見習いぽっぽ

東日本の復興と、日本の国の立ち直り、子供達の明るい未来を切に祈ります。

ゆきずり

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気になるお嬢さん 2

諸般の事情でパートに出ることになった。
某地方都市のデパート。 そう、デパートのパート ← おばちゃんだけどおっさんギャグ、いやダジャレ。
 
そこには正社員と我々パートの他に、メーカーからの派遣社員、契約社員たちが居て、
ある日、我々の売場の一角を占める某メーカーつまりテナントにお嬢さん新人契約社員が入って来た。
 
若い社員の多い職場、おばちゃんはこのお嬢さん新人には軽く挨拶程度にとどめて深入りはせず。
彼女の優先事項はテナントに一人しか居ない先輩社員と仲良くして信頼関係を築くこと。
そしてもちろん商品知識を含めて仕事を覚えること。
そのためにも先輩社員とは風通しの良い関係で居なくてはね。
なればこそ、おばちゃんは余計なおしゃべりをしてはいかんと思ったのでござる。
 
おばちゃんの売場と彼女たちのテナントを含めて形成するひとつの売場、ひとつのチーム。
この売場チームに課長、その下に女性の主任という生え抜き百貨店社員が居た。
 
広い売場に、たまに新人契約社員と二人きり、主任を入れても三人きりという日もあったが、
主任が彼女に割りと話しかけておられるので当然ながらおばちゃんパートは余計な口は利かず。
新人さんにとっては主任と近づきになれる機会ですもんね。

ある日突然、この新人さんが来なくなった。
指導係である先輩社員が気にしている内にとうとう辞めてしまった。
しかも、辞める間際に先輩社員に仕返しをしてやる的な発言をしたらしい。
「怖いね、人は見かけによらんわね」と主任さん。 何か釈然としないおばちゃんパート。
 
それから数日後、おばちゃん宅に心当たりのない品物が届いた。 差出人は突然やめた新人さん。
おばちゃんは察した。 手紙も何もなかったけど、察しの悪いおばちゃんもさすがに察した。
 
指導係でもある先輩社員と打ち解けきれない内に、
主任から日々余計な先入観を植え付けられ、その毒がだんだん効いていった新人のお嬢さん。
先輩社員やそのお友達正社員連中が自分に厳しく、なんだか疎外されたような気持が強くなり、
意地悪い眼で見られている、陰口を叩かれていると思うように、いや、思い込まされてしまったのだと。
 
そうとも気付かずおばちゃんは何度か目撃したんだった。  あの主任がお嬢さんに耳打ちする場面、
時に洩れ聞こえる「気にしないでおこうよ」だの
「ほっとけばいいのよ」だの
「先輩社員はああいう人だから」「ほんと困るよね」「貴女も大変ね」などなど笑いながら。
就職したばかりの若いお嬢さんに「主任」の言葉は大きい。 

お嬢さんが直接先輩社員に尋ねる方がいいと、最低限の助言に留めていたおばちゃんも、
お嬢さんの頑張りや工夫にはたとえ一言でも声を掛けるようにはしていた。
「うわぁ、やっぱり違いますね。私らではこんなんとても無理ですわ」
「いいと思いますよ。先輩社員さん喜ばれますよ」 「ここのところの工夫が良いですね」
「先輩社員さん褒めておられましたよ」 「いつも早いですね、眠くありません?」
「こんなことは私に言って下さい。ついでなんですから」なんて。

いくら考えてもこれ位の言葉しか浮かんで来ない。
それがあのお嬢さんには、あの職場で交わした数少ないまともな会話だったんだろうか。
そこまで孤立していたんだろうか。
 
出来れば先輩社員さんとのパイプになってあげたかったけど、いやそうすべきだったのか。
たかがパート、たかがおばちゃん風情。
このおぱちゃんと同世代の女性主任がそれを許すはずはないとは思うものの、
夫でさえ見抜いていた主任の腹黒さに、そこまで悪い人居ないやろと高を括っていた迂闊。
だって職場じゃん、主任じゃん、若い子たちを纏めるのも仕事でしょ。いじめを煽ってどうすんのよ。
主任がそこまで屈折していたなんて。 そこまで例の先輩社員に嫉妬していたなんて。
 
あの娘はどんな気持で毎日来ていたんだろう。
どんな気持で「いらっしゃいませ」なんて笑顔を作っていたんだろう。
 
辛い思いをされた分、
思いやりのあるお嫁さん、優しいおかあさんになっていて欲しいなんて思うのは虫が良すぎるかなぁ。
生来のぼんやりと不況に 「よいお歳」も加わり、なかなか就職出来なかった頃。
 
本とパソコンとやる気さえあればなんとか面接にこぎつけられるかも…と格闘    
で、もっとも独学向きと狙いをつけたMOUSのwordとexcelをゲット。取り敢えず「一般」
プラスワープロ3級、あと秘書検定2級に算盤も2級だったかな。
ビジネス実務法務3級なんてのもついでにもらい・・・まだ何かあったと思うけど忘れちゃった。
 
そんな安い資格を寄せ集め、自分らしくもなく頑張って、
やっと採用通知を頂いたものの、雇って下さった理由が後ほど判明

私の配属された職場の風紀の乱れ・・・それが理由らしく、
若い人では神経が参って次々に辞めていくから、年配の人を採用しようとなったらしい。
 
ところが自分の口から言うのもなんですが、
年配のおばちゃん皆が皆ワイドショー馴れしているわけではない! (きっぱり)
 
そんな非日常の光景が自分の身近、いや目の前にあるとは想像も出来ず。
机をくっつけて島状態の三人きりの職場、別コーナーの社長を入れても四人。
判らん筈ないやろうと言われても、「いや、なんだか兄妹のように仲が良くていいなぁと」
あんたはいくつやねん! いい歳してっ!と、なんで怒られなあかんのん?  
しかも歳まで持ち出して ・・・ふぇ〜ん。
 
職場では私のフロアもよそのフロアも、
同じビルの他の会社や出前屋さんまでも周知の事実だったらしく、
私が本当に知らなかったとわかって目一杯呆れられた。
 
そらそうだわね。
社長と運転手を除けば最年長の元主婦の私。 しかも関西の主婦でっせ。
火がなくっても煙くらい立てなくちゃぁ、と ← 言い過ぎ。関西の主婦ご免。
 
それが判ってからは何だか頭が変になりそうだった
今までに辞めて行った若い女性たちよりも免疫がなかったのかも。
 
その頃から身体を壊し始め退職に至ったものの、あのまま居たら・・・いや、居れませんね。
そんな上手にとぼけられませんもん。 
居たとしても、お二人のご関係を知っての上での言動しか出来ひんと思う。その方が楽。
意外とそうやっちゃったかも  
 
その、当時の所帯持ちの副社長とお嬢さんぽい恋人をたまぁに思い出すことがある。
年末年始やクリスマスになると、
気が強そうでいて淋しがりのお嬢さんはどう過していらっしゃるのだろう…と。
 
風の噂によると、仕事をしない副社長もついに社長の椅子を手に入れられたとか。
幼くしてご両親を亡くしたあのお嬢さんは今も彼に尽くしているのだろうか。
彼はなおも自分より遙かに裕福なお嬢さんを利用し続けているのだろうか。
子煩悩な彼は恋人をやきもきさせることすら面白がっているようにも見えて、
幼稚な正義感の残る私は、そんな最低なクズを上司と仰ぐほど大人ではなかった。
 
自分の子供なら当然 叱っただろう。
自分を賭けてでも目を覚ましてもらおうとしただろう。
辞めずに居てお嬢さんと気心が知れるほどになっていたら、なんらかの言動は取っていたと思う。
 
彼女のご両親、特にお母さん、天国でどんな思いで見ていらっしゃるのか
本人の問題だと言えばそれまでなんだけど。
 
余りにも回りの人達が冷たかったもので、それも何だかおとろしいなぁと、
今も折に触れてはあのお嬢さんを思い出す。
貧しい私の人生のゆきずりに触れ合った、と思ったあのお嬢さん
当時で三十代後半、今はもう五十間近になられたのではないだろうか。
 
なんというもったいない人生、なんという無駄遣い、← いや、人のことは言えませんけどね。

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