しんどいことや、つらいことが重なった時に、昔からよく 「トンネルだなぁ」って思います。
なんでそんなふうに考えるようになったか。 この前、昔読んだ漫画の影響だと思い出しました。
* * *
サンデーで連載していた「うしおととら」。
物語は中学生の「うしお」と妖怪の「とら」がバケモノを倒しながら東北を旅するんですけど、北海道まで旅した二人は、青函連絡線で東京に帰ります。
そこで、土中を徘徊するバケモノ「山魚(やまうお)」が列車を襲います。
うしおは列車に張り付いた山魚を車両ごと切り離しますが、山魚はしつこく追ってきます。
とつぜん不条理な事件に巻き込まれた乗客たちは、わめきます。「うまくいかないじゃないか!」「あんたがうまくいくって言うから・・・」「おい、責任取れよ!」
しかし、そんな乗客よりもうしおの気分を悪くさせるのが、同じ列車に乗り合わせた中学生の「野村」です。
彼はいじめられっこなのですが、いじめられても苦笑いするだけで抵抗しません。やられっぱなしです。
そんな様子にイライラするうしお。野村は言います。「だって僕は君みたいに強くないんだよ」「もともと性格が弱い人間はどうすればいいのさ?」
仕事や家族、人間関係で行き詰ると、自分の性格が変わんないもどかしさに遭遇しませんか?
誰しも短所があって当然なんですけど、どうしても変われない。
そういう時、どう思いますか?
野村は続けます。
「僕だって(うしおみたいに)強ければいじめられないさ」
「でも、何をしてもうまくいかないヤツはどうすりゃいいんだよ?」
「そういうやつは皆からバカにされながら生きていかなきゃなんないのかよ」
うしおは野村に言います。「…オレはそんな……むずかしいコトわかんねえよ・・・でも、」
− − −
「なんで俺ばっかりこんな目に遭うんだろう」「なんでこんな病気になったんだろう」「なんで結婚できないのだろう」「なんで子どもができないのだろう」「なんで俺ばかり怒られるんだろう」「なんで地震が起きたんだろう」「なんであんなヤツと一緒に仕事しないといけないんだろう」「なんであの人が死ななきゃならないのだろう」
なんで、なんで、なんで・・・。
自分に起きた問題の原因や対策を失敗から学び、考えるのは正しいやり方です。
ですが
本当に欲しているのは個別の問題に対する答えなんかじゃなく、たいした理由もなく突然襲ってくる不幸が、なぜ起こるのかということのほうが気になります。あ、これは僕に限って言えばの話なんですけど。
だから、嫌なことが続くと、なんとなく「トンネルだなぁ」って思ってました。
+ + +
さてさて。
依然列車に張り付いて離れない山魚←しつこいw、 人間を襲うほかに、もう一つ厄介な体質を抱えていました。日の光に当たると爆発するのです。
つまり、列車が青函トンネルを抜けて青森に着いた途端に、山魚もろとも爆発して誰も生き残れない。
これはヤバイ。
乗客はやがて己のエゴに気づき一致団結しますが、一人隣の車両にコソッと逃げようとする若者がいます。
木村です。
すみません、野村でした。 m9(^Д^)プギャー
乗客が皆で手を繋ぎ、一人ひとりの人体を通すことで技の力を上げた攻撃で山魚をトンネル上部に釘付けにする作戦を決行しますが、野村は輪に入ろうとしません。
怖いから逃げるのだそうです。
ところで皆さん、いじめに遭った時、最も簡単な対処法はなんだと思いますか?
正解は、逃げることです。
ヘタに抵抗すると、もっとやられます。
抵抗しても逃げても、どっちにしたっていじめられるのには変わりない。だったら逃げよう。
おそらく野村もそういうふうにして、自分を守っていたのかもしれません。
さて、誰もいない車両で事なきを得ようと思っていた野村を待っていたのは、途中から息子と一緒に旅をしていたうしおの父「紫暮(しぐれ)」でした。
「まぁーた逃げるんかー?」
野村はずっと黙っています。
「生きてりゃさ、何でこんな目にあうんだとか、なんでオレばっかりとか。山ほどあうわなぁ。事故とか病気とか」
そうだよねぇー。
「現に今、私らがこんな恐ろしい目にあっているのに、のほほんとメシ食っている人間もいるんだよなァ・・・」
地震のとき、東北の皆さんもこう思ったのかもしれません。
なぜ理不尽な目に遭うのかは、坊さんである紫暮にも、よくわからないのでした。
ずっと黙っている野村に、紫暮は続けます。
= = =
この前、帰り道ひさびさに「トンネルだなぁ」って思いました。
さて、自分で思い当たる原因もなく突然降りかかる不幸に対して、いったい私たちはどういう態度を取ればいいのでしょうか。
涼しい顔をして、「なんともないよ? ヒーホゥー♪」って冷静に問題の傾向と対策を考えるのが正しいやり方でしょうか。
それとも、そうした問題に真正面から向き合って「オレは逃げたりしねーぜーベイビィ〜ψ(`∇´)ψ!」って闘うのが正解でしょうか。
僕にはよくわかりません。
ただ、
トンネルは、いつか抜ける。
逃げもせず、闘いもせず、
ただ、「つらいときは、トンネルと似てるよなぁ」って思ってます。
うしおととら 14巻、15巻 第25章「時限鉄道」