨てようとか、これに打ち勝とうとか、コンプレックスを否定的に捉えることは自己否定へと繋がっていきますから、あえて否定する必要はないと思います。かといって、コンプレックスに囚われていると壁を突破できないのも事実であります。

 ではどうするか、ということを考える前に、コンプレックスというものの正体を確認しておきましょう。コンプレックスには「性格」というものが深く関係していると思っていませんか。私はそこに周囲からの情報の刷り込みを読み取ります。私は「性格」という概念そのものを信用していませんが、それはさておいてもあなた(とりあえず二人称を使わせていただきます)のコンプレックスはその「性格」ゆえに存在するのではなく、そういう「性格」として情報を刷り込まれたがゆえに存在するのです。親や兄弟姉妹、親戚あるいは友人、知人によってあなたがそういう性格だと言われてきた事実があなたを苦しめてきたわけです。その情報が間違っていた、とは断言できませんが、少なくとも周囲の人たちがそろって陥っていた認識の誤りがあります。

 さて、私は「性格」という概念そのものを信用していないと申し上げました。「性格」という固定的な、遺伝をも連想させるその言葉は、全く罪深い言葉です。「性格」という言葉は個人の可能性を否定したところから出発しています。固定的だからこそ、「性格判断」で一喜一憂せねばならなくなるわけです。
 私たちは、暗い性格とか人に好かれる性格とか言いますが、「その人の行動様式やコミュニケーションにおける反応の仕方が習慣化されることによって周囲の人々に共通した印象を与えるもの」を「性格」として認識するに過ぎません。そして、それが習慣化しているのはその人がそれを選択しているからにほかならず、別のものを選択するには考え方を改めるだけで事足りるということ、それ以上でもそれ以下でもないというのが私の考えです。たとえ何万人の科学者が遺伝に起因した固定的な性格の存在を主張したにせよ、信用するかどうかはその人次第です。私は信用していないので「性格」とか「タイプ」とかいう概念は私の中に最早存在しません。それで、実生活で何か困ることがあるかといえば、全くありません。つまり、「性格」とか「タイプ」とかいう言葉は単に社会を混乱させているだけで、迷信の一種だと思っています。

 あなたが変えられないと思いつめていた「性格」は変えられる、場合によっては1日で変えられるということを踏まえたうえで、コンプレックスをいちど忘れることが大切だと思います。新しい生き方を選択するためには、日常を具体的に変えていくことしかありません。イチロー選手は国内でプレイしていた当時は「振り子打法」でヒットを量産していましたが、メジャーに行ってからは「振り子打法」という独自のスタイルをいともあっさりと変えてみせました。私はこの潔さが大好きです。
 新しい生き方で成功するかどうかはこの際あまり重要ではありません。新しい生き方に踏み切るかどうか、その潔さというか捨て身の生き方を選択しえたということが自尊感情に繋がっていくのだと思います。

 それができたとき、あらためてコンプレックスというものを思い出してみましょう。むしろ、コンプレックスがあなたを大きくしたとはいえないでしょうか。

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 私は若年性パーキンソン病患者であり、また趣味でサキソフォンをやっています。楽器は発病前からやっていて、病気の進行に伴い一時期はやめていましたが、DBSの手術が幸いにも功を奏し、一定程度の機能回復があったのでふたたび楽器を始めるに至りました。練習はほとんど毎日おこなっていますが、練習を通じて私が実感していることが、ひょっとしてパーキンソン病解明の手掛かりになって行くかもしれません。既に情報としては関係者の知るところであるかもしれませんが、そのときもその情報の裏づけ程度にはなると思います。科学とは、偶然知りえた情報によって思いもよらぬ進展をみせることがあると聞きます。この拙文は楽器操作の上達を目指したものではなく、あくまでパーキンソン病の解明のためであり、さらに言えば人間の肉体と意識との関係についてのある仮説を提供できると考えています。私を含めたパーキンソン病患者の未来のために、医療関係者などPD(Perkinson's Disease パーキンソン病)研究者の目に留まることを願うばかりです。少々分かりにくい説明になりますが、よろしくお願いします。

 私が練習で病気がネックとなっていると感じることができるのは、発病前から楽器をやっていた、その体験が記憶にあるからです。他の要因、例えば加齢にともなう衰えや体系的変化に伴う影響などとは体感的に異質のブレーキを感じ、なおかつ改善が非常に困難であるというのがそのネックなるものの特徴であります。

 それは人差し指と中指との相反する動きのなかで感じます。半音ずつ上げていく中でF(ファ)からFシャープ(ファ・シャープ)に移るとき、正常ならばFもF♯も左手は親指・小指以外クローズ(サキソフォンはリコーダーと同じ原理で音の高さが決まるようにできている)になっています。右手はFのとき人差し指クローズ、中指オープン。F♯のとき人差し指オープン、中指クローズ。つまりFとF♯とでは人差し指と中指とが入れ替わらねばなりません。しかし右手の人差し指はクローズのままでなかなか反応しようとしません。

 いろいろ試してみました。その結果、次のことが分かりました。
 最初は人差し指の緩慢な動きの原因を指が脳からの指令を受け入れがたいため、純粋に指の能力の問題と考えていました。そこで、力の及ばぬ指に力を及ぼさんとして他の指――殊に中指の動きをモーションを大きくリズムを指や前進で取るように心がけてみました。
 しかし、人差し指は思うように反応しませんでした。

 ところが、キーボード(鍵盤楽器)でメロディを弾くおりには人差し指は結構まともに動くことに気がつきました。キーボードとサキソフォンの奏法上の違いはいくつかあります。まず、キーボードでメロディを弾く場合、力を入れる指が音を出す指とイコールである点がひとつ。ふたつめは、鍵盤が視覚的に確認できることであります。この点、サキソフォンだとFからF♯に移動する際もまず左手が全てクローズである点や、右手人差し指がクローズであるのはFに限ったことでなくE、E♭、D(それぞれミ、ミ♭、レ)とクローズでしかもオクターブキーを左手親指で「押すことによりオープン」になり、さらには視覚的にそれらを確認できないために全て体感ないしは「身体的な記憶」でこれを行っていることに気がつきました。こうして考えると、スライド・トロンボーン以外の管楽器は奏法的に回りくどい作業を必要としていることが分かります。

 ときどきスプリングの強い楽器(私の場合、アルトよりもテナーにこの傾向がある)を奏しているときに、指がスプリングの圧力に負けてしまい、クローズのつもりでもオープンになっていることがあります。考えてみれば、クローズのときは指に力を入れてキーを押し続けていないといけません。これを敏速に人差し指の力を抜き、かつ放すという逆方向の力を加える一連の動作がスムーズにいくかどうかという問題であったのです。指がスプリングの圧力に負けてしまうというのは別に指が疲労をきたしているのではなく、キーを押し続けているという記憶が忘れ去られた結果であります。

 さて、私が仮説を立てたくなるのは、この「身体的な記憶」についてです。
 人間は(というより動物は)様々な動きを重ねながら次の動きに移ります。例えば、歩行においては腕を振ることによってよりリズミカルにまたはスピーディに歩けることを人間たちは「身体で覚え」ているはずです。ところが、私たちPD患者はここが非常に心許ないのであります。腕の振りをやめてしまったり、「すくみ」と呼ばれる歩行障害が現れるのは、身体で覚えていた基本動作が「身体的な記憶」というレベルで曖昧になり、私たちはその記憶(という能力)に頼らずそのつど考えて「答」を探さなくてはなりません。だから、歩行に新たにカバンや傘を持つという動作が加わると、ますます混乱してしまうのです。

 このように、動物には意識の上での記憶以外に無意識の中の記憶という領域があるのではないか、そしてPD(Perkinson Disease パーキンソン病)とはその記憶障害という一面があるというのが患者として体感できる仮説です。したがって、この病気は人間以外の動物にも現れうると考えられます。

 ついでながら楽器奏法の話に戻りますが、この記憶を鮮明にするために、敢えてFからF♯に移動する前のFの段階で「人差し指のキーを押す」という動作をモーション的にも大きくキーを叩くような感じで行ったところ、「人差し指のキーを離す」ということに関して条件付ではあるが、有効であります」。その条件とは、そのモーションからキーを離すまでが時間的にも運指上も近くなければ効果が現れないということです。このことも無意識の中の記憶が消失してしまうということで説明できそうであります。


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