|
昨日の日曜日、急な依頼があって、千葉県立清和県民の森での「森の観察会−キノコ」の講師をつとめました。午後からは、本格的な雨になりましたが、約30人の参加者は、たくさん採れたキノコや思いがけず提供されたキノコ汁で大満足だったようでした。
今回、このフィールドでの話は久しぶりでしたが、10年ほど前まで11年間にわたって毎年「キノコに親しむハイキング」での解説をしていたこともあり、私にとっては庭のようなところです。
清和県民の森は、小糸川の水源地域にある、面積3200ヘクタールの全国有数の県民の森で、標高200〜300mにも関わらず、V字谷が発達し、険しい山岳地形です。
キノコの話だけでなく、マメザクラ(フジザクラ)やキヨスミミツバツツジなどの房総半島上総丘陵で特徴的な樹木、山や谷はどのようにしてできるかなど地質や地形の歴史、標高250m程度の瘠せ尾根に生えるツガやヒカゲツツジなど房総半島における垂直分布の寸詰まり現象、斜面の侵食を防止するための森林内での光の管理の手法などについて現地での解説をおりまぜました。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
今回は、魅力ある森林管理のため、「合自然性」の大切さについて話題とします。
2003年11月9日、10日に、山武町で開催された森林環境教育全国シンポジウムでは、山武林業について多くの話が交わされました。私も、第3分科会で、地域林業の視点、すなわち、「地域づくりの一環としての森林管理を実現すること」の視点を森林環境教育に取り入れることの大切さを強調しました。
なお、ここでの「森林管理」とは、狭義の林業経営の中のことではなく、「いろいろな役割や魅力をもった森林の管理」という広い概念です。
そして、そのような「森林管理」のためには、「技術」が必要ですが、森林を取り扱う「技術」に必要不可欠な理念として「合自然性」があります。
森林と人の関わりにおいても技術的な進歩や発展が必要ですが、忘れてはならないことは、「合自然性」の原則です。
■変化に富んだ房総半島の森林
房総半島は高い山が無く気候は穏やかで、森林も概ね一様で大きな変化はないものと皆さんは考えられると思いますが、森林の中に入って観察すると場所によって大きく異なる多様な森の姿が発見できます。森林は、私たちが関わりを深めれば深めるほど、いろいろな側面を見せてくれるようです。
房総半島の南部と北部の森林の様子の違いは、県内の森林関係者ならだれにでも明白です。年降水量が南部は2000mmを越えるのに対して、北部では1400mm程度のところもあります。また、太平洋の影響で温暖な海洋性の気候を呈する東南地域に対して、北西地域は内陸性の気候を呈しています。
この南北の気候条件の境界区域が、上総丘陵という標高は高くなくても険しい山地地形の地域と重なることから、この付近では尾根の南と北の斜面により、常緑樹と落葉樹が対照的に見られるなど不思議な森林の姿に気がつきます。
また、この地域はいくつかの樹木の北限地域となっており、カゴノキ、イチイガシ、リンボク、オオアリドオシなどの南方系樹木が見られます。
シイ・カシの仲間では、スダジイが全域で分布する中、北部ではシラカシ、中央部はウラジロガシ、南部ではマテバシイが目立ちます。
樹木を伐採して放置すると、北部はヌルデ・ネムノキなど、中央部はアカメガシワ・ハゼノキなど、南部はカラスザンショウ・アブラギリなどが生えてきて、地域により様子が異なります。
南北の境界地域となる上総丘陵では、北方系のフサザクラ・アズキナシ・ヒメコマツなどと、スダジイ・クスノキ・タブノキなどの南方系の植物とが混在し、さらに、三浦半島と地続きであったころの名残としてのイズセンリョウやミツバツツジなどの三浦半島以西と共通の植物が見られ、房総半島の生い立ちを感じることができます。
これらの森林の有様を理解することは、今日、多様な役割を期待される森林を扱う際、「合自然性」を尊重する上で重要なことであり、とても参考になります。
全国の皆様の地域には、もっといろいろな特長ある美しい森林があり、それは、森林との関わりが深まれば深まるほどおもしろく見えてくるものです。
次回も、引き続き、森林管理における「合自然性」について話題とします。
|