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日本政府は条約・声明を根拠に反論しなくてはならない
平成25年5月26日、李克強首相が、ドイツのポツダムを訪問した際、尖閣諸島の領有権を主張するに際
して「日本は盗み取った中国の領土を返さなければならない」言ったのは、単なる感情的な表現ではな
く、カイロ宣言には「満洲、台湾及び澎湖島のような日本国が清国人から盗み取ったすべての地域を中華
民国に返還することにある。」という事項があるからである。また72年の日中共同声明において日中両国
はポツダム宣言(カイロ宣言条項を含む)を遵守するとの合意事項があるからであり、中国側が尖閣諸島
の領有権の主張の根拠にしているものである。
これに対して「尖閣諸島は日本固有の領土である」と言っても反論としては説得力がない。むしろ「カ
イロ宣言の当事者である中華民国の蒋介石主席が、日本政府がポツダム宣言を受諾した8月15日から約2ヵ
月後、1945年10月の台湾進駐時において尖閣諸島の領有権を主張したという事実はなく、1952年の日華平
和条約においても、サンフランシスコ講和条約を承認しており、尖閣諸島の領有権の主張はまったくして
いない」と主張した方が、説得力のある反論となる。
つまりは、お互いの主張をぶつけ合う場合は、しっかりとした条約・声明を根拠として主張しあうことが
重要であり、それが相手国に対しても、国際社会に対するアピールとしても説得力を持って伝わることに
なる。
日本のマスコミの対中関係の報道スタンスにも、「日中平和友好条約を遵守すべきだ」という原則的ス
タンスが全く感じられない。日本の政治家や評論家たちも「中国はケシカラン」と言うばかりで、「日中
平和友好条約を遵守しようとしない中国はケシカラン」という論理的な批判は全くない。「日中共同声
明・日中平和友好条約こそ、日中両国民による“不戦の誓い”として大切なものだ。我々日本政府及び日
本国民も大切に遵守して来たのであるから、中国政府及び中国国民もしっかり遵守すべきではないのか」
というメッセージこそ理性的な政府・国民の採るべきスタンスが必要ではないのか。
日本人は、二言目には「毅然とした態度」という言葉が好きであるが、そこには自己主張をするために
は「論理の組み立て」が必要であるという自覚が全くない。しっかりとした「論理の組み立て」にはしっ
かりした「条約・声明」についての知識も必要であり、単なる「毅然とした態度」では、国際社会に対し
てはまるで説得力の無いパフォーマンスとしてしか見なされないだろう。
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