森に親しむ談話室

森と人をつなぎ、人と人をつなぐ、森に親しむための談話室です。運営は、「森に親しむ研究所」です。

連載1:森林の魅力について

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 写真は、今年のブナの写真です。
 9月に、宮城県鳴子町川渡の東北大学農学部農場(森林)を訪れました。170ヘクタールの保護地域にあるブナ林は、6年ぶりの大豊作のようで、山が茶色く見えるほどでした。この傾向は、東北地方だけでなく中部地方のブナ林でも同様だとのことです。きっと、今ごろ奥山では、冬眠に備えるクマがブナの実を、「ヤメラレナイ、ヤメラレナイ」と夢中で食べているかもしれません。
皆様の地方ではいかがでしょうか?

今回をもって、このテーマは「中休み」とします。

■「都市近郊林研究会」の試み
 今から20年近く前、埼玉、千葉、神奈川、東京の各都県の若手林務行政担当者10数人が土曜日の午後に東京に集まり、自主的な集まりとして「都市近郊林研究会」を発足させました。呼びかけは、埼玉県の熱意あふれる女性林業職員Oさん。当時、森林をめぐる話題として、白神山地のブナ林保護や水源税問題が大きくとりあげられていた頃ですが、同時に、都市化の進展で首都圏の森林が急速に失われていった時期でもありました。「都市近郊林は行政の広大な空白地帯である」と、立正大学の福岡克也教授が警鐘を鳴らしておられ、研究会の目的は、「都市近郊林のビジョンをつくる」ことでした。
 会のアドバイザーとして福岡教授、コーディネーターとして林政総合調査研究所の三沢靖平氏を、「Oさんからのお願いのお手紙ひとつ」で依頼し、2、3ヶ月に1回、2年間にわたって開催されたものです。当時、福岡教授は、このような研究会が自主的に発足するとは、一時代前から考えると隔世の感があると、研究会の活動を絶賛されました。
 あるときは、林野庁の担当者にも出席していただき、森林保全を目的とする法制度全体の指導をお願いしたり、各都県の統計資料を持ち寄って分析作業や検討をしたり、現地調査を実施したりしました。

 この研究会の活動の中で、市街地近隣の森林の減少は確かに著しいが、それよりも農地の減少が大きいこと。増加するゴルフ場を目の敵にして調べたところ、森林転用目的として量的に大きいのは住宅や道路であること。森林の減少だけでなく、放置され藪化してゴミ捨て場になっている森林の荒廃の問題が大きいのではないかということ。相続税などの税制が原因で森林が法人所有化するなどの問題などが明らかになりました。

 すなわち、都市近郊林減少の問題は、誰かが森林を減少させているということより、我々自身の都市的生活のあり方や都市型社会の制度と直結していることをはっきり認識させられたのです。そして、自分たちが、現実にどのように森林と関わっているか思いをいたさざるを得なかったのです。
このような議論を経て、「都市近郊林のビジョン」は、都市住民の実生活の延長線上にあることが明らかになり、あらためて各々が森林と向き合うために現場にもどることとなりました。
 この時期以降、私自身も、キノコ探索会を糸口にして、県民の森ネイチャーガイドの編集、今の「森林インストラクター制度」創設時の検討、山村や水源林の問題、東北地方の漆器や家具の作り手との交流、手道具を用いた木工講座の企画、森林文化教育研究会の活動、水源林信仰についての調査、小学校の森林・林業についての副教本の編集などに参画したり、自ら関わることになりました。

■「都市近郊林」の保全 ― 土地純収益説と森林純収益説
 日本では、森林と一体である土地をどう利用するかは所有者の権限に属することですが、多くの森林所有者は、森林の価値と土地の価値を別のものと考えており、「都市近郊林」のように土地の価格が相対的に高い場合、森林は都市的な利用に転用されることになります。
 しかしながら、考え方を変えて、森林は本来土地と一体のものであるものでありその地域において森林としての価値(役割)が発揮されている場合は、どんなに土地の価格が高くても森林であり続け継続して保全管理されていくことが必要なものであると理解することはできないでしょうか。
 ドイツで生まれた林学では、前者を「土地純収益説」、後者を「森林純収益説」と呼び、双方の説を唱える学者の間で100年以上の論争が続いているとされていますが、現在まで、ドイツの少ない森林面積は少しずつ増加しているとのことです。

■都市近郊林問題から山里文化継承の問題へ
 都市近郊の里山保全の問題と同時に、今、山間部では過疎から廃村が進行し、山里の美しい風景や暮らしが失われつつあります。山里は、自然の恵みを活かすたくさんの知恵や、自然に対する畏れや感謝の気持ちという日本人の心の拠りどころとなる大切な文化が育まれてきた場所です。
 この山里の森林地域は、現在、放置され、土地の境界もわからなくなり、相続により所有権が分散し、何かをするにもどこまでが対象とする区域かわからない事態に立ち入りつつあります。

 20年前に「都市近郊林は行政の広大な空白地帯である」と警鐘を鳴らされましたが、現在、「日本の山間部の森林には境界不明な広大な暗黒地帯が広がりつつある」といえるかもしれません。
 山里の将来の姿は、我々の実生活の延長上にあると考えたとき、今、山里の美しい風景や暮らしに関わろうとする活動に携わっている人々や、先代から森林を受け継ぎ次の世代に引き継ごうとする森林所有者に対して、広く社会的に支援するシステムの構築を本格的に行うことが必要であり、その機はすでに熟していると考えられます。

 これに関連して、現在、森林や環境保全のための新たな税制を創設し活用する動きが一部の地方で顕著になっています。さらに、この新たな税制の創設は全国的な広がりを見せており、財源をいかに活用していくかについて多くの人々の参画が必要となってくると見られます。
 このことについての経過と展開については、あらためて話題とすることとします。

〜〜「森林の魅力について(1)〜(7)」のシリーズは一段落し今回をもって中休みとします〜〜
        継続してお読みいただいた方々には、本当にありがとうございました!
 

「連載1:森林の魅力について」書庫の記事一覧

閉じる コメント(3)

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土地問題は財産問題でもあり、個人のレベルでは「相続」税が大きな問題ですね。林学、難しいですが、自然はその個人の所有物に留まらず、その地域、国、世界の財産でもあるわけで、前述した視点でも矛盾した(維持に個人負担が多すぎる、収益性から土地転用する)問題が内包されてますね。顕在化して少しでも自然が守れるよう意識しないといけませんね。

2005/10/25(火) 午前 10:42 つっちー

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コメントありがとうございます 相続税問題は地価の高い都市近郊のみの問題ではなく、とにかく、先代から引き継いだ森林を次代に引き継ぎたい森林所有者にとって切実です。

2005/10/25(火) 午後 7:06 ytr**m

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森林の問題、環境問題はお役人を相手にしても解決しませんね。

生活そのものを根本から変えていかなければならない。

資本主義経済は不経済詰まり、経済にあらず。

自然と調和のとれた経済を根本に据えて

新しい経済のあり方を考える必要があります。

これなくして、小手先の解決策はすべて愚策です。

2010/1/31(日) 午後 11:26 [ yk1*45*417 ]

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