森に親しむ談話室

森と人をつなぎ、人と人をつなぐ、森に親しむための談話室です。運営は、「森に親しむ研究所」です。

連載5:「森づくり」で大切なこと

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「森づくり」で大切なこと
連載4回目です。「森林美」が「森づくり」で特に重視すべき視点であることを、日本の事例について取り上げます。

写真は、京都北山の北山杉です。

磨き丸太として、自然のスギの中から究極の「美」を見つけ出し、「美」を引き出すため、600年以上にわたって追求し続けた結果の「芸術作品」といえると思います。

「日本の森林美」の一つの形です。

以下は、川端康成の『古都』から、北山杉についての記述を抜粋したものです。
当「森に親しむ研究所」が今から12年前に、東京で発表した資料の一部です。

川端康成が「日本の森林美」を表現するとこうなるのかもしれません。
「古都」は、山口百恵が主演で、映画化もされました。

〜〜〜 川端康成『古都』より 〜〜〜

 「・・・桜はもうあかんけど、北山杉が見たいわ。高尾から近おすやろ。北山杉のまっすぐに、きれいに立ってるのをながめると、うちは心が、すうっとする。杉まで行っとくれやすか。もみじより、北山杉が見とうなったわ。」

 千重子は・・・高雄まで来れば、一人でも、北山杉の村まで行く。今は市に合併されて、北区中川北山町だが、百二、三十戸だから、村という方が、ふさわしいようだ。
 清滝川の岸に、急な山が迫って来る。やがて美しい杉林がながめられる。じつに真直ぐにそろって立った杉で、人の心こめた手入れが、一目でわかる。銘木の北山丸太は、この村でしか出来ない。

 千重子は、いくどかこの村に来て、男たちが杉丸太の皮の荒むきをしたあとで、さらに女たちが、ていねいに小むきするところや、菩提の滝の砂を、水または湯でやわらげて、丸太をみがくところも見ているので、娘たちの顔も、おぼろげに知っているように思っている。それらの加工の仕事は、道ばたや戸外で行われるからである。

 千重子は立ちどまるほどに、歩みをゆるめて、杉山を見あげたり、家々に立てならべた杉丸太を、ながめたりした。

 白杉の丸太は、太さもほぼそろい、みがかれていて美しい。
「工芸品みたいやろ。」と、千重子は言った。「数寄屋普請にも使わはるらしい。東京や九州まで出てゆくのやて・・・。」

 丸太は軒端近くに、きちんと一列に、立てならべてある。二階にも、立てならべてある。一つの家では、二階の丸太の列の前に、肌着などの干してあるのを、真砂子はものめずらしく見て、  「おうちのかた、丸太の行列の中に、住んでいやすのやな。」

 千重子はまた杉山に目をやって、「もう、枝打ちもはじまってんどっしゃろな。」
 「枝打ちって、なにえ。」
 「ええ杉にするために、いらん枝をなたで払い落とさはんの。梯子を使わはることもあるらしいけど、お猿みたいに、杉の木末から木末へ飛び移って・・・。」
 「朝のぼったら、おひる御飯まで、下へおりて来ん人もいやはるて・・・。」

真砂子も杉山を見あげた。真直ぐに立ちそろった幹が、いかにもきれいである。木末に残した葉むらも、細工もののようである。

 山はそう高くも、深くもない。山のいただきにも、ととのって立ちならぶ、杉の幹の一本一本が、見上げられるほどである。数寄屋普請に使われる杉だから、その林相も数寄屋風なながめと言えるだろうか。

 ただ、清滝川の両側の山は急で、狭く谷に落ちている。雨の量が多くて、日のさすことの少ないのが、杉丸太の銘木が育つ、一つの原因ともいう。風も自然にふせげているのだろう。強い風にあたると、新しい年輪のなかのやわらかみから、杉がまがったり、ゆがんだりするらしい。

 村の家々は、山のすそ、川の岸に、まあ一列にならんでいるだけのようだ。
 丸太をみがいている家があった。水にひたした丸太をあげて、菩提の砂で、女たちがていねいにみがいている。樺色の粘土のように見える砂で、菩提の滝の下から取ってくるのだそうである。

  ・・・女たちはじっさい、せっせと手を動かしていた。五、六寸の丸太だから、柱などに使うのだろうか。
 みがきあげたのを、水洗いして乾かす。そして、紙を巻いたり、あるいはわらでつつんで、出荷するのだという。

 清滝川の石原まで、杉の植わっているところもあった。
 「きれいな杉木立が好きで、たまに来ますのやけど、杉山のなかにはいったんは、はじめてやわ。」と、千重子はあたりをながめた。ほとんどおなじ太さの杉の群れが、真直ぐに立って、二人を囲んでいる。

 「人間のつくった杉どすもの。」と、苗子は言った。
 「これで、四十年ぐらいどっしゃろ。もう、切られて、柱かなんかにされてしまうのどす。そのままにしといたら、千年も、太って、のびるのやおへんやろか。・・・まあ、切花をつくっているようなもんどっしゃろ・・・。」
  
 じつに真直ぐな幹の木末に、少し円く残した杉葉を、千恵子は、「冬の花」と思ふと、ほんとうに冬の花である。
 
 たいていの家は、軒端と二階とに、皮をむき、洗いみがきあげた、杉丸太を、いちれつにならべて、ほしている。その白い丸太を、きちょうめんに、根もとをととのえて、ならべ立てている。
 それだけでも、美しい。どのような壁よりも、美しいかもしれない。

(続く)

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おはようございます♪朝一番で読んだ記事がこのような素敵なものとは。なんだかラッキーな一日になりそうです。

2006/3/4(土) 午後 3:54 どるちぇ

遠いドイツからの、どるちぇさんの朝の雰囲気に元気付けられます!関東地方では、もう、春間近です!でも、この時期の忙しさは、なんとかならないでしょうか・・。明日の日曜も、仕事です。

2006/3/4(土) 午後 9:00 ytr**m

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先日、北山杉をトラック一杯運んで3万円。これではガソリン代も出ないなぁ〜、とのお話でした。流通と言いますか、木材産業の機構改革と言いますか・・・、川端康成の世代から遅々として進まないようですね。

2007/3/28(水) 午前 2:06 大工さん

はじめまして!京都からの書き込み、ありがとうございます。この記事は、昨年3月に掲載したものですが、最初は、平成3年頃、今から15年ほど前に有楽町で開催された森林文化教育研究会で話題提供したときのものの一部です。それにしても、外材主導の木材価格が北山杉にも及んでいるということでしょうか。磨き丸太ではなく、新たな北山林業を再興する必要がありそうですね。

2007/3/28(水) 午前 6:24 ytr**m

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はじめまして。
北山杉、めっちゃきれいですね!!
作る方の意気込みを感じます。

2008/6/3(火) 午前 0:42 [ いりちゃん ]

はじめまして!この記事は、2年半前に書いたものですが、とても気に入っています。大元は、10年前に、東京で開かれた研究会で発表したものです。

2008/6/4(水) 午前 0:11 ytr**m


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