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先日、会社の営業部のKさんと今度の特集の打ち合わせをした。僕が担当する記事の写真や体裁を話し合った後で「営業の仕事って大変ですね」と声を掛けると、Kさんは立ち上がりかけた椅子に再び座った。
「俺さ、自分が短気すぎて時々怖くなるんだよ。かみさんにも『病院行ったら?』って冗談でもなく口調で言われる」
Kさんのイラつく原因はいろいろあるらしいが、一番腹が立つのはクライアントに集金の電話を掛けて明るい声で「払います!」と言っておきながら入金を滞る人への怒りが主。
「電話で催促すると調子いいこと言うんだけどね。見えないから」
なるほど、その場では万事OK的なことを言っておいて、その時が来たら×って言うわけだ。確かにストレス。よくある、よくある。
その怒りをどこに発散させていいかわからないし誰かを憎んでもしょうがないから、Kさんの場合は「家の冷蔵庫」に当たっているらしい。しかも、凹んだ跡をかみさんに見られないようにマグネットとゴミ出しカレンダーを貼ってカモフラージュしているという。
涙ぐましい内向的行動に、いささか親近感を覚える。
「イリ君は抑えられる?」
「場合によりますね」
「もっとやさしくなりたいよ」
「本当に。。。」
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そういえば僕も、以前に比べたら怒りっぽい。それは仕事の内容が難しくなったり、教える立場になってきているということもあるんだろうけれど、それだけではないような気がする。
かいつまんでいえば、心に余裕がないんだね。
最近自分が記事を書いているときの自分の表情や、まどろっこしい話をする取材対象者の前で、ふと「俺はどんな顔をしているんだろう・・・」と思うと、たぶん恐ろしくコワイ顔をしていると思う。
生来の短気が久々にぶり返してきたのかもしれない。丁寧にアドバイスしたらおせっかい、やさしく教えたら付け上がる、間違いを指摘したらケンカ腰の態度・・・。そんなことの繰り返しで、こちらの表情も東映ヤクザ映画一歩手前なのである。
毎日のように「一体、本当の自分はなんなんだ?」なんて、二十代前半の似非文学青年のようなことを考えて、つまらない思考の螺旋階段を下っていってしまう。
そういうとき「相手が悪い」「相手がバカだから」で十把一絡げにしてしまっていいのだろうか?う〜ん、あんまりそうは思わないんだけれどなぁ。
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俺がやさしかったときなんてあるんだろうか・・・。そんな気さえしてくる今日この頃。前はもっと気持ちに余裕があって、自分の胸の中の7割くらいを自分用に使って、2割くらいは人のために使って、残りは使ってなかったのになぁ。胸の中のキャパシティーが足りなくなったときって、みんなどうしているんだろう。
そんなことを考えながら帰り道、運転しているとカーステからこんな音楽。
♪やさしかったときの心取り戻せ
嘘つきと呼ばれてもいいから♪
なんにもないのに、なぜか不愉快。
なんでもないのに、なぜか気になる。
なんてことないのに、結構堪える。
そんなときに冷蔵庫に当たらなくても、サンドバッグに無目的の怒りを込めなくてもいいように、いつでも深い青色に染まっていたいと思う、土曜日の午後。
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