森に親しむ談話室

森と人をつなぎ、人と人をつなぐ、森に親しむための談話室です。運営は、「森に親しむ研究所」です。

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 今回は、やや固い内容になりました(いつも十分固い?)が、近年着目されている「里山」をどのようにとらえるかについての一考察です。

 上の写真は、近くの公園の「古墳の上のエノキ」です。
 下の写真は、ただの林の写真ではありません。古くからの林業地である千葉県山武町にある森林です。上木は樹齢150年から230年のスギ巨木林、下木は60年から70年のヒノキの2段林で山武林業の歴史を感じさせる風景です。

 有名な場所ではなくとも地域のシンボルとなるような、長く年を重ねた風景は、皆様の身近にもきっとたくさんあると思います。

■林学の創成期
 森林を育て、適切に伐採して利用する方法を追求する学問が18世紀にドイツで生まれた林学ですが、近年、日本では林学という名称が大学の学科名から消えています。
 理想の森づくりをいかに実現していくかの理念の系譜については、筒井迪夫著の「森林文化への道」(朝日選書)に簡潔にわかりやすく書かれています。
「自然は常に正しい」というゲーテの言葉を発展させた、ハインリヒ・コッタは、森づくりは「半ば科学であり半ば芸術である」という森林観を提唱しました。コッタの弟子のハインリヒ・ザリッシュは「森林美学」の学問領域を創設しました。
 日本で、「林学」という名称がなくなり、生物環境学科や森林環境科学などのより広い概念の名称に変わっても、まだ、かつてのドイツにおける林学創成期のスケールの大きさには及ばないことは否めません。

■美しい森づくり〜「里山」の持続的管理に向けて〜
さて、現在の日本で、「美しい森(里山・山里)づくり」はどのような意味を持ち、具体的にそれをどのようにして実現していく方法があるのでしょうか。
 2001年9月千葉市生涯学習センター特別会議室で開催された「森林文化政策会議」(会長:東京大学名誉教授 筒井迪夫 事務局(社)国土緑化推進機構)で千葉県の里山を事例に写真を用いて話題提供させていただきました。以下はそのレジメの一部ですが、そのもとは、1999年8月に千葉県農林業技術会議林業部会への会議資料に加筆したもので、皆様の地域においてもあてはまることがあるかもしれません。
1 森林の現状
 ○全県的な管理放棄(手入れ不足)林分の増加
 ○不健全な森林の増加、林相の単純化の進行
 ○森林機能の総体的低下
 ○一定の環境ビジョンに対する管理手法の不整合

---管理放棄(手入れ不足)林分の類型区分(例)---
1.人工林の管理放棄(手入れ不足) 間伐手遅れ林分 不健全な過密林分
2.病虫害被害林分の管理放棄  枯損木の放置
  松くい虫被害林分  笹・クズ等の繁茂、竹林化、照葉樹林化
  サンブスギ溝腐れ病被害林分  笹・クズ等の繁茂、竹林化、照葉樹林化
3.旧薪炭林の放置林分  照葉樹林化(暗い森)、笹・クズ等の繁茂
4.竹林放置による竹林の拡大  隣接する既存樹林の枯損・竹林化
5.マテバシイ単純林の林床荒廃とマテバシイ林の拡大

2 期待される森林の状態 ―重視すべき機能別のゾーン区分―
  1.生態的に健康な森林・多様な自然環境の形成要素としての森林(共生1)
  2.木材生産機能の発揮による資源循環に資する森林(循環)
  3.水土保全機能など災害の防止や県土の保全に資する森林(水土1)
  4.各種保安林の目的とする機能の発揮に資する森林(共生2・水土2)
  5.気象緩和や防音・大気浄化などの生活環境保全機能の発揮に資する森林(共生3)
  6.多様な自然活動やレクリエーションの場の提供など保健休養、文化・教育的機能の発揮に資する森林(共生4)
  7.シンボル的な景観や民俗的信仰など風土や精神文化の象徴としての森林(共生5)
  8.地域の人々にとって好ましい環境ビジョンの実現に資する森林(共生6)
  9.原生的な自然の保存を目的とした森林(共生7)

  ※ 水土、共生、循環は、平成14年から施行された森林法による区分に対応します。

 上記の区分は、ゾーン区分という手法を適用することを前提とした主たる森林機能の類型化を考えたものですが、それぞれの森林の具体的な内容を考えると、合理的ではないことに気がつきます。
 すなわち、今日、人々の多様な森林への関わり方や、生物の多様性の保全を考慮すると「ゾーニング」という、森林の価値をひとつの要素に還元して管理する方法は、基本的には極めて有用ですが、一定の限界があることがわかります。生物の種の多様な森林が水土保全林であり同時に他の生活環境保全機能も合わせて発揮することや、広葉樹の明るい森だけでなく荒れた人工林が人々の森林体験の場に活用されふれあいの場になることもあります。
 人工林や天然林がそれぞれ関係しあい森林が同時に複数の価値を発揮できることに着目した管理手法も必要であることが明らかになりつつあります。

3 合理的な管理目的の明確化 ―管理手法との整合の要件―
  1.生活上の必要目的の明確化 =「利用目的合理性」
   (1)持続的木材生産基盤としての利用
   (2)環境資源としての利用
   (3)精神文化的資源としての位置付け
  2.合自然的技術の適用 =「生態的合理性」
  3.視覚的環境形成の目的意識化=「景観合理性」

4 長期持続管理組織の存在条件 ―公的管理または社会的管理の前提―
  1.地域条件との調和
  2.組織の独立性
  3.組織存立基盤の多層的構造

■「合意」に基づく「森林の社会的管理」の推進 〜「半ば科学、半ば芸術」の森づくり〜
 以上、結論として森林の社会的管理を進めるための仕組みづくりが基本方針であるとしているものですが、これを構築する場合の要件として、上記3の「利用目的合理性」、「生態的合理性」、「景観的合理性」を挙げています。
 即ち、「美しい森林」であることの中に、「利用」と「生態」についての合理性を含むような森林管理の合意を得ることが、必要であるということです。
 ここでの「合意」とは、過去の入会規制にあったような地域社会による不合理な封建的規制ではないことであることはいうまでもありません。

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