金子みすゞ 『誰がほんとを』
|
詩
[ リスト | 詳細 ]
例えば、黄ばんだノートの隅っこに書き殴った鉛のこと。
|
ウソくさいのは嫌だけど、かわいい嘘は許したい 貧乏くさいのはみっともないけど、明るい貧しさ大歓迎 くるくる頭で寝癖を演出、誰も見てないお莫迦さん 天鵞絨ジャケット羽織ったけど、肩幅狭くて肩凝った もの悲しいのは気分です、胸を痛ませるのはいつも本心 悲し気な私は面倒くさい、あふれる涙はとめどない 不安とかけっこ楽しいな、どこまで逃げてもついてくる 息切れしたって無駄みたい、自分でこさえた不安だもん 意識された物語は胡散臭い、本当のストーリーはわりと突然 本当の気持ちはどこにある、本当の気持ちはポケットの中 年に一度の目出度い日、自意識燃やしてお葬式 年に一度の目出度い日、ホンマの自分と結婚式 |
お願いがございます、お願いがございます こんな頼み事をするのは初めて・・・、いや、2回目だったかな まぁどっちでもええわ あ! すみません、言葉を慎みます 神様、お願いがございます 疑り深いこの僕に、信じる心をお与えください あの人を信じる強さと、強い愛をください 毎分100回の不安に苛まれる僕を救ってください いや、あの人を先に・・・いや、まず僕が救われないとあの人を救えないから・・・ええと あれ? どっちが先だったかわかんなくなっちゃった 神様、この通りです 僕は本当に頭が悪いです 難しいことが、ほんとうに、よく分からない 気付けばわれ先にと自分のことばかり考えている、卑しい動物です ただ、自分が幸せに向かって一歩ずつ歩くことが あの人の幸いにもなるかのしれないなぁとも思うのです それでも僕は弱いですから、ええ、そこは否定しません 僕は本当に弱いですから、こうやって神頼みをした次第です 信じてください この気持ちはほんとうです 証拠がございます 僕の卑しく煙草の脂で汚れちまった胸の奥から あふれ出す想いを解放すると なんにも悲しいことなんかないのに 涙が出てきます だからこの気持ちに、虚飾はない! 誰が何と言おうと、いくら自分自身が疑おうと、ほんとうなんだ! ・・・すみません、ついつい取り乱してしまいました。 ほんとうでございます、神様 だって、今まですべてを疑り深く見てきた目から 涙がどんどん、あふれてくるんだもん 今までできるだけ誰にも頼らんとなんでも一人でやってきた傲慢な心に 一輪の花が、咲くんだもん 頼んでもないのに、涙が出るんだもん リクツじゃなくて、涙が出るんだもん あの人の笑顔が見たくて、ポロポロ涙が出るんだもん 神様 こんなしょうもない僕に 変えられない事実を受け入れる海のような心と 変わることを恐れない山のような勇気と 悲しみに打ちひしがれたあの人を包み込む、 太陽みたいな穏やかな心をください そして あの人をお救いください |






