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長旅が終わりに近づく札幌駅発、上野行、北斗星2号。ハイケンスのセレナーデ(放送前のチャイムの曲名)の後に続く終着の案内放送。道中、殆ど顔を出す事が無かった5号車Bソロの乗客も、この時ばかりは「我先に」とばかりに支度を整え、デッキへと向う。

都内へ入った北斗星は、速力を落とし、終点上野駅へとゆっくりと向う。





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尾久車両センター。ここは上野駅発着の寝台列車が、束の間の休息を得る、数少ない寝台列車の「港」である。ここには、既に長旅を終えた「あけぼの」、「北陸」がその身体を休めている。勿論、「北斗星」も、この長旅を終えた後には、こちらへ回送され、今晩の新たな長旅に備える。









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北斗星はさらに速力を落とし、幾つかの分岐点を経て、ゆっくりと13番線へのアプローチを取る。このアプローチコースは上野駅発着の「特急」にのみに許された特別なルートである。








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9:38  終点上野駅に到着。3日前に、ここから旅立った場所に降り立つ。
停止、ドアが開く。「うえの〜〜!うえの〜〜!長らくの御乗車ありがとうございます。」
昔ながらの駅員さんの肉声による放送。ホームに足を着いた私を、この放送が一番に出迎えてくれた。
降りた私は一呼吸、ああ、戻ってきたのだな東京に・・・・・。いつも見慣れた上野駅、心なしか、いつもと違う別の場所に降りた気分がする。







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乗客が降りた後の13番線ホーム。私は往路と同様に、一両一両、別れる前の友人のように、この手で青い車体に触れ、心の中で礼を述べる。「ありがとう。お疲れ様。」
鉄の身体の彼等、触れる先は冷たいけど、不思議と温かみを感じる。







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最後尾では、「推進運転」の準備の只中。ここで粛々と準備をする推進機関士さんは、長旅を終えた北斗星を、尾久車両センターへと導く「水先案内人」として、その任に当たる。推進運転と言う特殊な回送は、今では、この駅でしか見られない珍しい光景である。


乗務を終えたアテンダントさんにも会う。「ありがとうございました。」と乗車中と変わらぬ笑顔で挨拶を受ける。彼女は一貫してディナーからチーフとして我々乗客に接してきた方であった。
一緒に居た百戦錬磨の風貌を持つコックさんも。笑みを含んだ黙礼。「また、きてくれよ!」と昔気質の板前さんのような、無言のメッセージを含んだ笑みのようだった。
こちらこそ、お世話になりました!

その後、名札に「研修中」が付いたアテンダントさんとも会う、彼女も私と目が合うなり「ありがとうございました!」と元気良く、綺麗な瞳で私に挨拶をする。世間の基準で見れば恐らく「平凡的」な女性かも知れない。しかし、一生懸命頑張っている女性は輝いている。その輝きは、鈍い私でさえ、すぐに判る程だ。頑張ってね!







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ようやく「御対面」となった先頭機関車、EF81。彼のこの姿をこの目で見るのはこれで最後かもしれない。次回、北斗星で旅する時は、彼はこの任務から退き、後釜となる、EF510が「北斗星」のエンブレムを掲げて、ここに鎮座する事になるだろう。

ちなみに、この写真に写っている親子は函館駅の連結に「暖かい拍手」を送った親子であった。ここでも親子は機関士さんに手を振り、気難しそうな表情をした機関士さんも、この時ばかりは穏やかな「紳士」の顔で、この親子に手を振った。機関士さんと言えども、やはり「人の子」であり、「人の親」でもある。







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発車ベルの後に推進運転で、「港」でもある尾久車両センターへと、ゆっくりと向う北斗星。
私は、親子に負けまいと去り行く北斗星に向って手を振る。友を見送る気持だった。
「さよなら・・・・・・北斗星。良い思い出をくれて本当にありがとう!・・・・さよなら・・・。」


上野駅、13番線に静寂が戻る。人気の無いホームに佇み、ようやく実感する。私の旅は終ったと・・・・・・・。


その後10番線へと向かい、最後の帰路に着く。旅は終りだな・・・・・・・いや、まだだ、まだ旅は終っていない、すぐにそうと気が付く。自宅に着いても、まだ旅は終っていない、旅の大事な事が残っている。今、私がやるべき事、出来る事、それを貫徹するまでは私の「旅」は終っていなかったのだった。

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