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甘いケーキについてくるカプチーノみたいに
あなたは少しほろ苦かった 暑い夏の日のかき氷みたいに あなただけが私に冷たかった シロップのかかっていないホットケーキみたいに あなたはどこか素っ気なかった だから私は あなたを諦めたのに あなたは私を 好きだったと言う あなたから離れて もう戻っては来れない距離にいるから そうやって 自分の 意地の悪さを 「好き」の一言で 覆い隠してみせるなんて あなたは本当に ずるい人 |
short story
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一話完結もの。
短い物語
どうか
貴方に
受け取ってもらえますように。
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あなたに
「あなた」と呼ばれた 「君」ではなく 「お前」でもなく 「あなた」と言ったあなた 私は あなたという人は なんて心地良い話し方をするのだろうと その声に 浸ったのだ あなたは 自分には感情が無い、と言った 私はあなたのその言葉を 訝しげに聞いていた あなたが私の心に気付いていないのなら そのままそっとしておいてほしい もしも気付いているのなら これからも気付いている事を隠し通してほしい だって 惨めだから 一人相撲をしている私を 知られたなんて分かってしまったら あまりにも 救いようがないから だから あなたには このままずっと 気付かないふりをしててほしい 私を名前で呼ばないで 私は 「あなた」のままでいたい |
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いつからだろうか
切ない恋を避けるようになったのは。 いつからだろうか 安全な恋愛を選ぶようになったのは。 いつからだろうか 一人ぼっちが平気ではなくなったのは。 いつからだろうか あなたに愛されることが当たり前になってしまったのは。 あなたに出会ってからというもの 私は甘やかされっぱなしで もう一人では 何もできないような錯覚に囚われる。 あなたの愛情はあまりにも深くて 穏やかで 窮屈で 温かい。 ある人はそれを退屈だと言うけれど 私にはそんな日常が新鮮で あっという間に月日が流れてしまう。 愛されることが こんなにも温かくて 誰かの愛情に縛られて感じる多少の不自由さも なんだか愛おしく感じてしまうだなんて 私はとうとう 私ではなくなってしまったようだ。 フラフラと彷徨っていた心が ぬるま湯に包まれて すっかり溶けてしまったようで 私は今日も あなたの笑顔に あっけなくほだされてしまうのだ。 |
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いつも
いつも
意地悪くからかってくるあなたが
いつも
こちらが予測できないことをして笑わせてくるあなたが
いつも
優しく抱きしめてくれるあなたが
いつも
真剣に注意してくれるあなたが
いつも
めんどくさそうに頼みごとを聞いてくれるあなたが
いつも
バスから降りるときに手を差し伸べてくれるあなたが
いつも
不器用なあなたが
いつも
上手に車を運転するあなたが
いつも
脱いだ靴下を洗濯カゴに入れないあなたが いつも
開かない瓶のふたを開けてくれるあなたが
いつも
赤ちゃんみたいに寝ているあなたが
いつも
曲がったことが嫌いな正義感の強いあなたが
いつも
あたたかいあなたが
ただただ
愛おしい
これからもずっと
共に年を重ねていけるなら
私の人生はきっと
それだけで充実するのだろう
付き合い始めて
同棲をして
結婚をして
お互いにずいぶんと変わってはきたけれど
相変わらず子供っぽいあなたの笑顔に
私は今日も
ついつられて笑ってしまうのです
これからも
そんなあなたと
ずっとずっと
一緒にいたいという願いを込めて
私は今日もあなたに言うのです
「おかえりなさい」
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あなたに別れを告げたあの日、私は桜吹雪の中にいた。
むせ返るような花の香りの中で、私は別れの言葉を必死に絞り出さなければならなかった。
あなたのことが素敵だと思ったのも事実だ。
穏やかな人だった。
優しい人でもあった。
ただ、あなたの高ぶる気持ちを痛いほど感じていた私は
自分の気持ちがついていかないことに戸惑いを感じていた。
離れなければいけない、そう思った。
その苦渋の決断を、たとえ今すぐにしないのだとしても
いつかはしなければならないのだろうから
傷が深くなる前にお互いのために離れるべきだと思った。
携帯から漏れてきたあなたの苦しそうな声が
私の胸を締め付けなかったといったら嘘になるけれど
もう一度戻ってしまおうかという迷いもあったけれど
それでも私の口からは謝罪と別れの言葉しか出てこなかった。
あれからもうすぐ七年が経とうとしている。
あの人は元気にしているだろうか。
未熟な恋愛をしてしまったけれど
こんな私のことはもう忘れてしまっているだろうけれど
それでも時々ふと思い出す。
謝りたいこともあるけれど、きっとそれも自己満足に終わってしまうだろう。
もしかしたら今頃は誰かの父親になっているかもしれない。
桜の香りが迫ってくるたびに
当時の桜吹雪が舞う光景が色鮮やかに蘇ってくる。
未熟な私と向き合ってくれたその人は
今もどこかで日常を過ごしているのだろう。
別れるということは、相手の今を知る必要もないということなのかもしれない。
それでもこうしてその人を思い出してしまうのは
その日の桜の花が
あまりにも美しかったせいだろう。
盛大に咲き誇っている
今日の桜と同じように。
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