空に続く道

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翼 著:白石一文

この作者さんの本を読むのは初めてでした。
読むきっかけになったのは、ご本人のツイッター。
ふとしたきっかけでフォローさせていただいていたんですが、この方の呟きやリツイートを読むと、この著書のプッシュが凄いんです。また、他の方の評価もすこぶる良かった。
と、言うわけで読みたくなって購入しました。
 
あらすじはこんな感じ
【キャリアウーマンとして活躍していた田宮は、十年ぶりに長谷川岳志と再会する。親友の恋人であった彼は、十年前に、初対面にもかかわらず彼女に結婚を申し込んだ過去があった。現在はその親友と結婚し二児の子があるが、気持ちは変わっていないと言う。岳志は言う「誰だって真実の人生を見つけられる」「君が真実の運命の人なのだ」と】
 
【死に様】と言うテーマで6人の作家さんが競作と言う形で同時(?)刊行したようです。
前述もしましたが、評判はすこぶる良いです。
ちょっと哲学的でもありますが、読みやすく、淡々とした筆致が非常によかったです。
人の死とはその人を知る人がすべて死ぬ事で、完全な死となる。つまり、自分を良く知る人の死は自分の一部を失う事。さらには、自分を深く愛し理解する人の死は、自らの死よりも致命的……という理論展開は、新鮮でした。
また「人の不幸の上に幸せはない」という主人公に対し、「人の不幸なく幸せになれると考える方が傲慢。人は他人を不幸にしないために生まれたのではなく、愛する人と幸せになるために生まれたのだ」と説くシーンは、素直に衝撃を受けました。
他にも主人公の弟夫婦や、上司など、他の人の愛の形も描かれていて、考えさせられます。
 
が、私には最後まで共感が出来なかった。
以下ネタバレありですので、注意してください。
 
 
 
 
 
共感できなかった理由。大きくは、家族観が違うんだと思う。
確かに、一途に田宮を【運命の人】と思い続ける岳志は純粋で熱いのかもしれない。
でも、どうしてだったら、他の人と結婚したのだろう?
一応、この理由は作中で語られているが、あまりに身勝手で相手の人生なんか考えちゃいない。まぁ、そこまではある程度許容できるとして(恋愛は時に身勝手なものだから)どうして、こんな人が親になったんだろう? と。
そんなに田宮にご執心で、運命の人やらなんやらいうのなら、親になる前に妻と別れて田宮に走れば良かったんだ。
さらに、岳志は言う「家族なんて、【さほど】だ。妻も子供も自分の人生を賭けるほどの存在じゃない」
このセリフを読んだ時に、この人は家庭を持つのに向いていない人なんだと思った。
つまりは、自分を愛する事しかできないのだと。
実際、この岳志、田宮を【運命の人】と言いながら、田宮の事もあまり考えていない。田宮の気持ちも境遇も関係ない。この気持ちのとらえ方が、まっすぐと取るのか、自己中心ととるのかで、この作品への評価が大きく分かれるのだと思う。
作中は何度もエクスキューズのように、この生き方【自分の直感を信じ、この人と思ったら何があっても突っ走る】を肯定するための説明や展開がなされていくけど、正直……一番大事な、他者との関わりと「しあわせ」についての考えが私とは違ったので、どこまで行っても『いいわけ』にしか聞こえなかった。
 
一つには、私が岳志の子供と同じような立場だったからだろう。
つまり、母が【あの人が運命の人だ】と家を出て、捨てられかけた経験があるからだ。
親から【さほど】と言われる子供の気持ち、わかるだろうか?
本人は運命だのなんだので、突っ走って、幸せになろうが破滅しようが……まぁ、自己満足できるだろう。でも、子どもにとっては半ば「お前を生んだのは間違いだった。産んでやっただけでもありがたく思え。あとは勝手に生きていけ」と言われるようなもの……。
作中の子どもは小学3年と2歳の子だった。
この子たちの事を考えると、胸が痛くて仕方ない。
それこそ、岳志にすれば【子どものために自分の人生を偽るなんて……自分を犠牲にして家族のために生きるのなんか、欺瞞だ】と言うかもしれないが、私はそこを超えた深い愛情も、世に存在するんではないかと思う。
 
また、弟の元妻のエピソードも共感できなかった。
女で、子をもつ身として、ちょっと……と思った。
 
この小説は徹底的に【個】つまり【自分一人】の幸せについて追求された小説だと、感じた。
 
常識にとらわれず、直観と運命を信じ生き抜く姿は、あるいみ感動を呼ぶだろう。
自分の本当の幸せのためなら、犠牲もやむなし……の考えも、間違いじゃない。
でも、この親と子の考え、一点に関して、どうしても相容れることが出来なかった。
 
あまりに、一人の人間をこの世に生み出し、はぐくむことに対して、軽い。
 
子どもは、親の駒じゃない。一人の人間なのだ。
 
できれば、運命に走るのなら、子どもの成人を待ってほしかった。
己の選択にも、きちんと落とし前をつけてこそ、運命だと思う、投げ出すのは、一件聞こえがいいけどただの責任放棄、非常に幼稚だ。
運命だと言い張るのなら、時を経ても大丈夫だろうに。自分の人生をこれ以上人のために削るのは嫌だ……というような言動は、非常に無責任。責任で家族といても……という考えもあるだろうが、あんな選択をするくらいなら、とも思う。
ラストはあえてここでは語らないけど、私は、あの決断で逆に非常に軽く感じてしまった。
 
たぶん、どっぷり浸かると深く感動する事ができる、でも、冷めて読むと【運命】を大義名分に自分勝手にふるまう彼らに眉をひそめてしまう。
 
そんな小説じゃないでしょうか。
 
 
読み終えた本のレビューも書いていきたいと思います。
結構、読んでいる本を人に知られるのって恥ずかしいんですけどね。
なんか、傾向で自分の人間性がうかがえてしまいそうで……。
同じ理由で、本棚を見られるのはもっと恥ずかしいです。
 
余談はさておき……この本は道尾秀介さんの短編集です。
全六作を通してSという人物と鴉が共通しますが、連作と言うわけではありません。
Sも、全員別人物です。
ただ、この作りは後の『光媒の花』に通じる感じがするなぁ、と思いました。あちらはうす〜く連作ですけど。
 
んで、肝心の内容ですが……。
 
面白い!
 
不気味で物悲しく、やるせなくて、でも人間臭くて。
なのに、六作全部違うテイストで、違う『オチ』がちゃんと用意されている。
中には先が十分に読めてしまうものもあるけれど、作者が何かで語っていたように『オチ』というか、仕掛けられた叙述トリック(?)や犯人探しは別に重要ではなくて、その上に漂う人の心の動きこそが中心なんじゃないかと、私は思っています。
 
詳しい内容は、ネタばれになるので、ここらで止めますね。
個人的に【ケモノ】が好きでした。あと【冬の鬼】は、読み終えると最初から読み返してしまう仕組みに唸らされました。
 
だいたい、短編集となると中に一作か二作は『??』と言うのがまぎれている場合が多いのだけれど、この本に関しては、それは杞憂でした。
 
ちょっとホラー要素もあるので、ホラーの苦手な自分は一瞬尻込みしてしまったのだけれど、それでも読ませてしまう力をどの作品にも感じましたよ。
 
お手軽に、こんな作品集が読めるなんて……。
かなり、幸せな気分です。いえ、作品内容では、幸せな気分になんか、絶対になれませんけど……。
 
道尾秀介さんの初の短編集だったようです。
長編も嫌いではありませんが(今までに【龍神の雨】【光媒の花】【カラスの親指】【シャドウ】は読了。唯一手にとって最後まで読めなかったのは、世間で評価の高い【向日葵の咲かない夏】でした)この作家さんの入門書として、この本は、おススメしたいなぁと思います。
 
で、現在はこの作家さんの作品【背の目】を読んでいる所です。
あまり続けて同じ作家さんの本は読まないようにしているのですけど、それほど、この方の文章、大好きです。

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