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近代ヨーロッパで市民革命を通して確立された民主主義思想は、現代国家の根本的基盤となって、民衆支配の普遍的な価値観を確立している。もっとも民主主義が最も合理的で機能的な政治体制であるかと言えば、決して是とは言えない。個人の人権を最大限に尊重し、多数決を以て方針を決定していく政治は、多くの人々の考えを反映し得る半面、各個人の利己的で排他的な要求をも無視出来ない、衆愚政治という部分も確かに存在する。また一個人や一集団が己の独断だけで為政者となり、国家を運営していくことを許さない分、例えば法案審議など時に冗長で非効率な経過をたどる必要性もある。それらの意味から「最悪の政治だが、今まで存在した如何なる政治形態よりまし」となどと論評される。 そんな民主政治の対極に位置するのが独裁制である。国政権力を一手に握り、多数意見に裏打ちされた迅速な対応が出来る意味では、この政治形態ほど優れた手段はない。古代ローマの政治家で終身独裁官となり、数々の軍功と筆跡を残したユリウス・カエサル以後、古今東西を問わず大半の国や地域で、同様の支配体制を敷いた時期があるものだ。万民を思う実務・思想両面で善政を敷ける哲人政治家が独裁を行えば、それはまさに“地上の楽園”となるのかもしれない。しかし、少数意見を封殺し弾圧する人権侵害、政治の正常性をチェックし指摘するシステムの不在、自分に反対する者への徹底した弾圧・粛清の実施、国民の意向との乖離の拡大など、得てしてその支配は悪政と非難されることが多い。現代世界でも、未だ数多くの独裁国家が存在し専制支配を行っているが、その多くが国際機関やNGOなどから批判され、人道支援が続けられている。その有名な2人の現代独裁者が、昨年末に相次いでこの世を去った。サパルムラト・ニヤゾフ、そしてサダム・フセインである。 昨年12月21日、中央アジア南西部に位置する旧ソ連諸国の1つ、トルクメニスタンの大統領、サパルムラト・ニヤゾフが急逝したと報道された。ニヤゾフ大統領は旧ソ連の支配下だった1985年頃から、共産党の筆頭書記として支配体制を確立し、国家独立後は大統領に就任、度重なる憲法改正によって終身大統領となり、トルクメン人の国父「ティルクメンバシュ」と名乗って権威主義的な支配を続けてきた。反対者への抑圧や言論・情報統制を実施し、豊富な天然ガス資源輸出による経済大国化を目指し、独断と偏見に基づいた数多くの施策によって、長く権力の頂点に君臨してきた。欧米諸国からは「中央アジアの北朝鮮」「西の金正日」と呼ばれ非難を浴びてきたが、近年は糖尿病など健康問題が指摘され、地位に固執し後継者を指名することなく“志半ば”にして生涯を終える結末となった。 そして同12月30日、四半世紀に渡ってイスラム社会を指導したイラクの政治家、サダム・フセインがかつて弾圧を加えたイスラム教シーア派系政府の手によって、死刑に処せられた。アメリカとの協調関係からイスラム社会の団結を唱え、スンニ派政権の下でイラン・イラク戦争、クウェート侵攻、湾岸戦争といった大規模戦争・紛争を主導し、粛清を繰り返す恐怖政治と個人崇拝体制を敷いた独裁者は、アメリカ同時多発テロ事件に始まる対テロ戦争の関与者として、国際的な武力制圧を受け政権の座を追われ、逮捕され戦勝国と後継政権による法の裁きが下りこの世を去った。後継者と目された2人の息子は既に殺され、4人の夫人とも別離する中、最後まで自己の正当性を主張し続けた孤独な晩年だった。 政策面や宗教観、国民からの評価など異なる面も多い2人の政治家だが、長年に渡る独裁政治によって、多数の犠牲者と生活困窮、飢餓難民が出たのは紛れもない事実であり、政権獲得までにも権力闘争によって政敵を蹴落としているものだ。現在の独裁国家の大半は社会主義国だが、国政を強力に指導する才覚と智謀、一種のカリスマ性を兼ね備えた人物によって、自由を抑圧された中で国民は日常生活を送っている。そして確立された強大な権力は、得てして己の子孫へと世襲され、更なる腐敗をもたらしていく。現在の北朝鮮などはまさにその典型例である。独裁は必ずしも悪ではないが、それを行使する人間の倫理観が相当に卓越した精神性と平等性を保持しない限り、必ず失政と化していく。だが民主政治においても、結局は大局的な視野と優れた教養・才能の持ち主が、その政治の中心となるのが現実である。人間が集団生活を営む宿命を負い続ける以上、永遠の課題なのかもしれない。 Crion
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僕も独裁政治は許せません。民主政治をしっかりすることが大事ですね。憲法どうり、不断の努力をしていきたいですね。
2007/1/9(火) 午後 2:58 [ HY ]
独裁政治ほど残酷なものはないと感じます(><)もちろん優れた人徳の持ち主が先頭に立って政治を進めれば、民衆も嫌な思いをいすることなく生活できるのかもしれませんが…優れた人徳者は独裁ではなく、きっとその前に思いやりを持って民衆の意見を取り入れる気がしますしね!フセインの死刑執行では、命の重みと国・民衆も関係など、いろいろと考えさせられました。
2007/1/12(金) 午前 7:57
>HYさん:コメントありがとうございます。民主主義はまさに主権者たる国民の意思と行動が、国家を左右する重要な鍵になりますね。その意味でも日々の事象や出来事に関心を深め、一国民として日本の未来に何らか貢献できればと思います。またお越し下さい。
2007/1/12(金) 午後 9:46
>マリーさん:コメントありがとうございます。中東問題は宗教観の違いが歴史事象と複雑に絡み合っている分、解決も非常に難しそうですね。フセインもシーア派では英雄扱いされ、他方恐怖の独裁者という部分もあり、イラク国民の反応も賛否両論で、北朝鮮の某指導者の様に国民全体を疲弊させている訳ではないので…とはいえ、多数の人命を葬ってきた事実は曲げられず、やはり因果応報なんだなと思います。世界には同様の国家がまだ数多いので、早く民主化されていけばいいなと思っています。またお越し下さい。
2007/1/12(金) 午後 10:05