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ジョセフ・ナイ・ハーバード大教授



憲法解釈の変更「正当だが」 ジョセフ・ナイ氏に聞く

2014年3月16日03時12分


 ジョセフ・ナイ・ハーバード大教授が日本の集団的自衛権行使や安倍晋三首相の靖国神社参拝、日米中

の関係などを語った。主なやりとりは以下の通り。

「ナショナリズムとの連動懸念」 集団的自衛権でナイ氏

 【集団的自衛権】

 ――日本の集団的自衛権を巡る議論をどうみていますか。

 日本にも、他の国々と同じように集団的自衛権はあります。日本は戦後の憲法でこの点を非常に限定的

に解釈してきましたが、これをより広く解釈することは正当なことだと思います。

 ――集団的自衛権行使が米国側に資する状況とは。

 典型例は日本近海で北朝鮮が米艦船を攻撃し、海上自衛隊の艦船が近くにいる場合などでしょう。あま

りに狭い憲法解釈によって、日米が協力して対処する能力が妨げられる恐れがあるのです。

 米国は、日米はいくつかの困難な状況に直面していると考えています。その中で最も危険なのが北朝鮮

です。憲法をあまりに狭く解釈すれば、協力して取り組む我々の能力が疎外される恐れがあります。

 ――安倍政権は憲法解釈の見直しを考えていますが、日本国内には憲法改正で集団的自衛権を行使でき

るようにすべきだという意見もあります。

 憲法の改正は近隣国をさらに神経質にさせると思います。中国や韓国では、日本が軍国主義的になるの

ではという不安が生まれています。憲法改正はこの不安を増大させるでしょう。

 日本政府のいくつかの行動は、近隣国が懸念をしているこうした状況を悪化させています。たとえば、

安倍首相の靖国神社参拝や首相周辺の人々の、村山談話や河野談話見直しに関する発言です。

 米国内でも、日本で強いナショナリズムが台頭しているのではという懸念は出てきています。個人的に

は日本の大部分の意見は穏当なもので、軍国主義的なものではないと思います。

 ただ、米政府の言葉を借りれば、首相が自らの政策が近隣国との関係に与える影響にもっと注意を払わ

ないことについては、失望しています。私は政策に反対しているのではありません。ただ、ナショナリズ

ムのパッケージで包装することに反対しているのです。

 ――日本の集団的自衛権は東アジアの安定に資するものだと考えますか。

 日本の集団的自衛権行使は、ナショナリズムで包装さえしなければ、東アジアの安定に積極的な貢献を

果たしうるものです。日本は安倍政権の下で正しい政策を進めていると思います。しかし、首相の靖国参

拝や河野談話、村山談話見直しの兆候と合わさると、良い政策を悪い包装で包むことになります。

 ――むしろ「包装」の部分こそが安倍首相の心情であり本質だとしたら?

 我々が同盟国の首相の考えを決めることはできません。ただ同盟国として、「それをやることはあなた

にとって良くないし、我々にとっても良くないことだと助言します」とは言えます。

 私たちは一人の政治家や一つの政党だけでなく、日本全体を見る必要があります。私が、日本が攻撃的

な国になっていると心配していないのは、それが日本全体の世論ではないからです。同盟国の指導者の

やったことに失望すれば、我々は率直に失望を表明すべきです。しかし、これが日本の人々や日本という

国との同盟関係を失うことを意味するわけではありません。

 日本は「どうやって近隣諸国の懸念を引き起こさずに、理にかなった政策変更を行うか」と自問すべき

です。日本が平和を愛する国であり、軍国主義の国ではないことを示すための一歩を踏み出すべきです。


 ――日本の平和維持活動(PKO)の拡大については、どう考えていますか。

 平和憲法の精神にも合致していると思います。日本のPKOへの貢献は世界平和への重要な貢献です。

世界は安全保障の公共財を提供できる主要国を必要としています。

 ――安倍政権の評価は。

 日本に経済成長が戻ってきたことをとても喜んでいます。日本が世界に貢献できることはたくさんあり

ます。経済成長は日本の人々の暮らしにとって重要ですし、世界での日本の地位や日本の貢献という意味

でも重要です。

 安全保障政策では先ほど述べた通り、政策には反対しませんが政策を包む包装には反対です。同じこと

を、靖国参拝に代表されるようなナショナリズムなしでやるべきです。

 
【日米中関係】

 中国との関係で米国が望むのは、米中、日米、日中の「良い関係のトライアングル」です。これが最も

安定した形です。日中関係の悪化は我々にとって喜ばしいことではありません。

 中国はいま、新たな経済力と軍事力をどう使うかを見極めようとしている時期です。米国は中国に対し

て、冷戦時代のような「封じ込め」をやるつもりはありません。ただし、中国が東シナ海や南シナ海で隣

国をいじめるようなことは許さないということも、はっきりさせておきたいのです。

 ――クリントン前国務長官は「(既存の大国と台頭する大国はやがて衝突するという)古い問いに新し

い答えを見つける」と繰り返していましたが、米中の将来像は。

 まず、中国は今後も長い間、米国と対等の力にはなりません。多くの人が1914年時点の英独と比較

しますが、当時のドイツはすでにイギリスを上回る国力でした。

 私は、新しい関係とは東アジアでの勢力均衡だと考えます。米国がその一角を占め、日本や中国も一角

を占めます。ロシアはまだわかりませんが、最終的にはインドネシアのような国もより大きな役割を果た

すでしょう。

 東アジアにおいては、私たちはある分野では協力し、別の分野では競争する関係になるでしょう。た

だ、武力衝突につながる敵意や恐怖で特徴づけられた関係ではありません。

 ――協力と競争は共存可能ですか。

 歴史を振り返れば、協力と競争が共存した関係はたくさんありますが、21世紀にはこれがさらに強ま

ります。貿易は長年国家同士が協力してきた分野ですが、さらに気候変動や世界的に流行する感染症、国

際金融システムの安定など、協力しなければならない新たな分野が出てきています。これが、米中の新し

い関係とは何かという問いへの答えになるはずです。

 【日米韓】

 ――米国にとって、日韓関係の改善がなぜ重要なのですか?

 日韓関係については我々が直面する課題に目を向けるべきです。北朝鮮は深刻な脅威で予測不能です。

北朝鮮から自分たちを守ろうとするときに、日韓が協力や合同訓練をできないことは3カ国すべてにとっ

て危険なことです。

     ◇


 Joseph Nye(ジョセフ・ナイ) 

1937年生まれ。国際政治学者。クリントン政権で国防次官補として「ナイ・イニシアチブ」と呼ばれ

る日米安保再定義を主導した。

イメージ 1

http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887324277004578192562404013452.html

【肥田美佐子のNYリポート】

2012年 12月 21日

            安倍新政権は日本を暴走させない

          ―ハーバード大のジョセフ・ナイ教授に聞くー


 先日行われた第46回衆議院選挙では自民党が圧勝し、公明党と連立で3年ぶりに政権を奪還することに

なった。政権与党の民主党は惨敗。日本維新の会は第3党になる。

 外国メディアの中には、日中関係のかじ取りや経済再生といった問題について、自民党の政権運営に期

待する声もあるものの、中国や韓国をはじめ、英紙などからは、「タカ派」「右翼復活」など、今後の近

隣諸国との関係を懸念する声も聞かれる。


――民主党が大敗し、自民党が地滑り的勝利を収めた。選挙結果をどう分析するか。



<ナイ教授> 有権者が民主党に幻滅した、といったところだろう。国民は、さらなる変革を期待してい

た(が、得られなかった)。だから、民主党を拒んだのだと思う。この点が最も重要だ。東日本大震災な

ど、大変な問題も多かったが、そもそも与党としての経験がなかったことが数々のミスにつながり、3年

で首相が3人交代するという結果を招いた。

 最大の問題は、多くの事柄をめぐって内部分裂したことや、閣僚経験者と未経験者など、大臣の中で

も、経験の点でバラつきがあったことだ。有権者は、自民党にもっと一貫した政策を期待している面もあ

りそうだが、自民党への明白な支持というよりも、民主党へのノーという要素が強い。


――日本維新の会など、第3極についてはどうか。

<ナイ教授> 石原(慎太郎)代表の見解は時代遅れだ。それも、かなりまずい形での時代がかった考え

だ。問題は、石原氏と橋下(徹)代表代行の下で、(日本が)過激なナショナリズムへと突き進むかどう

かだが、答えはノーだ。議席は伸ばしたが、総選挙前に国民が心配していたほど大きな影響力を持つとは

思わない。


――教授は、英紙『フィナンシャル・タイムズ』への寄稿「日本のナショナリズムは、弱さの表れ」

(11月27日付)で、日本の内向き化を指摘している。米国のエコノミストや学者に取材すると、決まって

同じことを言われるが。


<ナイ教授> そうした状況が続かないよう望んでいる。内向き姿勢の問題は、1つには、低経済成長と

関係している。成長率の低さが、内向き化を助長しているのだ。安倍氏が経済を押し上げてくれるのでは

ないか。日本の人たちも、親日の国々も、成長率の上昇を望んでいる。


――教授は、寄稿文の中で、適度なナショナリズムが政治改革などに役立つ可能性に触れながらも、「危

険なのは、国家主義的な傾向が、象徴的でポピュリスト(大衆迎合)的な姿勢を生み、票にはなるが、近

隣諸国の反感を買うことだ」と警鐘を鳴らしている。


<ナイ教授> (日本のナショナリズムが)暴走するとは思わない。これは、軍事的ナショナリズムでは

なく、低経済成長という問題に反応する形でのナショナリズムである。中国では、日本が攻撃的な軍事的

ナショナリズムに陥っているという声も聞かれるが、そうではない。

 興味深いのは、安倍氏が、第1次政権下でのように、ナショナリズムを支持しながらも、中国や韓国と

地に足の着いた関係を保てるかどうかだ。経済が上向けば、楽観主義が戻り、日本にとって最も健全な状

況となるだろう。景気が良くなれば、首相や自民党に対する国民の支持も高まる。安倍氏がそうした方向

を目指しているのは明らかだ。


――自民党は、農協など、既得権益団体への配慮から、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)には消極的

だと言われるが。


<ナイ教授> 小規模稲作農家など、特定のグループから見ると簡単にはいかないだろうが、日本全体に

とっては利益になる。どの民主主義国家でも、内政は難しい。今こそ、真の指導力を発揮できるかどうか

が問われている。


――安倍次期政権の誕生で、日本や日中関係、東アジアはどう変わりうるのか。


<ナイ教授> 日本の針路ががらりと変わるとは思わない。おそらく日米同盟の維持が、日本の外交政策

にとって最も大切であろう。中国には強硬姿勢を取るとしても、日米同盟を尊重すれば、日本が危険な立

場に陥ることはない。

 とはいえ、日中いずれにとっても、国内のナショナリズム的感情により、他国の国家主義的感情が増幅

するような事態にならないよう努めることが大切だ。双方とも、相手国に対し、過度に挑戦的と映るよう

な問題は避けねばならない。

 今年10月、私は、ステファン・ハドリー元国家安全保障問題担当補佐官やリチャード・アーミテージ元

米国務副長官、ジェームズ・B・スタインバーグ前国務副長官とともに北京と東京を訪れ、ポピュリスト

的ナショナリズムが台頭しすぎると危険だと指摘した。各国の指導者たちが、不本意な形で問題がエスカ

レートするのを抑えられなくなってしまうからだ。


 われわれのアドバイスは、依然として(今の日中関係に)的確に当てはまる。

2014年01月19日


          靖国参拝は日本の戦略的利益にとって無意味(六)

              ーダニエル・スナイダー氏に聞くー


−−靖国神社を訪問する安倍首相の動機は何なのでしょうか。イデオロギー的信念なのか、あるいは自ら

の支持基盤の保守層との連携を強化するためなのでしょうか?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「安倍首相にとって、これは個人的な信念の問題だと強く確信している。彼は繰り返しそのように述べて

もいる。安倍首相は、最初の就任期間中に靖国参拝を行わなかったことを非常に後悔していると語ったこ

とがあった。彼は靖国参拝が自身にとって重要なことであることを明確にしたのだ。


<靖国参拝は安倍首相の信念なのだろう>

靖国神社参拝は、日本の誇りと愛国心の復活という安倍首相の信念の一部だ。これは、戦争についての彼

の思想的信念の一部であり、戦後レジームの正当性についての彼の見解でもある。彼は東京裁判や連合国

の占領に関連したその他の調査結果を否定している。彼にとってこれが個人的な信念の問題であることは

疑いようがない」


−−法律上 、靖国神社は民間団体です。とりわけ隣接する宝物館(遊就館)から判断すると、靖国神社

は歴史的「修正主義」の視点に固執する民族主義団体の影響を受けているように思われる。安倍首相の考

え方は、この種の団体とどの程度近いのでしょうか。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「これは日本の戦後の保守的な思想の進化の一部であり、複雑ではあるが、いくつかの一般化で要約でき

る。一部の指導者は完全に米国に支配され、西洋のシステムに組み込まれたものとして、日本の未来を見

た。彼らは基本的に、戦後日本の安全保障の重要性を軽視した戦略的決断を下し、その代わりに、国力と

世界経済における地位、経済的手腕、そして資本主義発展のモデルとして他国にアピールする能力を重視

した。それは、「吉田ドクトリン」の下に定着し、戦後、多くの首相がこのような考え方を示してきた。

そしてまた、米国との同盟関係が重要であるという意味で、戦後秩序の中核的な信念を受け入れた、さら

に民族主義的な視点があった。これはつまり、日本は戦前の姿に戻ろうとしているのではないという考え

方だが、多くの面で、日本のリベラルな国際主義的なビジョンを否定するものだった。このような考えを

持った人々は、日本が明確な文化的アイデンティティと国家の誇りに基づく国家となることを望み、そし

て戦後秩序を、多くの点で日本の独立性を奪うものであると考えました。彼らは、防衛·安全保障分野で

の独立と実行力を含め、失われた日本の主権を回復したいと考えてきた。

大きく分けてこれら2つの枠組みがあり、安倍氏は後者に当てはまる。安倍氏が尊敬する祖父・岸信介も

また同じ考え方を持った政治家だった。本当の問題は、日米同盟に賛成であるかということではない。結

局、岸氏は安保条約の改正を強行した。問題は、日本が世界秩序にどのように適合するかということであ

り、日本が永久に米国に従属することを望まないということなのだ」

                    
              アメリカは“対等な日米関係”に興味なし(二)

                 -ダニエル・スナイダー氏に聞く-

                       ピーター・エニス :東洋経済特約記者(在ニューヨーク)

(つづき)

――安倍首相の歴史観からすると、中国に対し強硬姿勢に出る可能性はありますか?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

歴史問題が影響してくる可能性はある。米国は、軍事および安全保障の見地から同盟国を支援する努力は

惜しまない。しかし米国は、日本が過去の戦争にまつわる問題を蒸し返そうとする動きを少しでも見せた

場合には、日本が引き起こした問題について支援するほどの寛容さは持ち合わせていない。

野田氏は、鳩山氏や菅氏と比べて歴史問題に距離を置いていた。李明博大統領の竹島上陸は極めて挑発的

で、かつ不要だった。しかしこれは、何ヵ月も静かな取り組みを続けた上での行動でもあった。李政権

は、慰安婦、そしておそらくは、強制労働に従事させられた朝鮮人への補償問題を処理するための、新た

なアプローチを打ち出そうとしていたのだ。

李明博政権は、韓国の憲法裁判所から、この問題に対処する新たな枠組みを構築するよう迫られていた。

野田氏は当初、これら韓国側の取り組みを拒絶するという対応をした。その結果、日韓関係の雲行きが極

めて悪化した。その後、日本の外務省がいくつかの案を提示したが、それは韓国からすると、不十分で遅

きに失した対応だった。野田首相と李明博大統領との間には、個人的に強い敵意が存在していた。


<米国人は歴史問題を注視している>

安倍氏はこうした経緯を理解している。安倍政権は発足当初から、韓国の新政権に接触しようと働きかけ

ているが、これは何らかの形で関係改善を図る必要があると認識していることの現れだ。

だが、トラブルはいとも簡単に発生しうる。たとえば、安倍政権、もしくは、閣僚の誰かが、「慰安婦に

関する河野談話を見直したい」との意向を表明する場合などが考えられる。

さらに危険なケースとしては、日本政府が、1995年の村山談話について、その中身を事実上後退させる方

向に“踏み出す”ことを目指すような、新しい談話を発表する場合などが考えられる。安倍氏はかつて、

そうした発言を行ったこともある。もちろんそれは表現の仕方に負うところも大きいだろうが、そのプロ

セス自体が曲者であり、日韓関係をいとも容易かつ突然に悪化させかねない。

米国人はこの歴史問題を注意深く観察しており、安倍首相に対してかなりの警告を発している。米国政府

内の人たちは皆、安倍首相に現実的な対応を期待している。これまで安倍首相は、現実的な政策よりもイ

デオロギーを優先するような見解を繰り返し述べてきたが、米国はそんな安倍氏を期待していない。


――日本が中国、韓国の双方と領土問題でもめることは、戦略的に賢いとは思えません。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

米国は、日本と韓国との間に緊張が生じたことにかなりのショックを受けた。日本と中国との間の緊張は

理解しやすい。中国が既存の秩序に異議を申し立てているからだ。だが、米国にとって、ともに同盟国で

ある日韓の緊張は、より厄介と言える。日韓の緊張は、米国がこの地域で遂行している戦略の妨げとなる

からだ。

<なぜ韓国、ロシアに妥協しないのか>

ここで問題点をひとつ指摘しておきたいが、日本の政府関係者たちは、歴史問題や領有権問題を語る際

に、中国と韓国とをひとくくりにする傾向がある。

米国の政府関係者たちが首をかしげるのは次のような点だ。つまり、日本はなぜ韓国と領有権を争うの

か。なぜ中国に焦点を絞らないのか。なぜ、中国に対する日本の立場を強化する目的で韓国と妥協しない

のか。これは戦略的にしっかりと筋が通った見方で、私も含めて米国人ならこのように考える。ところが

多くの日本人からは、次のような反応が返ってくる。

「いや、それは受け入れられない。これらはみな関連している。あるところで妥協する姿勢を見せれば、

中国はそれを弱さの現れだと受け止める。したがって、何事にも譲歩することはできない」。

率直に言って、このような考え方は戦略的にばかげている。中国の動きを本気で懸念するなら、なぜ韓国

と、そしておそらくはロシアとも、領土問題で譲歩しないのか。

戦略的理由は善悪の判断とはまったく別物だ。米国人はこんなふうに論理的に考えるが、紛争の中に潜ん

でいるアイデンティティの問題は見過ごしがちだ。

日本では総選挙の結果、安倍氏と自民党の歴史見直し主義者たちが政権に復帰したが、米国としては、日

本政府が理性的な計算に基づいて行動するものと信じたい。しかし、政権への復帰を果たした見直し主義

者たちは、アイデンティティ、プライド、歴史、感情、愛国主義など、戦略とは関係のない要素に駆られ

て動く可能性もある。韓国についても同じことが当てはまり、それが事態を実に複雑にしている。


――歴史問題も含めて、日本の自立への願望はどうすれば満たされるのでしょうか。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

私は、日本が米国への依存から脱したいと願うことは健全なことだと思う。ただ、それは日米同盟を維持

したままでもできることだ。もし日本が自力で行動する意思を持ち、そのための準備を整えるようになれ

ば、それは日米同盟にとってもよいことだ。

これは軍事的な面だけを指して言っているのではない。経済、テクノロジー、エネルギーなど、軍事以外

のグローバルな政策分野でリーダーシップを発揮することも視野に入れての話だ。日中韓3国の連携な

ど、米国が参加しない地域機構を構築することまでも含まれる。これは米国にとってもよいことだ。

米国は、日本との間でくすぶり続ける事実上の「新植民地主義的」な関係を清算するのに、手を焼いてい

る。そして日本の側は、従属的な関係から抜け出そうとあがいている。

残念なことに、米国政府内のほとんどの外交政策専門家たちは、共和党・民主党を問わず、つねに「イエ

ス」の返事を返してくる日本を期待している。同盟関係に対する彼らの考え方は、ほとんど昔のままだ。

彼らは、真に対等な協力関係には関心がない。それは米国が大国であることのマイナス面の現れだ。大国

にとっては単独で行動するほうがずっとやりやすい。支持はしてくれても本気で異議を唱えない同盟国

は、好都合な存在なのだ。(完)

2013年02月14日

                アメリカは「対等な日米関係」に興味なし(一)

                 -ダニエル・スナイダー氏に聞く-

                             ピーター・エニス :東洋経済特約記者(在ニューヨーク)


(つづき)


――これからの日米関係を語るにあたり、カギとなるのは中国です。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

それは重要なポイントだ。中国は、軍事面でも、そのほかの面でも、アジア地域における影響力を拡大し

ようとしている。その結果として、もし日本が脅威にさらされることになれば、米国は断固として同盟国

を防衛することができるし、またそうすべきだ、と私は考える。

民主党政権時に、日米関係がぎくしゃくすることは多かった。その一部は、日米双方に同盟関係を維持す

るうえでの不手際があったことが原因だった。沖縄の基地問題の取り扱いがその好例と言える。

民主党は、外交政策や東アジア共同体についてのビジョンについて説明するのが極めて下手だった。もし

民主党の声明文を注意深く検討し、その真意を問いただしていれば、その考え方は米国が目指すものと相

いれないものではないことは明白だった。アジア・太平洋地域の重視を打ち出したオバマ政権の外交政策

と、民主党および鳩山由紀夫元首相の構想との間には、大した違いはなかった。


<米国は「民主党=親中」と読み違えた>

民主党の真意は、「親中」政策ではなかった。民主党が意図していた政策は、複数の地域機構の中に中国

を取り込むことによって、中国の台頭に対処しようとするものだった。ともかく鳩山氏は、アジアの他の

国々との関係を積極的に改善しようとしていた。念頭に置いていたのはインド、それに一定の範囲で韓国

だ。続いて首相に就任した菅直人氏も、ある程度その方針を引き継いだ。もしチャンスがあったなら、民

主党はロシアとの関係も大きく前進させるよう努めていただろう。

これは要するに、中国に対する一種の「擬似封じ込め政策」だった。ただし従来の意味での封じ込めでは

ない。中国を取り囲む国々が協力関係を構築することによって、一方的に力を誇示しようとする中国を抑

えるという政策だ。

この目標は間違っていない。これはTPPだけではなく東アジアサミットへの参加など、米国がこれまで

やってきた政策と整合している。

民主党とは実りの多き対話もできたはずだ。ところが民主党は自らの考えをうまく説明してこなかった。

そして米国側は、民主党は親中だと読み違えた。


――中国側の態度にも変化がありました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

そのとおりだ。中国の外交政策が攻撃的な姿勢に転じたのには、オバマ政権も含めて、誰もが不意を突か

れた。ブッシュ政権時には、ほぼ全期間を通じて、中国はアジア地域で"友好的な"外交を展開していた。

ブッシュ政権がイラクとアフガニスタンの戦争に気を取られているという状況をうまく利用していた。こ

の地域の国々と自由貿易協定(FTA)を締結し、攻撃的で横柄な態度は見せていなかった。

オバマ大統領は、政権発足当初、極めてソフトなアプローチで中国に臨んだ。人権問題について公然と批

判することは控え、いろいろな分野で、中国政府との協力関係を模索した。オバマ大統領の政策は、日本

の民主党が目指していたことと似たり寄ったりだった。

ところが2010年に入ると、中国は韓国の哨戒艦沈没事件で非協力的な態度を示し、米国空母の黄海への配

備に異議を唱え、日本とは漁船衝突事件を引き起こした。中国は、米国、そして一定の範囲で日本がこの

地域が果たす役割に、異議を唱えるような強硬姿勢をとった。これには誰もが不意打ちを食らい、愕然と

した。

そこで米国は、中国に対し強い態度に出る方向へと舵を切った。それを最も明確に示すのは、ヒラリー・

クリントン国務長官が2010年にハノイで行った演説だ。その後、南シナ海および尖閣諸島周辺で領有権を

めぐる争いが目立ってきた。これらの領有権争いは以前からくすぶっていたが、中国が極めて攻撃的な態

度で自己の主張を押し通そうとしているため、その重大性が高まっている。


――自民党の新政権は、中国にどう対応すべきでしょうか?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

安倍首相は中国と外交上の協議を行うことに意欲を示している。野田政権の姿勢から大きく変化すること

はないだろう、と私は見ている。野田政権は中国に対し、バランスのとれたアプローチで臨んだ。中国に

対して外交的に接触を試み、対話に引き込もうと努力する一方、毅然とした姿勢も示した。

米国は野田政権に対し、米国は日本を支援する用意があるが、日本が中国を挑発していると見られる場合

には支援しない、というシグナルを送った。(つづく)

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