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写真は、恵那山の崩壊地です。
全国各地で、崩壊地のことをナギと呼ぶことがありますが、恵那山の北側斜面には、ウバナギ、天狗ナギの2つの大きな崩壊地があります。
山地で崩壊が起こる直接の原因は一概に言えませんが、一般に地質的な弱さのある場所で起こります。
人々に襲い掛かる土砂災害を思い浮かべると、その恐ろしいイメージとは裏腹に、大地の弱さに起因しているのは意外に感じられるかもしれません。
ウバナギ・天狗ナギは、全国的に著名な延長66kmの横ずれ活断層である阿寺断層の南西方向のちょうど突き当たりに位置しており、この崩壊とこの地域で繰り返し起こる大地震が関係していることも推察されます。地震の揺れは、山地の尾根部、台地の周縁部、脆弱な新しい沖積地などで、特に激しくなります。
わが国は、地形が急峻で火山も多く、地質的な弱さがいたるところに伏在しており、地震や台風などの集中豪雨も多く、山里に棲む人々にとって、土砂災害の危険とは背中合わせの関係にあるといえます。
さて、今回の話題は、森林と人との関わりについて、「森林組合」に焦点をあてて、その系譜についてです。
〜〜〜 近代日本の森林と人との関わりの系譜について(その8)〜〜〜
森林法の改正と「森林組合」の系譜
わが国における森林と人との関わりの原則は、「公私共利」制であることは、これまで述べたとおりですが、明治政府はこの原則を崩す「林野の官民有区分」を実施しました。
島崎藤村の「夜明け前」に記述されているとおり、山に頼るしかない木曽35カ村の村人は、嘆願書を提出することになりました。これと同様な、官林での入会権の復活を望む叫びは、人口の急激な増加もあり、全国各地で枚挙にいとまがない状況でした。
明治政府は、官林として区分した森林を「森林経営の論理」のもとに私的に管理することにし、民地については、横行する盗伐に対して、森林保護法を制定するのがやっとでした。
なお、国有林による林地の私的管理は、昭和40年代まで公然と継続し、国有林担当者には、今なお、特に悪意なく私的管理の観点から発言することがあります。
崩壊した幕藩体制の統制に代わる規制がなく、まだ法律も整備されず混沌とした中で、明治政府はプロシアに学び、ようやく明治30年に森林法を制定しましたが、プロシアの林野共同体の歴史の側面を見逃していました。このことは、あらためてふれることにします。
●明治30年森林法の制定
このような時代背景のもとで、明治30年森林法が制定されました。保安林制度、森林犯罪の規定、林野管理の強制を柱とした、強権的な法律であったことも、時代背景と符合します。
明治30年代後半からの経済活動の活発化を背景に、森林については、「林利の活用」が大きなテーマとなり、計画的かつ組織的な森林資源の開発がテーマとなってきました。その後、大正時代の好景気時代、さらに、本来の公益的な必要からの組織制度は戦時統制強化のための組織に転化していきます。
●明治40年森林法の改正
明治30年森林法では規制的意味合いが強かったのに対して、明治40年改正森林法では、利用を主体にした内容の改正でした。
明治40年森林法で森林組合は、造林、施業、土工、保護の四種の組合が規定されていました。
明治44年「森林組合設立奨励規則」が制定され、設立費奨励金を交付しました。
森林所有者を森林組合で組織し、共同の力で造林や森林施業、森林荒廃、盗伐や火災へ対処しようとしたのです。
●岐阜県加子母村の「森林組合」の性格
岐阜県恵那郡加子母村の加子母造林保護土工森林組合は、地区面積5183ヘクタール、組合員880名で昭和3年に設立されたものです。この森林は、もとは一村総持の土地で荒廃が著しくなっていました。加子母で、デレーケの治山工事が行われたことは、前にふれたとおりです。
村の森林の半ばを村民に売却し、村民の所有を対象に森林組合が設立されましたが、その契機は、山地の荒廃であったと考えられます。
そして、加子母村森林組合は、設立当初から森林の総合的な利用管理を目的とした性格をもつ森林組合であったことが伺えます。
●「所有」と「用益」の調整
森林と人との関わりにおいて、「所有」と「用益」とをいかに調整するかが大きな課題となりますが、森林組合の設立当初から公益の担い手としての側面が「森林組合」に期待されていたのです。
「所有」とは、木材の収穫・林地の開発・私的活用ですが、「用益」とは山の恵みの活用・地域の人々の平等な入会権・森林の多面的な機能の発揮、すなわち、森林との「共生」につながると理解できます。
●「森林組合」の今日的意味
荒廃地への造林や森林の手入れを実施するための実質的な組織として「森林組合」が設立され、このような森林組合の機能は、今日も変わらないことを再確認したいと思います。
そして、合併の嵐が吹きまくっている今日の森林組合においても、本来森林が有する広く深く多面的な機能を発揮させるための制度としての側面を持つ原点に返り、開かれた「森林組合制度」の見直しを併せて検討することが大切であると思います。(つづく)
※本日は、里山の恵みを活用する、千葉県里山クラフト研究会の第一回活動日でこれに参加します。会場は、船橋市のウッディ工房です。
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