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1月に、地元の高校恒例の百人一首大会を取材したのだけれど、そのとき旧知のボクシング部顧問の先生から一人の生徒を紹介された。
初めて間もないヤンキーだが、なかなか筋がいいという。ガタイが良く、目つきが悪く、肩をいからせ、周囲を意味もなく威嚇し、金髪で、後ろ髪も長かった(←田舎ヤンキーのデフォ)。
紹介されて挨拶すると、彼はうつむき加減でニヤニヤしながら「ちぃ〜っす」と間延びした挨拶が返ってきた。先生にアタマをひっぱたかれると、またニヤニヤした。
* * *
先日、先生から電話が掛かってきた。「イリさん、あいつやりましたよ!」。8月のインターハイに出場が決まったという。当初エントリーした階級で負けたため、県予選には1階級落とし、5キロ減量して出場し見事優勝した。
きょうの夕方取材に行った。先生に案内され練習場に行くと、彼は黒髪で髪も短かかった。うっすら汗をかきバンテージを巻いている彼に話しかける。予め考えておいた質問をし終えてから、えらい見た目の変わった彼にこんな質問をしてみた。
イリ「もうそこらへんのヤツには負けないでしょ?」
彼「いや、自分はもうケンカはしません。でも、先生には負けます」
彼をボクシング部に誘った初日、先生はいきなり彼とスパーリングした。「おっさん(先生のこと)ぶちのめしてやろう」と向かっていった若者は、元日本ランカーの先生にボコボコにされた。
先生はそのときの強引な勧誘を思い出しながら、満足そうに笑う。「いまあいつはやりたいことも見つかって、負けたら夜も眠れねーほどらしいんですよ」
悔しい。強くなりたい―。そんな一心でひたむきにサンドバッグを叩く彼を、一枚撮らせてもらった。とてもいい写真だった。
イリ「彼はたった半年で変わりましたね」
先生「自分に自信がねえからカッコばかりでイキがってたんです。ありのままが一番楽、そして強い」
わかるわかる。
彼は、強くなったのに、まなざしはやさしくなった。
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まるで映画のような筋書きが、普通の世界にあるもんだなぁ。
こういうのってボクシング特有っぽく見えるけど、何も特化したわけでなく、
他のスポーツやら芸術やら、いろんなところで起きてるんだろうなぁ。
みつを
2011/7/7(木) 午前 10:27
ああ、素敵ですね! 先生もその男の子も。
私にもこういう「金八先生」がいたら、安心して不良になれたのにな(笑)
2011/7/7(木) 午後 7:10
午前 10:21ないしょさん
本当に、ないしょさんのおっしゃるとおりです。彼は周囲に自分を誇示する必要がないほど、ボクシングに打ち込めているのでしょうね。
自分も含めて大人はいろいろ葛藤がありますけど、彼みたいな人を、近くで見てるだけでも気分よかったです。
2011/7/7(木) 午後 8:13
スメちゃん
うん、限らないと思うよ。ボクシングってスポーツなのに殴るじゃない?何気に特殊なことだと思うんだよなー。
しかし最初に会ったときの彼はふてぶてしい態度だったなw ちょっと殴ってやろうかと思ったくらい笑
2011/7/7(木) 午後 8:21
カオリさん
先生が本当に素敵なんですよー^^ 泥臭くて、一途で、謙虚で。
こんな先生に受け止めてもらえる彼が正直うらやましいですね。いまタバコ吸ったり無理やり悪さで目立っても、誰も相手にしてくれないですからねー笑
2011/7/7(木) 午後 8:24
人生のどの段階で誰に出会うかで、天と地ほど生き方も人格も変わってしまうのでしょうね。良い場合も、そうでない場合もあると思うと、ちょっと切ないです。
何かをギリギリまでやった人、というのは、それが何であれ人を畏怖させる雰囲気をもっている気がします。そして、自分はなんて中途半端なんだーーーと反省(苦笑)。
素敵な出会いと、記事にポチ☆。
2011/7/8(金) 午前 10:20
モクレンさん
彼は先生に会って本当に変わりましたね。あのハツラツさ加減は、同じく中途半端な自分にはヒジョーにまぶしかったです!笑
ポチありがとうございます^^
2011/7/8(金) 午後 8:43