森に親しむ談話室

森と人をつなぎ、人と人をつなぐ、森に親しむための談話室です。運営は、「森に親しむ研究所」です。

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前回と同様に、岐阜県東濃地域の写真です。

岐阜県中津川市は、栗の栽培で有名です。

 一般には特に話題になりませんが、栗は全国各地の山村で広く栽培されているという点で、他の果樹とは異なります。栗は多様な山野の恵みの代表的なものの一つです。

 この連載シリーズでは、日本の山里文化や歴史についての考察という、大きなテーマを据えています。その一環として、木曽地方の自然、森林、歴史、林野制度などを、まず最初に島崎藤村の「夜明け前」をめぐって辿りました。
 そして今、東濃地域を手がかりにしながら、日本の森林制度が展開していく上でのいくつかのキーワードや話題を取り上げて、辿っています。

 特に東濃とも呼ばれる裏木曽地方には、山村のいろいろな要素があるように感じます。
今回の写真は、岐阜県中山間農業技術研究所中津川支所の栗園です。広大な栗の試験地があります。

栗の栽培は、古来、概して粗放的でしたが、ごく最近の10数年前、平成の時代になって、岐阜県中津川、兵庫、千葉などで同時並行的に新たな栽培方法が始まりました。

超低樹高栽培と呼ばれる方法で、剪定方法に特徴があります。
これにより、これまで、栗は植栽後15年から20年ぐらいで収穫が低下していましたが、30年、40年の木でも継続して多量に収穫できるようになりました。
その最も先進的な技術が研究されているところが、中津川です。

現在はいろいろな組織改革がなされ一概にいえませんが、従来、栗の栽培方法についての技術研究普及は、山菜やキノコ栽培、製炭などと同様に全国的に林業の分野として分担されてきました。このような作物を、特用林産物といいます。

栗の栽培が盛んな中津川地域は、森の恵みに親しんでいる地域の証として、とても山村らしいと思います。

さて、また、前置きが長くなってしまいました。


      〜〜〜 近代日本の森林と人との関わりの系譜(その7) 〜〜〜
           明治26年の川瀬善太郎と金子堅太郎の論争
         「所有」対「用益」・「木材収益」対「多様な恵み」

 11月14日掲載の(その6)では、「公私共利」の原則について取り上げ、その原則を崩した明治政府は、山野の「所有」と「用益」をいかに調整するかという課題を長く背負うことになったということについてふれました。
明治30年「森林法」がはじめて制定されましたが、それまで、産みの苦しみが少なからずあったことを、今回、取り上げます。

 日本の山野に人々がどのように関わり、その恵みをどう活用するかといえば、明治の時代もそれ以前と同様であり、「公私共利」の原則によるということは変わらず、戦後の怒涛のような拡大造林の時代をを経た、今の時代にも大きな意義をもつものであると考えられます。
 明治26年、「山林」誌上で川瀬善太郎と金子堅太郎との論争が行われました。

 金子は山野の多様な恵みを平等に利用するという「公私共利」制を基本とすべきことを提言しましたが、川瀬はこれに賛成せず、針葉樹などの大材を育てて、収益をあげることが「森林経営の論理」であることを主張しました。

 明治以降、川瀬の主張する「森林経営の論理」による林政に、昭和の高度経済成長期の終わる頃まで力が傾けられました。すなわち入会権などの「用益」を極力排除し、「所有権」を明確化し「開発」を指向する法制度が整えられた歴史です。
  
 「森林経営の論理」の論拠となった、ドイツ林学の理念は間違って継受された面があったことは、既に述べたとおりです。
 元来、森林の恵みは、広く深く多様なものです。

 今日、平成時代になって、新たな森林・林業基本法が制定されるなど、森林の公益的機能を首座においた林政改革が展開されていますが、その改革の流れは、「公私共利」の原則が貫く山野の恵みをどのように位置づけ、誰が管理の責務を負い、いかに市民が享受するかという観点からの見直しであることを、あらためて確認しておきたいと思います。

 現在、森林管理の責務は、森林・林業基本法で定めによれば、国、地方自治体、森林所有者とされていますが、総ずれば、我々自身にあるとも考えれないでしょうか。(つづく)

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