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二人は、その犬の名前をプリンとした。
遠足からの帰り道で美姫さんが言った言葉が、きっかけだった。
「お姫さまの生まれかわりらしいの。」
いっしゅん不思議な顔をした猛君だった。しかし、名前を考えることに夢中になっていたのか、そのわ
けを聞かなかった。
「お姫さまだったら、プリンセスという名前がいいのかなあ。」
美姫さんは、すまなそうな顔をして答えた。
「飼ってくれるんだから、猛君が決めて。」
じっと犬を見ていた猛君が言った。
「それじゃあ、プリンセスをちぢめて、プリンがいいよ。」
確かに、つま先がこげ茶色で、ふさふさの明るいうす茶色のその足は、カップに入っているプリンのよ
うだった。
猛君の家までついてきたプリンを、犬好きのお父さんは、あたたかく迎えてくれた。
「ずいぶん立派なゴールデンレトリバーじゃないか。ちょっと年とっているのが、気にかかるな。」
お父さんは、顔のあたりに白い毛がまじっているのを見て、そう言った。
ゆっくりとした歩き方は、おだやかなせいだと思っていた猛君は、「お年寄りじゃ、プリンって名前
は、にあわないかな」と聞いた。
「いい名前じゃないか。大和猛だって、最初は『やまとたける』と名づけたかったんだけど、お母さんか
ら反対されてな。でも、強い人になってもらいたかったので、字を変えずに『たけし』という呼び方にし
たんだよ。」
お父さんの願いに反して、やさしい猛君はちょっとおくびょうで、争いごとが大きらいな子どもに育っ
ていた。
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