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昭和という時代で君に出会えたことが
僕にとっては奇跡としか思えてならない・・・
昭和・・・そう聞いて何を想像するだろうか。
電化製品が急成長を遂げた・・・
オイルショック・・・・
それなんかもあるかもしれない。
だが多くの人はこう答えるであろう。
――――――“ 戦争 ”
そう。これは僕が生きた戦争の足跡なんだ。
僕は15歳。
そう。あと数年先に生まれてしまうだけで赤紙が来るような年だった。
日本は今まで戦争に勝ってきたという優越感のようなものが生まれた時代でもあった。
そんな日本も最初は優勢だったが、のちに敗戦の危機とまで来ている。
僕の父さんは兵士として戦地へと旅立っていった。
母さんは僕と二人残されてしまった。
毎日のように聞こえる銃声音。
防空壕へ入るという辛さ。恐怖感。
危険と隣り合わせの日々が続いていた。
週に何回かは父さんから手紙が来る。
その手紙は僕と母さんにとってどれほどの勇気と安心をもたらしてくれただろう・・・。
いつも手紙を届けてくれている少女がいる。
その少女の名は朱里(あかり)
その子は母親を戦争で亡くし、父親は兵士として戦地へ旅立ったということだった。
たまに来る父からの手紙が生きがいなのだと言っていた。
その子は手紙の配達をしていたのだった。
僕はいつの日かその子と手紙の配達をやっていた。
少しではあったがお金も稼げる。母さんを少しでも楽にしてあげられる。
そう思って始めたのだった。
僕はよく朱里と話した。朱里は“今”という辛い時代だからこそ
暗い気持ちになるものかと、いつも笑顔で話してくれた。
笑顔がものすごく似合う女の子だった。
―――― 僕はそんな彼女に恋愛感情を抱いてしまったのだ。
僕は好きだと思うほど“今”という時代に生まれたことを悔やんだ。
恋愛なんかしていられる暇はないんだ。そう思うしかなかったからだ。
その朱里が手紙配達に来なくなったのはそれから約1週間後のことだった。
気になった僕は町の方まで彼女のことを聞き歩いた。
聞くところ何も分かってはいないが住まいを横取りされたということだけだった。
それを聞いた僕は、たってもいられなかった。
―――――― はやく探さないと!!!
彼女を見つけたところはふもとの公園だった。
泥まみれであの笑顔が消えていた。
とっさに僕は思った。
僕が・・・僕が助けたいんだ。
僕は・・・君の笑顔がなくなってほしくないんだ!!
「朱里ちゃん!!」
はっとしたように朱里が気がついた。
「ど・・・どうして・・・」
「朱里ちゃんがいないのが心配で・・・」
「そ、そんな・・・」
そういって朱里は大声で泣き始めた。
僕は強く強く抱きしめてあげた。
「今を生きるんだ!精一杯!どんな事があろうとも!!」
そういいながら朱里を強く抱きしめた。
ちょうどその時だった。空から何かが落ちてきた。
僕はすぐ近くにあった防空壕に朱里と逃げ込んだ。
そとで大きな音がする・・・
外へ出て行くと、さっきまであった家々は微塵のようになくなっていた。
怖いといえるようなものじゃなかった。
恐怖とそれ以上の怖いという感情だけがこみ上げてきた。
母さんは無事だろうか・・・・・
そんなことも思っていたけれどどうやら町の方だけだったらしい。
「朱里ちゃん。よく聞くんだよ。何があろうと今を精いっぱい生きるんだ!!」
「うん!!絶対生きよう!!」
二人は強く約束した。そして――――――
「私ね、前から言いたかったことがあるの。」
「なんだい?」
「このつらい戦争が終わったら私と・・・私と―――――」
その後を言おうとしたとき僕は大きな声で叫んだんだ。
「このつらい今を生られるのなら!!僕と結婚してほしい!!!」
僕は心にいつもため込んでいた思いを一気に打ち明けた。
・・・・・・・・・。
「私も今それを言おうと・・・・」
朱里が泣きながら。でもうれしそうに言ってくれた。
僕もこの時代に生まれてこんなにも嬉しい事があるだなんて。
そんな風に思った。
二人で僕の家を目指して歩いた。
硬く硬く手を繋ぎながら。
これでもかっ!!って言うくらい硬く手を繋ぎながらあるいた。
その背後から何かが・・・・
そう。ふたりは黒に呑みこまれてしまった。
その後僕と朱里が歩いた足跡だけが
いつまでも残っていたんだ。
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