|
フランスのミュージカル映画の傑作「シェルブールの雨傘('64)」をご覧になった方は少なくないだろう。 この映画の成功から主演のカトリーヌ・ドヌーヴ、監督のジャック・ドゥミ、そして音楽のミシェル・ルグランという3人のコラボレーションは4本の傑作を生んだ。 ドヌーヴ × ドゥミ × ルグラン、その第2作「ロシュフォールの恋人たち('67 原題:Les Demoiselles de Rochefort」はジャズの薫りに包まれた、ミュージカル映画の傑作である。 この映画の主役はドヌーヴと、実姉であるフランソワーズ・ドルレアック(Left to Right)だ。 実の姉妹2人が唯一初めて姉妹役に扮し、ロシュフォールの港町で軽快な踊りや唄を披露する。もちろん唄は吹き替えであるが、それに気付かないほど完成度は極めて高い。 さて、映画全編を彩る音楽は先に触れたようにミシェル・ルグランによるものだが、ルグランは多くのジャズメンたちとの共演、自らのジャズ・アルバムも発表しているので、ジャズ愛好家にとっても有名な作曲家・演奏家である。 最も有名な盤は58年にニューヨークで録音された、マイルス、コルトレーン、エヴァンスをフィーチャーした『ルグラン・ジャズ』がある。 この映画からジャズ化された傑作は何といっても『You Must Believe In Spring(原題:Chanson de Maxence)』だ。 ビル・エヴァンスのピアノトリオや、カーリン・クローグのヴォーカルで知られる、不朽の名曲である。 そのオリジナルがこの映画で流れるわけだが、ルグランもこのメロディをかなり気に入ったらしく多くのモチーフが登場する。 哀愁に満ちたメロディは、どこか遠くへ離れてしまった女性との再会を望む想いを綴る。数多いジャズ・スタンダードの中でも屈指の名作だと思う。 そしてもう1曲が、近年自動車のコマーシャルでも使用された『キャラバンの到着(原題:Arrivee des camionneurs)』。見事なアンサンブルである。 思わず踊りだしたくなるメロディ。ルグランの名曲は数多いが、この曲ほどジャズ的に心地よい旋律はないだろう。 この映画の舞台はフランス大西洋沿岸の港湾都市・ロシュフォール。コルバート広場の壁や建物、シャッターに至るまで鮮やかなカラーに塗り替え、華麗で躍動感溢れるミュージカル映画を創り上げた。 アメリカからのゲストとして、ジーン・ケリーも出演していることも話題になった。 未体験な方は是非映画をご覧頂きたい。「シェルブールの雨傘」もそうだが、特にオープニング・シークェンスは出色の出来映えだ。 わたしがこの映画に初めて触れたのは、恐らく小学生の頃。その時のことは全くと言っていいほど記憶になかったが、最近になって親友がDVDをくれてドヌーヴ熱_否、ルグラン熱が再燃。この映画で“恋と映画と音楽”という幸福の洗礼を受けた。 オリジナル・サウンドトラック<リマスター完全盤>には、未発表だった曲を含め全32曲がCD2枚に収められている。 ボーナス曲として、ルグランのピアノに、アルト・サックス奏者のフィル・ウッズ、ベースにロン・カーター、ドラムスにグラディ・テイトを従えたライヴ音源も収録されており、ウッズのファンには魅力的であろう。9分を超える演奏は実にホットだ。ルグランのピアノも軽快でお洒落。 映画をご覧になった方も、もう1度あの感動をサントラで味わってみてはいかが? ちなみに、ドヌーヴの姉、フランソワーズ・ドルレアックは、この映画の撮影終了後にニースで交通事故に遭い亡くなっている。映画的、興行的成功による幸福と栄光を知らぬままに。。
現在、ロシュフォールの駅前広場は“フランソワーズ・ドルレアック広場”の名称で市民に親しまれているようだが、42年が経過した今日では、その名の由来を知る人はきっと少ないであろう。いつか訪れて「ロシュフォールの恋人たち」を気取りたいものである。 |

- >
- エンターテインメント
- >
- 映画
- >
- その他映画


