おもうこと かんじること

ワークライフバランス、リーダーシップと組織変革がテーマ。

行政と経営

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いかに行政としての責務を果たしていくか。お役所仕事に辟易していませんか? どうにかしてもっと政府はまともになってほしいと思いませんか?
経営という観点に1つのヒントが隠されていると思います。
ここでは本などを読んで感じたこと、大学院で学んだことなどを書いていきたいと思っています。
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1940年代から、組織行動における人間関係や個人の内面を重視する研究者が出てきました。
有名なのは、Chester Barnard という研究者で、彼の考えは今も通ずるところがあると思います。

特筆したいのは、Barnard は、インセンティブ=お金、という考え方を一概に肯定せず、金銭的動機のみならず、力、信望、自らの理想を現実化したいという気持ち、利他的な動機、組織への参画などといった社会・心理的要因を重視したことです。

Barnard に言わせれば、組織というものはインセンティブの経済(economy of incentives)であって、リーダーは、コミュニケーションと説得を通じて組織の構成員が貢献したくなるようなインセンティブの確保に努めるべきだとされています。

これまで重きを置かれていた権限や組織構造といったハードな側面から、上記のようなソフトな側面にも焦点を当てたともいえるかもしれません。

また、ノーベル賞受賞者でもあるHerbert Simon も、Barnard と同様、物質的なインセンティブのみならず非物質的なものにも着目しました。

この流れは、その後、Human Relations School (人間関係学派、とでも訳せるのでしょうか)という流れとなり、有名なMaslowの欲求五段階説やMcGregorのTheory X, Theory Y などに繋がっていくことになります。

一方で、前回の記事でも書いたように、古典的なアプローチは”one best way” 、組織のあり方について何か1つの正しい解のようなものを求めていたきらいがありましたが、1960年代以降、contingency theory と呼ばれる流れが出てきました。
これは、考えてみれば当たり前なことなのかもしれませんが、どのような組織が良いかという組織のあり方は、仕事そのもの、技術、組織の大きさ、環境といった条件によって変わってくるという、そういう考え方です。

例えば、Burns and Stalker は、mechanistic organization / organic organization という概念を出しました。

前者(mechanistic organization)は、いわゆる古典的なアプローチが目指したもの(前回の記事をご参照ください。)とも言え、命令系統や階層、しっかりと定義づけされた仕事などを重視します。これは、安定的な環境であれば良いとされています。逆に言えば、環境変化の激しい時代には、環境変化に耐えられない、ついていけないかもしれないということです。

後者(organic organization)は、命令系統や上司のコントロールなどを重視しすぎない柔軟な構造の組織で、コミュニケーション、上司の管理、従業員各人の役割についても柔軟性を重視する、そういう組織です。不確実性が高く外部環境の変化が激しい時にはこちらのタイプの組織が合うとされています。また、この組織では、各人に裁量がある程度委ねられるため、革新的なアイディアが出てきやすいといったメリットもあるかもしれません。

おそらく、今の世の中の流れは、organic organization を目指している気がします。フラットな組織構造とか現場への権限委譲などは、そうした流れだと思います。
私自身、その流れは概ね間違っていないと思いますし、しばらくはそうした方向で進んでいく感じがしています。

ただ、contingency theory が我々に教えてくれる忘れてはならないことは、organic organization も「ただ1つの正解」ではない、ということです。
時代が変化すれば、組織のあり方は変わり得ます。
また、今の世の中でも、古典的といわれるような命令系統を重視するような組織のあり方が望ましい組織もあります。

私自身、目から鱗とも言える経験だったのは、警察官の友人と上記のような話をしていた時のこと。
彼曰く、「現場の警察官がその人の裁量で動くことを、みんなは望んでいるのだろうか」。
私の組織は、同じ公務員でも企画立案系というか、ふわっとした仕事が多く、おそらくorganicな組織が
本当はぴったりと合うのだと思っています。一方、おそらく、警察や防衛といった組織では、命令系統や集権型の構造の方がしっくり行くのではないかと思います。

Rainey, Hal G. 2003. Understanding & Managing Public Organizations, third edition. San Francisco, CA: Jossey-Bass.
私は、組織がいつまでも変わらないでいられるように、組織は変わらないといけないと思っています。
それは、時代に合わせて変われない組織は、時代に取り残され、やがてはなくなってしまう運命にあるからです。

行政機関とて例外ではないと思います。時代に取り残された行政機関は、国民・市民からの信頼を完全に失ってしまう。そういう危機感を持っています。

なので、組織の変革、そのためのリーダーシップというものに強い関心を抱いています。

日本の各地でも、組織の変革に向けて動いている地方自治体の方々が多くいらっしゃると思います。
今日はその一例のご紹介。

職員厚遇問題に端を発し、市民の信頼の失墜を経験、それによって危機感が醸成され、大阪市は改革に向かって歩みを進めることになりました。一時期、マスメディアで結構騒がれましたので、大阪市の職員厚遇問題についてはご存知の方も多いと思います。

大阪市では、市政改革本部を立ち上げ、市政改革基本方針(案)などを策定するに至っています。
大阪市経営企画室のホームページをご参照ください。
市長は出直し市長選の末、市民の信任を得たということですが、市役所の中では地道な改革活動も進んでいます。

私が着目したいのは、一連の改革の流れの中で、「中堅・若手職員プロジェクト・チーム」が立ち上げられ、先月、「組織文化の改革」「業務の効率化」「行政サービスの向上」「市民との協働の推進」の4つの課題についての45もの具体的な改革案がまとめられ、助役(選挙のために失職した市長の代理)に提出されたことです。
詳しくは、こちらをご覧ください。

素晴らしいのは、職員自らが立ち上がり、課題を分析し、実務家としてできる改善提案を自らの手でまとめあげたということだと思います。
現場にいる人間が現場のことは良く知っていて改善提案を効果的になせるであろうこと、良いものは着実に採用されればそれをもって職員のモチベーションも上がること、更なる改善が生まれるかもしれないこと、など評価されるべきことが多いと思います。

もちろん、危機的状況には、外部の人間による大鉈(上述の市政改革本部など)も必要です。
外圧は、組織を変えうります。
でも、私は、同じく行政機関の内部の人間として、外圧だけに頼ることなく内からのほとばしる熱意だとか情熱、自分達が変えるんだ、自分達が変わるんだという気持ちをもって、そうした気持ちで組織を変革に導こうとする、そうした点に強く感銘を受けています。

例えば、横浜市の方々は、「ハマリバ収穫祭」という名前で、職員の改善提案、事例を収集し、優秀事案を表彰するという取り組みを行っています。詳しくはこちら、横浜市都市経営局エンジンルームのページをご覧ください。市民・職員ともに巻き込むことで、当事者意識もわきますし、市民からも職員からも「みえる」、透明性のある組織になるのだと思います。また、それら自体が職員のモチベーションにもなると思います。

他にも、私が知らないだけで、日本全国色々な地方自治体の方々、日夜このように努力をなさっているのだと思います。

私も、同じ行政機関の人間として、見習わなければと、そう思っています。

余談ですが、こうした改革の事例を蓄積し、事例分析を色々な大学(院)などで行うことで、日本の行政改革はもっと厚みを増すことになるのだと思っています。

組織構造を変えるような、目立つことだけが改革ではないと思います。それは、器を変えていることに過ぎないかもしれない。
こうした、着実な地道な努力が、中身を変えることとなり、やがて大きな実となるのだと、私は信じています。そして、私はそのための一員になりたいと強く願っています。
これから2回にわけて、簡単に組織行動論にまつわる歴史を振り返りたいと思います。

古典的アプローチと呼ばれているのは、”one best way”、すなわち、上手く動く組織というのは何か「これだ」という1つの最適解があるという前提の下に、議論が進められています。
組織のあり方に関して、ある1つの正解がある、そういう考え方です。

まずは、フレデリック・テイラー(Frederick Taylor)。科学的管理法の提唱者です。
こちらもご参照ください。ムリ・ムラ・ムダの除去という言葉も出てきています。キーワードは「効率」だと思います。

テイラーは、仕事のプロセスについて情報を収集・分析し、ルール・ガイドラインでもって、業務を最も効率良くこなす方法を示すことを、マネジメントの役割としたようです。
これらは一方で、非人間的である、職員の士気や生産性における心理的・社会的側面を無視しているとの批判もあります。

次は、必ず名前が出てくるはずの、マックス・ウェーバー(Max Weber)です。「官僚制」ですね。

彼の言う「官僚制」は、必ずしも役所のことを指しているわけでなく、組織の一形態として、ルールによる権限・義務の規定、階層性、専門家としてOfficialの存在、などといった特徴を持つ組織のことを言います。この組織は、これらの特徴によって、正確性・スピード・明瞭さ・一貫性・公平性・コスト削減につながるとされました。ここでも、効率の良さというものが1つのキーワードです。
ウェーバーについては過去の記事でも書きました。その時に書きましたが、この形は、皆さんがぱっと想像される「お役人」のイメージに近いのではないかと思います。

1930年代になりますと、アメリカでは、Administrative Management Schoolという学派が出てきます。ここでのキーワードも「効率」です。
当時の行政学の潮流は、効率を求めるもの、であったと言えるかもしれません。

キーワードは、分業(division of work)、専門分化(specialization)といったウェーバーと共通のもののほか、
「管理の範囲」(span of control。1人の上司につき6〜10人程度が理想とされている。)
上司は必ず1人であること(one master)
同質性による技術的効率の確保(technical efficiency through the principle of homogeneity。似たような業務はグループ化することで効率化。)
などがあげられます。

ここでも、階層的権限が重視され、業務が専門的に分けられ、階層的権限により1つの命令系統で上から下へとつながり、span of controlを狭くすることで、一貫性・合理性・機会のような効率性が追い求められていると言えると思います。

こういった考え方は多くの業績を残した反面、1940年代に入る頃からかなり批判されるようにもなりました。
端的に言えば、これらの考え方があまりにも組織やその中で働いている人間を機械的なものとして扱いすぎているきらいがあること、そこから、もっと人間的な側面や人間関係的なものを重視する考え方が出てきたと言えると思います。
それについては次回に。

余談ですが、先日友人から日本の行政学の教科書の1つを借りました。
実は日本では行政学というものを勉強したことがなかったのですが、読んでみて(言い過ぎかもしれませんが)ちょっと愕然としました。

組織論関係については、今日私が書いたものについては相当詳しい学術的な解説が載っていましたが、それ以降については簡単に触れられている程度。しかも最近のアメリカなどの研究成果について追っているという印象がありませんでした。

それが標準的な教科書であるのかどうかわかりません。日本の行政学というものがどういう状況下に置かれているのかも私はあまり存じ上げません。
でも、その教科書を読んだ際、素朴に「日本はアメリカの1940年代程度で止まってしまっているのか」と感じてしまいました。

もちろん、組織行動論に特化した教科書は日本にもあります。ビジネス関係の本などを中心に。それらの本では、しっかりと近年の動向が議論をされているようです。

ただ、行政関係の本だとどうなんでしょうか。
行政機関における組織行動論、それに焦点を当てているような本などはあrのでしょうか。
行政組織の組織行動論を扱っている本で、リーダーシップやモチベーションなどといったことについてもカバーしている本はあるでしょうか。
知らないだけなのですが、もしご存知の方がいらっしゃったら、お教えください。

もしそうした本がなければ、ちょっと悲しいですし、これから紹介するRaineyの本やもう1つ授業で使った本(こちらをご参照。)などは、日本語版が出されたほうが行政の実務家や研究者のために良いのではと感じたりします。

行政という生身の社会を考察対象とするので、行政学などは、やはり「実学」、実際の現場で役に立たないとあまり意味がないのではと思います。
こうした組織行動論がしっかりと行政機関の職員にも学ばれるようになると、また一味違ってくるのではないかと、感じています。

Rainey, Hal G.. 2003. Understanding & Managing Public Organizations, third edition. San Francisco, CA: Jossey-Bass.
2005年6月から8月までの期間、夏休みだったということもあり、「公共部門の経営」と題して、何回か連続で記事を書きました。初回はこちら
そこでは、もう1年も前になりますが、修士1年目の秋学期に履修した「行政マネジメント(行政経営。Public Management)」の授業で学んだことを、復習がてら紹介しました。
また、その後、同授業で読んだいくつかの論文についても触れました。

やはりこうして改めて復習すると、自分のためにもなると実感しています。
そこで、また新しい連続記事を書き、自らの復習とともに皆さんに色々と紹介できればなと思うに至りました。

修士1年目の春学期に、「行政組織論(Public Organization)」という授業を履修しました。上述の「行政マネジメント」と似たような部分もありますが、主に組織行動論に焦点が当てられており、リーダーシップ、意思決定、モチベーション、組織文化と変革、コミュニケーションなどを学びました。
その授業で用いた教科書は以下の2つです。


Denhardtの教科書は、簡単な練習課題や事例分析などもついていて、専門的過ぎないつくりでもあり、取っ付きやすかった印象があります。
Raineyの教科書は、理論の解説が中心のような印象ですが、膨大な量の文献を精査した上での理論のまとめであり、とってもタメになりました。

どちらかというとRaineyの教科書を主に用いたということもあり、そちらのほうが思い入れが強かったりします。

秋学期ももう少しで終わりが近づいており、また、春学期(いよいよ最後の学期です。)は多少授業負担を軽くする予定であることもあり、今度はこのRaineyの教科書の内容やそれを読んで私が感じたことをまとめていければなと思います。

この手の話、どのくらいの方が興味をお持ちかはわかりませんけれど、自分の復習のため、また、少しでもご関心をお持ちいただける方がいらっしゃれば、幸いに思います。
これまで見てきたとおり、目標設定というものは、革新的で有能な組織となるためには必須であると思います。
しかしながら、目標を設定しさえすれば組織は良くなるのかといえば、そうではありません。
今日は、目標にまつわる問題2つを取り上げます。

1.目標について合意を得ることが政治的に難しい

これまで他の記事でも書いてきましたが、行政の特徴の1つは、様々な利害関係者の存在です。利害関係者が多数様々ということは、それだけ価値観や求めることも様々であり、ひいては、どのような目標を設定するかについて政治的な論争が巻き起こる可能性があります。
個人的には、よく言われる例ですが、環境と経済なんていうのは良い例だなと思います。
この点に関してBehnは、具体的な目標だけでなく組織全体として使命を達成できるようなproductive goalsが必要であると言っています。
おそらくこのことの意味は、目標は具体的であるほうが良いのではあるけれど、具体的であればそれだけ対立も生み出しやすく、そうであれば、たとえ少し具体的ではなくても、組織の使命達成に資するような目標を掲げることが意味がある、そういうことだと私は解釈しています。
Behnはまた、合意を得るためのリーダーシップの重要性にも言及しています。

2.全ての組織は変化に抵抗する。とりわけ政府はそのようにデザインされている

人間、変化というものを多かれ少なかれ恐れるものです。その結果、組織は変化に抵抗しがちです。そこまでは容易にご理解いただけると思います。
では、なぜ政府はとりわけそうデザインされているとされているのでしょうか。

まず、行政機関の使命や方向性は、立法府によって法律という形で定められています。法律というものはそう簡単に変えられるようなものではありません。意味するところは、我々国民は、トップが変わるたびに方向性がころころ変わるような政府を望んでいない、つまり継続性を重視している、そういうことです。
2番目に、公務員の裁量、行政の暴走を抑えるため、様々な仕組み・規制が存在します。我々は、柔軟な行政というよりは、行政の予見可能性を求めているとも言えます(私は、最近は柔軟性を求める論議が大きくなってきたと思いますし、それは良いことだと思いますが、予見可能性を求める声を軽視することはできないと思っています。)。

この2点が、公務員に独特の雰囲気を作り出します。Behnはそれを、「”we-be” syndrome」とよんでいます。
組織的無関心。「今のトップはああ言っているけれど、どうせしばらくすればトップは変わる、結局何も変わらないままこの組織はこれまであったように続いていく、我々もこれまでどおり仕事をこなしていく」、そういう心性を指すのだと思っています。
でも、Behnは言います。リーダーは粘り強く一貫した方向を示しコミットし続けなければならない。そうすることで抵抗は必ずしや乗り越えられる。

こうしたリーダーの重要性、民間企業では多くの優良なリーダーの方の事例を見ることが出来ると思います。行政ではどうでしょうか。小泉総理の郵政民営化の件は、「粘り強く一貫した方向を示しコミットし続ける」ことで行政に変革をもたらした1つの例と言えるかもしれません。

Behn, D. Robert. 1999. “Do Goals Help Create Innovative Organizations?”. Frederickson & Johnston ed. Public Management Reform and Innovation. Univ of Alabama Press.

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