この世のカラクリ

メディアが報道しないこと、報道できないことを書き綴ります。

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 ここ最近、連日のようにマスコミ各社によって内定取消や派遣切りについて報道されている。確かに契約された雇用期間を守らずに派遣社員を解雇したり、会社の都合で大学生の内定を取消したりというのは由々しき事態だから、このまま放置しておくわけにはいかない。しかし、大手マスコミはこうやって他社の雇用問題を批判する前に、自社で働いている社員たちの労働条件をきちんと守るべきではないか。
 実を言うと、毎日のように各家庭に新聞配達をしている配達員たちの労働条件はとても悪く、労働基準法に完全に抵触している。私はとある事情から、東京都内にある幾つかの新聞販売所の所長たちと会って、各販売所の労働者の待遇について尋ねてみたことがあるのだが、驚いたことに、彼らの多くが経営者が知っておくべき労働基準法の基本を全く知っていなかった。販売所によっては社員たちに全く有給休暇を与えていないところがあったし、有給休暇を与えていたとしても、なぜかほとんどの販売所が年に六日しか有給休暇を与えていないのだ。
 この世の多くのサラリーマンやOLの方々は、半年同じ会社に勤務しつづければ年に十日の有給休暇が与えられることをご存知のはずだし、実際に与えてもらっているはずだ。もし与えられていないというのなら、あなたは経営者にきちんと訴えた方がいい。もっとも、労働基準法を守らないような無責任な経営者にそんな訴えを起こしたところで、あなたの言い分がまともに受け入れてもらえるとは思えないが。そういう無責任な経営者は自分の儲けのことしか考えておらず、社員の雇用を守ろうなどという考えはおおよそ持っていないからだ。しかも、この日本にはそういう経営者が意外に多いようだ。
 いや、大手企業はそのほとんどはそのような最低限のルールはきちんと守っている。でなければ、大手企業としては立ちゆかない。特にアメリカ系の外資企業は、そのお国柄からか、労働者への待遇にはかなり配慮しているように見受けられる。これはとても素晴らしいことである。しかし、なぜか日本の大手新聞社の多くは、自分の傘下にある新聞販売所において労働基準法がきちんと遵守されているかどうかをチェックをしていない。いや、チェックはしているのかも知れないが、各所長たちに労働者たちの待遇を守るように教育していない。他社の内定取消や派遣切りについては連日、あれほど厳しく批判しているというのに、これは一体どういうことだろうか。
 このようなことになる背景には、新聞販売員たちの多くが新聞奨学生と呼ばれる学生(新聞を配達する代わりに大学の学費を支払ってもらう新聞奨学生制度というものがある)であったり、学歴のない人たちであったりという事情がある。彼ら配達員はそのほとんどが社会的に弱い立場にあるので、首を切られないように、上司の前では常に奴隷のように従順にしていなければならないのだ。上司にあれこれと注文をつけることは絶対に許されないのだ。大手新聞社はそれを知っているので、配達員たちの待遇については見て見ぬふりを決め込んでいる。文句があれば辞めればいい、その代わり路頭に迷っても知らないぞ、というわけである。
 実を言うと、私の知り合いにも新聞の配達員がいて、彼は労働条件について上司に訴えたことがあったそうだ。しかし、その上司からは生意気な奴だと言われ、危うく首を切られそうになったらしい。幸い、彼の販売所には何人かの役員がいて、その役員の一人が彼の訴えをもっともだと言って受け入れ、彼の雇用を守った上に、その販売所の労働条件も改善してくれたそうだが、その上司はその後もずっと社員に対して陰湿な嫌がらせを続けてきたらしい。彼の場合、たまたま役員なるものがいて、その人が良心的な人だったからよかったようなものの、他のごく一般的な販売所には役員なるものは存在せず、一人の所長がワンマン経営している場合がほとんどなので、このような幸運が起きる可能性はまずゼロに近い。何か文句をいえば、所長の逆鱗に触れ、直ちに首にされるのが落ちなのだ。
 大手新聞社は自身がこのような体たらくだというのに、他社の雇用問題についていちいち批判する資格などない気がする。もちろん彼らマスコミがこういった問題を取り上げてくれなければ、内定取消や派遣切りに遭った人たちが救われないので、大々的に報道してもらわなければ困るのだが、他人を批判するからにはやはり先ず自分の身を律するべきではないだろうか。それが当然の筋というものだろう。しかし、大手マスコミは自社のこのような状況について一切公表しようとしないし、これから先も公表しないだろう。そして、この問題をいつまでも棚上げしたまま改善しようとはしないはずだ。何しろ、近年になってインターネットの普及や若者の活字離れが進んだことによって、新聞各社の売り上げは低迷しているし、まして末端の販売所の経営はどこもかなり経営的に厳しい状況が続いている。さらに現在の世の中全体はこの不況下だ。この状況の中で社員の待遇を上げていくとなると、経営者からしてみればかなり手痛い仕打ちとなってしまう。
 しかし、だからといって、労働基準法を無視していいということにはならない。いかなる事情があろうとも、内定取消や派遣切りがあってはいけないとマスコミ各社は居丈高に叫んでいるわけだから、彼ら自身もまたいかなる事情があろうとも、自分の下で働いている社員たちの労働条件きちんと守るべきではないか。


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