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「今まで黙っててゴメン。今日、彼女と、彼女の家族にちゃんとケジメつけてから、その……言うつもりだったんだけど、先に言われちまったよな」 意味が分からない。どうしてそういう話になるんだ? 私がさらに首をかしげ貴志を見つめていると 私は瞬きする。貴志はみるみる顔を赤らめ 私の目から涙が零れ落ちた。 でも、この涙は生まれて初めて零す涙だ。 私は思わず噴き出して笑った。 笑った拍子に涙が止まらなくなった。 二人で荻野友美のお墓を眺めた。 貴志はしきりにメロン飴を気にしていたけど、私は教えなかった。 隣にいる人が明日隣にいる保証はどこにもない たとえ結婚しても どんな約束をしたとしても、だ。 それはご想像にお任せします。 =完=
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三十路女と記念日男
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「でもさ、そんな俺を見かねてダチが無理やり連れて行ったコンパで、お前に出会った。んで、驚いたよ」
一緒だ。 |
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「え、これって、どういう事?」 私もつられてそれを見つめる。 さっきのおばさんの話を反芻する。 そう言えば、おばさん、あの女の人が荻野友美とは一言も言ってなかった。ただ、あの女の人の妹が貴志と一緒に事故にあったと……。 じゃ、事故に遭って亡くなったのが、荻野友美。
今日は、荻野友美の命日って事!? |
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「結婚できなくなるのが怖いんじゃなくて。貴志を失うのが。怖かったの! ずっと一緒にいられるって、約束が欲しかったの! だって、私、自信ないもん。 こんなに平凡で、何にもない私は、結婚でもしない限り、貴志はきっとずっと傍にいてくれるはずないもん。不安なんだもん! だから結婚したかったの!」
それなりの人生だった。それなりの仕事について、それなりの恋愛だってしてきた。 貴志の事は、それなりじゃ、駄目なのだ。 長い長い間、後悔と謝罪を胸にその想いを押し殺してきた貴志。きっと、私の事も……。 私はただただ驚いて、足をもつれさせながら彼の横顔を見る。 彼の握る私の左手はちぎれそうなほど痛くて、私は息を飲む。私は、一体どうしたらいいの? |
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私はなんと言っていいのかわからず、俯きながらその陽の中に出る。
私も少しだけ振り返って頭を下げる。 二人とも、話すきっかけがないまま無言だ。気まずい。もう、このままダッシュで逃げてしまいたい気分だ。 やっぱり、貴志はここの味を、彼女と食べてた味を覚えている。 私は下唇を噛んで泣くのをこらえて頷いた。ここで泣いたら、もっと惨めになるからだ。 だって、本当に悔しかったんだもの。本当に、本当に……。 |




