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真っ赤な部屋の真ん中に大きなベッドがあった。
Santana Corazon Espinado が心地よくテンポをとってリズムを踊っていた。リズムがリズムをとって踊っている。
私は定まらぬ足首に力を入れて、しっかり歩いた。宙に赤い蝶々が浮かんで足元のジュータンには色とりどりの鮮明な花が咲いていた。私は、そのお花畑をワン、ツー、ワン、ツーと体を左右に振ってリズムをとった。
なぜなのか、よくわからないけれど部屋の中は赤かった。窓の向こう側は海の底のようにブルーの世界が広がって冷たそうに見えた。ほんの少しのひび割れでも100年も続いてドッと海水が流れ込んできそうな危険な風景だったが様々なお店の長方形の看板が近代的なLEDの灯りに満ちて私の顔にも彼の顔にも稲妻見たく白く光っていた。
熱い電流が体中に流れヒリヒリと痛んでひんやりと冷たい液体に体が敏感に反応して私と彼は小刻みに何度もしつこく痙攣を起こした。そして、何度も又痙攣して宙に赤い蝶々を見た。彼の体が蛇のように妙に冷たかったのが幾分気になった。私の体はといえば、溶けるように暑かったのだが、私たちはとても会話に乏しい男と女だった。たくさんの疑問に答えは欲しかったが別に急ぐ必要はまったくなかった。強いていえば彼の研究している学問と職場の名前とどこで生まれてどんな青春を送ったのか、とか、ま、自分の何もかもいわず、あれこれと興味を持って聞き耳を立てるのは失礼かとおもったと言うのが真実かもしれない。
部屋の色が昼間の色に変わってぼんやりと空間を見つめている時だった。彼は白い背中を私に向け全裸で小さなお尻を私のほうに向け金属みたいなしっかりした声でいった。
「あの、驚かないでといっても、無理かもしれないですが、
広島で人を殺してきました。相手は女性です。有名な研究者で古くからお世話になって、そして男女の関係もありました。一方的に人を殺しました。素直に自首しようと思っています。貴方にはまったく関係なくて偶然ホテルに一緒に泊まったという関係でそのほうが事件を簡単に処理できるでしょう。お願いします。何もかも忘れてください。」
彼はコートを着込んで古いカバンを持って何処かにいった。春にしては記録的な寒い朝にかんじた。私は、何も考えず、ジッと深い眠りに入った。春先の京都のどこか分からないホテルの部屋で一時を男女の絡みで楽しんだ、そして男が言ったすべてを忘れようと思っのだ。私には彼にしてあげる何物も持ちえていなかった。
続く
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短編「京都から神戸へ」
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お店の小さなドアに取り付けた銀の鈴がカラコロと金属音を奏でるたび、私はハッと我に返って目を見張った。私を抱いたジントニックの男かしら、と正気になった。
果てしなく、私はあの男が恋しくなった。体の中心が溶けて流れだしそうになった。もっと、もっと、近くから彼の顔を肌のぬくもりを感じたかった。ぼんやり、タバコを吸いすぎ口の中の味が変わってフィルターに火がついているのさえ分からないほど店は暇、私は彼が欲しかった。仕事などどうでもよかった。
「もっと、良い写真が撮れたら良かったんやけど・・・こんなんで堪忍なぁ、ねえ、あなた」カウンターの同僚のホステスさんが祇園裏の公園で仕事前に撮った見事なサクラの写真を私の前においたけれど、私はまったく耳にも目にも入らなかった。あきれ果てて、「好きな男でも出来たんか、お邪魔してしもたさかい、しゃ〜ないわなぁ。」といって笑った。
この世に嫌いなことはたくさんあったけれど、お店が暇なときには、心の底から嫌気がさした。
光り輝くほどの美人ではなかったけれど、とても性格のいい、私と同等ぐらい男が好きな仲間だった。写真が好きでカメラにお金をかけて3月下旬の京都のサクラの満開を撮り続けていた。確か、私より3つほど年下で適当に男と付き合っては別れ延々といさかいもなく、現在は1人の身といっていた。この街京都の実家から夜の仕事でこの店に来ていた。お店が忙しくしっかり働いてお腹がすいたときは何度か、彼女と隣の隣のカツ丼屋さんに寄って一緒に夜食を食べたことがあった。
そして、午後10時ごろそのカツ丼屋さんの若いコックがお店にやってきた。勿論、顔馴染みだった。頭は丸坊主のドングリのような目に似合わない眉毛がとても濃かった。白いコックの服装で格好などどうでもいいと言う雰囲気はとても好感が持てたけれど、生理的に好きなタイプの男ではなかった。私はその小太りのコックに生ビールを執拗に勧められ、どうせ店は暇だったのでガンガンいった。
ほろ酔い気分におそわれ、さあ今日は少し飲んでやろうかといきがった瞬間、入り口の銀の鈴が鳴った。薄いコートを羽織って大きな黒のカバンは大層汚れて所々色はかすれ、肩から重そうに下げ、長い髪は幾分オデコにかかって、目の縁はコケ落ちて、私はジントニックのやつれた顔を見つめ声を失った。時計は23時30分を過ぎていた。
逢いたいと思ったらあえなく、諦めたらあえたりして、男と女はなぜにこのように巧くいかないのかしらと酒に酔った自分を幾分恥じた。仕事に入ったときのような、男を思いながら、私の中心は熱くなってはいなかった。私は、男をじっと見つめ黙ってジントニックを丁寧につくった。私の唇はすっかり言葉を失ったように彼を見つめた。私は彼にじっとその私の唇を見つめて欲しかった。ほんの少し酔っていたけれど、今、ここで世間を大いにはばかって全裸であろうがなんであろうが、彼に抱きしめて欲しかった。
続く
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昨晩も深夜遅くにお店が終わって軽くお酒飲んでマンションに戻った。朝7時頃目覚めてガラス窓がうっすらと霞んで室内も3月の下旬に割には暖かく感じた。似合わないと思いつつ小さなストロベリーがいっぱいの寝巻きを着て、窓を小さく開けた。
朝の冷たい空気が私の口から喉を伝って肺に向かっていったがまったく実感がなく、なんとなく息苦しい。私の肺は酸素を拒否し、ああ、このままでは絶えられないほど息苦しいと感じ、タバコの吸いすぎで肺ガンでもなったかしらと一瞬心配になった。遠くの河川敷にはたくさんの車の不法駐車が見えた。まるでプラモデルのようだった。遠くに赤い消防車がサイレン慣らし醍醐を北上していた。
幼いときから私は「過呼吸症候群」と言う病気を持っていた。何か心配事、驚き、ショック、深い悲しみなどを受けたときに、過度の衝撃を肉体が受けて、必要以上に酸素を体内にいれ、酷いときには意識不明になって救急車となった。軽いときにはナイロンの買物袋をしっかり口にあてがって息をする。二酸化炭素を多く体内に入れてやるとやがて体はよくなった。
今朝も心が重く、呼吸も幾分苦しいのでビニールの袋を口にあてがい数分、ゆっくり呼吸した。この切ない胸のうちはあのジントニックの男の事を無意識に考えていたせいだろうかとも思った。押さえ切れない恋心とも違う。あの男には家庭は、恋人は、次々と思いは拡散して水の表面にほんの少しの油を落としたように気になるほど広がっていった。
伏見区小栗栖山の稜線を見つめ、麓の山道の両側に白く咲き誇った京都の見事な桜をみつめ、今頃、故郷、札幌は綺麗に雪解けが終わっただろうかと思いを募らせた。尽きない、女の深い詮索は性格的なもの、と諦めているが、ただ一日一日とおばさんになっていく自分は一体どのように生きていけば、などと大きな壁にぶつかって、何でもないような顔をして、赤の他人が生きている社会がまったく分からなくなっていった。
続く
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祇園白川
いつのことだったろうか、何曜日だったろうか。どんな風に話したらいいのだろうかとか、時々脳裏を掠めていくけれど、記憶が曖昧で、しかも私はどのようにこの肉体を愛撫され抱擁され、あの男にナメクジ見たい舌の彼の唾液が私の皮膚を這ってライトの灯りに照らされ光の軌跡を描いたのかまったく記憶がない。簡単に言えば裸にされ、丁寧に全裸にされ、赤ん坊のように両足をあげ、甲高いうめき声を上げただろうか。彼は酒に酔って意識ない女の私をまるで生きたマネキンみたい女の大事なところまでペロペロなめ回して、私はきらきら膣内の遠くから流れ落ちる愛液と彼の粘っこい唾液の液体は肉体の溝を上から下へと流れ込み彼の大きな雄が延々と私の中に入り込んでいった姿を思いだし、彼は最高のお叫びを張り上げて、白い男の張り裂けそうな全身の筋肉を何度も痙攣させ、私の膣内に溢れるほどの精液を吐き出しただろうかとか、そんなことを考えて。悶々と日々仕事にでていた。
当分の間、反省の生活に浸ろうと自分を責めた。女として最低の初対面の男との肉体関係は、私のすべて空想の快楽としてしっているのは肉体と脳だけかもしれないとおもった。その悔しさは果てしない。ジントニックの書置き、ホテルのベッドの枕元のメモ書きが唯一彼の素性のすべてだった。
「すいません、許してください。僕もすっかり酔っていました。大学の研究室はこの次にお会いしたときに、自分の住まいも汚れていますが、ご案内いたします。あの、正直に申し上げます。僕は酔って意識ない貴方を全裸にして自分の自由にいたしました。心より深く申し訳ない気持ちです。
責任と言う昔のお話、流儀でいいますと僕は責任はどんなことでもお受けいたします。そして、できればこの言葉だけ素直に受けてください。お願いします。僕は貴方をとても愛しています。それと愚問ですが万が一貴方に好きな男性がいないという必要最低条件が必要かもしれないです。
そんな書置きがあった。私は今日は仕事が休みでお風呂から上がって鏡の前で自分の乳房をしみじみ見つめ、何度もため息をついた。朝から降った雨は夜になっても止む気配はなくマンションのベランダのカラの鉢にどこからか流れてきた雨だれの規則正しい音がポタポタと孤独に聴こえてきた。
京都伏見区小栗栖南後藤町の高層マンションはひっそり雨の京都に沈黙した。
続く
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夜の闇が幾重にも重なって時間は刻々と深夜へと進んだ、そこに一体何の意味があるのか私にはわからなかった。お店の仲間に小さな声で、貴方、大丈夫と何度も言われるほど私は深く重く酔ってしまった。時折、果てしない社会からの疎外感に犯された夜だ。苦いタバコを無意味に何本も吸うように、私は苦い酒に酔って下半身に漣のような痺れを感じた。次々と常連様がやってきた。もう、すっかり忘れたが京都に大きな祭りがあって満員電車の中見たく小さな店は混雑した。客に勧められた酒は余程の事情がない限り口に運んだ。そして、何度もトイレに行って二度ほど吐いた。
お店がグッシャリ傾き、ヤバイと心は正気を維持したが、何せ体がフラツキ、こんな時に限ってあのジントニックのローソク男が静かにあいたカウンターに座った。出来ればこんな姿を見せたくない女心だったがその心は情けなく酔いに潰された。
「こんばんわ、今日はお店が混んでいて座れないかと思いました。ま、外で少しお店の風通しがよくなるまで待っていましたが思ったより早く座れてよかったです」男は唇をしっかり閉じてそういった。そして、いつものジントニックを注文した。
私はもうこれくらい酔ったらカクテルなど造れるわけがない。断じていえる。男は一口二口ジンを口に飲み込み喉仏を規則正しく動かした。私は自覚できないほど長時間彼の大きな瞳を見つめた。高い鼻の下の男の口は私の唇より美しいラインを描き、自身の性器より小さく見えた。男は小さく微笑みながら、今日は結構酔っているようですからお酒は勧めないほうがいいですね、と時折カウンターを見つめいった。
「貴方、お仕事はどんな」と言葉の塊を彼にぶつけた。酔っていたから容易にこんな失礼な質問が出来たようだ。
「僕は大学でつまらない研究を悶々と毎日やっている馬鹿な研究者です、社会のクソの役にも立っていないですからね、なんとか飯を食うぐらいの給料を貰っていますが、このジントニックのグラス以上の重いものを持ったことがない怠け者です。」彼の言い方は淡々とした言い方だった。
「そうなの、大学の先生なの、ふーん、貴方の仕事が社会の役に立っていないというなら、私の仕事など一体社会のなんなのよ、まるで自分が馬鹿に見えるでしょう。何の役にも立っていないわよ」私は右手に持った大きな氷のよい冷ましのグラスを見つめそう言葉を吐き出した。
「この世の中に人間の動作を含め無意味な労働など一つも存在しないと思いますよ。たとえ泥棒だって自分の命を救うための1個のりんごを盗んで口にほおばみ、果たしてその行為が窃盗罪に値するでしょうか。貴方の仕事は立派な労働ですよ、つまりサービス業です。」
彼はそういって氷だけのグラスをカラコロならし、ジントニックを空にし、私はタバコを深く吸ってその白い煙は大きく天上に向かって広がった。そして、考えた。今度生まれてくるときには心で物が観れる女になりたいそう思った。
あ〜〜、比叡山が・・・・!
こんなに近づいても、このありさまです〜。
これを吸い込んでしまうのか・・・と思うと、怖ろしゅうなってしまう。といい黄砂を両手で払いながら、マスクなしやと、外出できそうにあらへんわ。
なんか、頭も痒う、なってきたような気がしてきた〜。そういって、隣のお店のママさんが氷を借りに店にやってきた。
続く
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