おもうこと かんじること

ワークライフバランス、リーダーシップと組織変革がテーマ。

行政と経営

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いかに行政としての責務を果たしていくか。お役所仕事に辟易していませんか? どうにかしてもっと政府はまともになってほしいと思いませんか?
経営という観点に1つのヒントが隠されていると思います。
ここでは本などを読んで感じたこと、大学院で学んだことなどを書いていきたいと思っています。
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人は様々なものに動機付けされます。
動機付けは大きく分けると、内からと外からの2つに分けられます。

内からの動機とは、仕事そのものに由来するものであり、達成感、成長、自尊心の充足などが挙げられます。やりがいを感じるとか、仕事を通じて自らの成長を感じるとか、そうしたことが動機になるということです。

外からの動機とは、昇給、ボーナス、福利厚生など金銭的な報酬のほか、昇格、賞の授与、上司からの賞賛、などの非金銭的報酬もあります。
「よくやったよ。ありがとう」などという上司からの言葉は、非金銭的な外的動機になり得ると思います。

よく言われる話ですが、公務員は法令によって昇給や昇格などが民間企業に比べると制限されていることもあり、上司に認められるといった非金銭的な報酬や、達成感などの内的誘因がより一層重要とされています。

ドーンズ(Downs)という研究者は、行政機関のマネージャーにとっては、政治力、公益のために働いていること、特定の行政機関又は事業のために働いていることといったことが、重要な潜在的な動機付けになっているとしました。

その上で、以下の3つのカテゴリーを提唱しました。
Zealots: ある政策・プログラムを熱心に推し進めようとする
Advocates: 行政機関そのものやある政策領域のために働く
Statesmen: 一般的な大きな公益のため

その上で、予算を獲得するためには外部の業界団体などからの政治的な支持を得る必要があるために、結果として、Statesmen が少なくなり、Advocates が多くなるとしました。
この議論は、いわゆる族議員とか省益とか、マスメディアで喧伝される事態のことをさしていると考えて良いと思います。

ちなみに、私は、Advocates の存在自体が悪いとは思いません。それ自体は良い悪いの問題ではないと思います。
おそらく必要なことは、Advocates として微視的に自らの専門領域について身を捧げることをしつつも、Statesmen として大きな視野にたって物事を考えそれを自らの専門へと反映させることなのではないでしょうか。

もう1つ、公共サービスモチベーション(Public Service Motivation) という概念のご紹介です。こちらの過去の記事もご参照ください。

民間企業と比べて給料が良いわけでもなく、待遇がとても良いわけでもなく、そうした中で、なぜ人は政府で働きたいと思うのか。
彼らがこの Public Service Motivation (PSM) を強く持っているからだという議論があります。
PSM は、他の人のため、社会のため、自己犠牲を払い、責任感や高潔といった感覚が得られる、そうした仕事に価値を置くものとされています。

人は皆、多かれ少なかれこうした価値観を抱いていると思います。例えば、企業に入って環境保全のために一役買いたいというのも、環境を守るという公益の追求の一環だと思いますし、政府に入ることだけが公益を追求することではない。
しかしながら、やはり政府が一番そうした領域に関わっている(政府の存在意義そのもの。)ので、政府で働きたいと思う人の方がそうでない人よりも一層、PSM を持っているとされるのだと思います。

ペリーとワイズ(Perry and Wise)は、PSM を3つのカテゴリーに分けました。
・助けとして(instrumental motive):政策形成過程へ参加することや施策への傾倒・責務(コミットメント)といったものに動機付けられる
・規範として(norm-based motive):公益に奉仕したいという欲望、社会的な公平性に身を捧げる
・情緒として(affective motive):善意、事前、社会にとってそれが重要だという確信

Rainey, Hal G. 2003. Understanding & Managing Public Organizations, third edition. San Francisco, CA: Jossey-Bass.
以前の記事で mechanistic/organic な組織というお話をしました。
良い組織の構造などは外部環境によって変わってくるということでした。
簡単に言えば、外部環境が単純で安定的なものであれば、集権的・命令系統重視・階層的な組織が合い、外部環境の不確実性が高く変化に富んでいる場合であれば、分権的・柔軟性重視・現場への権限委譲といった組織が合うということです。

そのほかにも、組織構造に影響を与える要因があります。
例えば、組織の大きさ。
一般に、組織が巨大になればなるほど構造が複雑化されると考えられがちだと思います。しかしながら、色々な研究があり一概にはそのようには言えないそうです。

また、ある研究者は、標準化されたプロセスでは対応できないような例外が起こる程度と、そのような例外が分析・対応可能かどうかの程度という2つの軸から考え、両者が大きいほどルーティン業務と言えルールや計画がしっくりいき、両者が小さいほどルーティンではなく柔軟性が求められるとしています。

組織のデザインに関しては、ミンツバーグ(Mintzberg) という有名な研究者が以下の4つの側面に言及しています。
ポジションの設計(design of position):どのような専門性・仕事内容・スキルが必要か など
上部構造の設計(design of superstructure):それぞれのポジションをどのように纏めるか。仕事の流れなどの相互依存関係が重要になります。
関係性の設計(design of lateral linkages):纏められたグループをどのように結びつけるか。
意思決定システムの設計(design of decision making system):トップダウン/ボトムダウン など

これら4つの視点で自らの組織を眺め直すと、また違ったものが見えてくるかもしれません。

Rainey, Hal G. 2003. Understanding & Managing Public Organizations, third edition. San Francisco, CA: Jossey-Bass.
定められた目標に向かって最適な手段を選択し、それを遂行することで目標を達成する。これが合理的な意思決定です。
多くの組織、人々はこうした意思決定を目指しているのではないでしょうか。

合理的な意思決定においては、1)目標が明確である、2)目標を評価する際の価値や求められる水準が明確で目標に優先順位をつけることが出来る、3)目標を達成するための全ての手段を検討することができる、4)目標を最大化するために最も効率の良い手段を選ぶ、という特徴があります。

ただ、ある意味当然のことですが、これまで何度も出てきている目標の複雑性、また、政治的な影響などもあり、行政においては特に、しばしば合理的な意思決定は難しいものです。

サイモン(Herbert Simon)はこの合理性の限界について、目標を最大化するのではなく満足化するのだと、述べています。
世の中には様々な情報がある上に先行きには不確実性が伴う、また、マネージャーの認知能力にも限界がある。したがって、マネージャーは合理的であろうとするが実際は上記の1)、2)、3)は不可能であり、制限された合理性(bounded rationality)とならざるを得ない。
すなわち、制約のある中で最大限目標を達成させるよう努力すること、これが目標の満足化であるとされています。

一方、合理的な意思決定はそもそも難しいということを出発点とし、漸進的な意思決定という考え方もあります。いわゆるincrementalism です。
今ある状況から比較的限られた変化を目指す。より大きな変化はそれだけ大きな反対を呼び起こしかねない。漸進的に一歩一歩進んでいく、そうした形の意思決定です。

上記の合理的意思決定では、場合によっては急進的な意思決定がなされうるのですが、ここではそれが否定されています。
長所として、より現実的であること、不用意な急激な変化を避けることが出来るなどといった点が挙げられます。短所としては、保守的過ぎるきらいがある、短期的な視野となるかもしれない、そもそも現状を是認しすぎているなどといった点が挙げられます。

これらに関しては、長期的には合理的な意思決定を目指すとした上でそれに向かって着実に前進的に進むという考え(logical incrementalism)もあります。

意思決定に関しては、上記以外にも、カーネギーモデル、ゴミ箱モデルといった考え方もありますが、ここでは割愛します。

以前、リーダーシップの絡みでcontingency、すなわち、置かれている状況で有効なリーダーシップのスタイルは変わってくるという話をしました。
意思決定についても、置かれている状況次第で意思決定が変わってくるという側面があります。Thompson という研究者は次のように述べています。

すなわち、目標についての合意の程度(goal-agreement)と目標・手段関係への理解の程度(technical-knowledge)の2つの観点でみた時、両者の程度が高ければより合理的なアプローチが可能となり、両者の程度が低ければ、より直感的な判断、交渉、政治的な活動といったものに意思決定が影響を受ける。

Rainey, Hal G. 2003. Understanding & Managing Public Organizations, third edition. San Francisco, CA: Jossey-Bass.
組織が上手く回るというのは、どういうことを指すのでしょうか。何をもって、有効な組織、効果的な組織、と言えるのでしょうか。今日は、組織の effectiveness の話です。

レイニー(Rainey)は、有効性の測定方法に関し、3つを紹介しています。

Goal Approach
定められた目標の達成度合いによって測るものです。
私は目標設定が本当に重要だと感じているためこの考え方は好きです。
一方で、前回の記事にも関連しますが、相反する複数の目標の存在、短期的な目標と長期的な目標、具体の目標と抽象的な目標、それらの目的手段関係などなど、目標に関しては単純には考えられない面があります。
また、目標を設定し、それを達成するという一連の行為は、経営・組織運営というものが合理的で秩序だっているという前提の下に成り立つ議論なのですが、一方で組織運営というものは時に直感的であり必ずしも合理的であるとは言えないという点も指摘されます。
ただ、そうはいっても、戦略的マネジメント(Strategic Management)や目標管理(Management By Objectives)といった考え方は根強いですね。

System-Resource Approach
従業員、顧客、取引先といった関係者の満足度によって、測るものです。
ニーズを満たしているか=目標に向かって進んでいるかという前提だと考えられます。
満足をしていれば良いのかという議論になると思いますが、関係者が満足をしていないというのもまずいと言えるかもしれません。

Human-Resource and Internal Process Model
組織内のコミュニケーション、リーダーシップのスタイル、従業員のモチベーション、組織運営システム、職員相互の信頼感などに着目するものです。

Rainey はこれらに触れた上で、時には反目しあったり時代の流れによってもその重みが変わる上記のバランスを上手く取ることが重要だとしています。
そして、そうした試みの1つとして、財務、顧客、組織運営効率、学習と成長といった4つの観点で成果をみるBalanced Scorecardという考え方に触れています。
Balanced Scorecard については私自身勉強不足なのでここではあまり触れられませんが、Rainey によれば、テキサス州ではこれら3つに「使命」を加えた5つの観点で自らの組織が上手く回っているかをみているそうです。
日本の地方自治体の中にもこうした取り組みをしている例もあるのではないかと思います(詳しい方がいらっしゃいましたら、お教えください。)

今回はなんだか研究者的な話という感じにもなってしまいましたが、どういった組織がefffectiveかという話が後ほども出てくると思います。

Rainey, Hal G. 2003. Understanding & Managing Public Organizations, third edition. San Francisco, CA: Jossey-Bass.
一般論として、外部環境の変化に対応できるように組織もその構造などが柔軟に変化をしなければならないと言えます。
構造という大げさな話でなくとも、仕事の中身は時代に適応するように変わらなければなりませんし、それに対応して必要となる人材の能力・技能も変わってくるのが当然です。

アメリカの、公共サービスのためのパートナーシップ(the Partnership for Public Service)という団体が出した報告書によりますと、仕事に見合わない技能を持った人々を採用しているということが今のアメリカ連邦政府が抱えている問題の1つなのだそうです。
Office of Personnel Management という連邦政府で人事政策などを行う期間によれば、政府職員のうち39%のみが、自組織が適切な技能を持った人を採用していると考えているそうです。

記事にはさらにこう書いてあります。
もし採用者の10%が成果が乏しくその職に就かないべきだとされるならば、少なくとも1億5千万ドル(160億円強)という不必要な追加経費が毎年かかることになる。

具体的にどこがいけないのかという点ですが、記事によると、
・候補者自らが述べるこれまでの経験などで判断をすること。これは専門家が、将来の仕事のパフォーマンスを測る上で他の手段と比べて最も効果的でないとしている手段なのだそうです。
・ACWE という、候補者にとって手間がかかり仕事と関係のなさそうな質問が含まれるといったテストを使っていること
の2点が挙げられています。

最後に、この報告書を出した機関は、採用手続きを改良していく3つの大事なステップとして、
・仕事を正しく行う上で必要となる技能や能力をしっかりと見定めること
・上記の技能・能力に基づいて採用のためのシステムを作り上げること
・仕事のパフォーマンスとそれなりに関係あるような候補者の性質を見極められるようなシステムとすること
を挙げています。

上記のことは当たり前といえば当たり前のようにも見えます。
私は官庁の人事については詳しくありませんので、どうこう言えるような立場にありませんが、こうした観点で人事制度を見直してみると、見えてくるものもあるのかもしれません。

何にせよ、財政難の折、本当に必要な人材を確保しなければ、達成すべき成果の達成が遠のくばかりか、この記事にあるように、余計なコスト負担が生じることになります。

そういう意味では、現在進められている公務員の人件費削減という流れは、余計なコスト負担を減らすという観点からは良いと思います。
一方で、適正な技能や能力のある人材を確保しなければ効果的な組織になれなくという観点も忘れてはならないと思います。

また、同じ PA TIMES の別の記事では、ベビーブーム世代の退職を控え、政府は、
・いつ頃大きな人材流動が起こるのかを見極め、
・組織が培ってきた知識・経験がしっかりと移転できるような仕組みや機会を作り、
・将来リーダーシップを発揮するような若手の人材を見出し、それら人材に必要なスキルやリーダーシップを得られるような研修の機会を提供する、
・必要な組織構造の修正を行う、
といったことが必要としています。

役所がもっともっと機能するため、単なる数の削減論に終始することなく、人材の確保・育成についても議論が進めば良いなと思っています。

“Government Using Wrong Methods to Assess and Select Its Employees”. 2005. PA TIMES, vol.28(12), December 2005.
“Officials May Nix Beliefs for Country”. 2005. PA TIMES, vol.28(12), December 2005.

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