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全国の学校で正規に「総合的な学習」がはじまった頃の話です。
■「森林を場とする教育、学習活動の試み」
今年から学校では、体験を重視し生きる力を育むため「総合的な学習」がはじまっています。そのフィールドとして身近な森林を活用している学校があります。
校長先生が校庭に接した放置されて荒れた森林を、ひとりで手入れし、子どもたちが森林の中に入れるようにして総合学習の場に活用しようという試みです。
依頼があり、千葉県成田市の小学校第五学年2クラス51名を対象に、森林についての野外授業を担当しました。このときの様子の一部をご紹介します。
まず、校庭のコブシの木についての質問からはじめてみました。すると、どんな花が咲くか知らない子どもたちがほとんどだったのです。毎年、三月に白い花をたくさんつけることを覚えている子どもは少なかった。というよりも、葉の繁っている木はどの木も同じに見える様子。
そこで、まず、まだ青くて小さいコブシの実を話題にする。子どもたちは目ざとく見つけてコブシに関心を持つ。花を覚えている子どもがどんな花かを説明する。説明する子どもは得意気にコブシの花の様子を語る。稲のタネを播く時期に咲くことから、別名、「タネマキザクラ」と補足。
次に、校庭の脇で子どもたちが毎日遊んでいるうちに斜面が崩れてケヤキの根を傷めていた状況を観察。ケヤキを傷めないための方法をみんなで考える。いろいろな意見が出る。草や低い木を植えるより、柵で囲いさえすれば草が生えてくることに気がつく。
さわってはいけない危険植物ツタウルシを覚える。
反対に、さわっても安全な大きな白い毛虫、「クスサン」をさわってみせると全員がびっくり仰天。子どもたちが恐る恐る毛虫をさわって大騒ぎ。
次に、森林内で全員が足を止め、三十秒間目を閉じて耳を澄ます。風の音。葉が擦れ合う音。六種類の鳥の声を聞き分けた子どもが目を輝かす。
私が森林の中で矢継ぎ早に投げかける質問に、子どもたちは一丸となって一生懸命答えようとする。あっという間の2時間の授業でした。
最後のまとめでもたくさんの質問が出て、解散後も何人かの生徒に囲まれ質問が続き、授業終了後の校長室でご馳走になった給食の味は格別でした。
■「学校林の活用」(写真)
上記の事例を知って、次の年に別の小学校から学校林の活用や管理の方法について相談がありました。
成田空港の騒音地域にある全校生徒120人ほどの小さな小学校ですが、この学校の敷地は広大です。
校庭に接して、約1.5ヘクタールの「学校林」と、小川をはさんでこれに接するマダケの竹林があります。
「学校林」は、かつて、全国の学校にあって、教育に必要な財源を調達するため父兄の協力により手入れされていましたが、今日、多くの学校林は、市町村に移管されたり、開発されたりしており、あってもほとんど利用されていないのが一般です。
この学校林は、「駒の森」と名づけられ、校庭に接しているためいろいろ活用されてきましたが、その時々の校長先生の意向により、遊具を設置したり、果樹の植えたり、花の咲く木を植えたり、花壇をつくったり、いろいろな管理がバラバラに行われ、見るからに収拾がつかない森の姿という状況でした。
現在の校長先生は、この「駒の森」の管理要領を新たに定め、PTAや地元森林所有者などの参加のもとで、教頭先生を事務局長とする「駒の森を育む会」という会を発足させました。私は、その技術顧問という立場で委嘱状をいただきました。
管理方針として、あまりに不統一ないろいろ手を加えられた「駒の森」に、まずは、潜在している「自然の力」を呼び起こすことからはじめてもらうこととしました。
子どもでも作業が可能な竹林に注目し、繁茂する竹林を抜き伐りして竹細工をする。また、落ち葉掻きをして堆肥作りの体験をしてもらうこととしました。林床に光が入り早春にはカタクリの花が増え始めまし、竹林整備作業が明るい楽しい森づくりにつながることを実感してもらいました。スギ非赤枯性溝腐病に罹ったスギは、県や市の補助金を導入し「駒の森を育む会」が協力して伐採し、「駒の森」の整備がはじまりました。
今日、里山の荒れた森林が目立ちますが、このような森林の整備をすすめるには、多くの人々の協力と、その森の魅力を見つけ出し「自然力」を引き出す管理方針を明確にすることが基本であると考えます。
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