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『セプにぃ』

セプにぃ




アイツは9月生まれで長月っなんて少し安易な名前がつけられていた。
本当のところ、どうして長月なのか?
それは・・当の本人もその理由を知らないというから、それなりに名前は気に入っているということなのかもしれない。
だが、まるで其の名への反抗の如く・・あだ名を「セプにぃ」と、俺がヤツに有無を言わさないまま呼び出した。
最近では、「セプ」となっているのは・・思春期という気まぐれさの表れだと思う。


セプは、日本人離れした肌の白さと色素の薄い栗色の髪と瞳が特徴で・・ハーフなのでは?というのが、俺の受けたセプの第一印象であった。
純粋な秋田と北海道民の間に生まれたのに、妹とはまるで赤の他人と言われるほど似てない。
そんなちょっと日本人には珍しい特徴が揃ってしまったセプは、初対面の奴でも、なかなか忘れがたい存在だろう。
しかも、たまに何かを見透かしたような発言もあったり・・。
本当に不思議っ子で、なのに慕われる・・まっ、俺にとっては最高のダチだ。
そして現在、セプは俺たちより一学年上だが・・今は同じ学校同じクラスで、高校最後の年を過ごしている。




━あまりにも朝から懐かしさに浸りすぎ、猫背になっていた俺は学校に遅刻せまいと、少し足早に歩みを進めた。
そういや、去年はこの道をセプと一緒に歩いていったっけ・・。
それが今では、セプはもう教室で読書TIMEの最中だろう。
最近は何かと村田由佳さんの作品に没頭してるし・・。
本人曰く、
「トラあのな、家より学校の読書がイイんだぜ!」
と彼なりの根拠の上で、朝早くから学校に行っているらしい。
まばらながら、俺みたいな遅刻常習者が足早に俺の脇を通り過ぎる。
あるヤツは俺に「遅刻すんぞ!」とカマをかけ、あるヤツは「トラ〜ッ!」などと茶化してくる。
(多分、イズミの口真似のつもりだろう)
どいつもコイツも・・決して顔馴染ではない奴ばかりで、寧ろ俺のことを一方的に知ってる奴らが声をかけてくる始末だ。
これは別に俺が校内で目立つ存在なんかなじゃなく、きっとセプやイズミが・・だと思う。
いやっ、そう思っていたい!というのが、俺の本音でもある。

「だから、セプはいつまでたっても甘チャンなんだ」

ちょっとした変人な人気者には、このくらいの風変わりなあだ名がお似合いだ。
そう心の中で毒を吐いて、俺は正門をくぐった。



3年生はまるで牢獄の如くに聳え立つ別館に教室が構えられていて、いかにも「受験生としての勉強しやすい環境」作りに励んだ結果らしい。
幸い、昇降口は全学年共通なため後輩達の視線は自然というか・・未来のスーパースターへ注ぐ眼差しに溢れていた。
(流石に2年も経てば・・慣れるもんだな)
それが果たしてイイことなのかは別問題として、俺は声をかけられまいと無表情に無表情を重ねて人の間を潜り抜けようとした。
「もう、折角極上の笑顔で人が呼んでるのに・・トラ〜ッ!待ちなさいよッ!!」
グイィ〜ッと、制服のブレザーの裾を引っ張られ、俺は危うく尻餅を付きそうになった。
少々メンドーなことになってきたのが、目に見えているため、俺はいつも以上に無愛想な声で応対する。
「っんだよ、イズミ・・」
それ以上何か言えば、この恋人は何をやりだすか分かったもんじゃない!
これは、長年の付き合いによる勘・・もあった。
「手紙、預かったの。ハイッ」
そう可愛すぎる笑顔で言われても、どうせ読まずにいることをイズミは知らないからか、ポンッと俺の手に押しつける。
「あのな、毎度思うが、イラネ〜って言う勇気も、時には必要だぞ?」
実際、こういつも手紙を素直に承諾するから、イズミ経由で渡される機会がドドーーーンッと此処数ヶ月で増えたのも事実。
イヤッ、それ以前に・・この不要な手紙に連なる赤やピンクの文字を想像するだけで、俺のテンションは朝から下がる一方だ。
「まっ、これも彼女故の私の役目よ。じゃあ、またね」
そうして、始業チャイムと共に、彼女は教室へと姿を消したのだった。
(もう少しくらい、喋ってから教室入ろうぜ・・ったく)


「ほへぇ〜、トラは朝からモテモテなんだ」
まるで他人事な(実際はそうであるが)セプの茶化し反応は、俺を午後の授業へ
のやる気を一気に失わせるには充分過ぎた。
そうして、にこやかに握り飯をカブリつくあたりが、またセプを一段と憎たらしく見える要因となっていた。
俺にしてみりゃ、漸く午前のかったりぃー授業を終え、重い足取りで屋上に来た程なのに!
勿論、この屋上に鍵はかかっているんだが、其処は悪知恵を働かせて・・。
基本、毎日晴れている日は日光浴をしながら昼飯を取っている。
「んで、そのラブレターの中身は見たのか?」
「いんや、見る気もしねぇ・・男からだぜ!俺にどうしろと?」
教室に着いて宛名だけ見たら・・其処には男の名前が・・!
多少、偏見も含まれているが、俺はそういう趣味もないし、イズミって恋人もいる。
この学校の誰もが知っている(とイズミが言う)俺らなんだか・・ある種の挑戦状かもしれない。
「まっ確かにな。本当に人気者は大変だな。しかも、プッシュしたのがイズミってのも・・我が妹らしいがな」
あまりにも快闊に笑うセプに、多少の殺意を抱きながら、俺は残りの弁当をかっこんだ。
「まっ、取り敢えず見てみりゃイイじゃないか?折角イズミが後押しをしてんだし」
何も気にすることはない、とこの阿呆モノは、まだ今朝の手紙にカブリついていた。
「あらっ、お呼び?」
このタイミングの良さは、この兄妹にはアンテナでも付いてるような程で、俺は長年の付き合いの恐ろしさを感じた。
「噂するから、来ちまったか」
アハハッとイズミもセプ笑い、何だか真夏の陽射しまで一緒に連れて来て笑ってるみたい。
「それで、見たの?いつもそうだけど、トラのために書いた心の込もったラブレターなんだよ」
「兎に角、俺は見ないからなっ!」
こういう瞬間、イズミが俺の恋人なのか、思わず疑いたくなるのは・・当然だろう。
だが、これもイズミクオリティ(らしい)と割りきらなきゃ、絶対手紙を見る羽目になることも確定してる・・。
「まぁ、イイんじゃね?プレイボーイなトラちゃん、たまには真剣に読んでみよう!」
いかにも楽しそうに、そしてこれが妹の彼氏に対する発言だと思うと・・、全くイイ性格してる兄妹だ!
そうして、ラブレターという俺にとっての紙切れは、イズミの手により開かれ、セプもニヤニヤとその内容を読んでいた。
(一応、ネタにされること覚悟で手元にはあった)


「あちぃ〜なぁ。セプ・・」
どう転んでも、俺に勝ち目はないからか、この世界から一時的に隔離されたいと思った。
そして後には、イズミとセプのニヤリついた顔が手紙にと対峙していた。



『うわぁ〜綺麗だねっ!!』

そんな・・だからか?
今日は妙に昔の俺たちが登場するみたいだ、チリチリと焼けてゆく肌までも、戻りたがっている。
「はぁ・・戻れるなら、イイのにな」
キラキラした水面に3人の顔。
ガヤガヤ騒ぐ大人の輪から遠のいて、見つめ続けた真夏の陽射しからの贈り物。
今となっては・・あまりに当たり前過ぎる光に、何の感動も浮かばない。


「トラ、急にどした?」
セプにペチペチッと頬を叩かれ、俺は漸く短いトリップから生還した。
「んぁ・・ちょっと川に遊び行ってた」
目の前に広がるのは、半端なフェンスと、束縛を知らぬ空。
なのに・・・・こんな謎発言をしても、まるで見透かすようにセプは笑っている。
「届かない声でも聞いたか?」
「さぁ・・でも、懐かしくてもう少し彼処にいたかったかも」
探られて、当てられて、止め刺された。
それは空がセプに囁いたのか、セプが超能力を使ったのか・・凡人には理解出来ない領域だ。
「何を訳の分からない会話してるの?もうお昼休み終るよ!!」


こうして現実はやって来る。
イズミに手を引かれ、セプに冷やかされ・・届かなかった声を確かに聴いた。

『まだ、笑ってる?セプやイズミと一緒にいてよ』


其処には、自分にしか分からない、笑える理由があるんだから・・な。





【あとがき】
RADWIMPSの『セプテンバーさん』より、創作。
本気で9月までかかるんじゃないかと・・秘かにヒヤヒヤしてましたが、大急ぎで仕上げた(笑)
愛する奈姫嬢のためならね!徹夜覚悟さ!ぇ
因みに、セプにぃ・・色々過去をお持ちだから、また何かの機会に書けたらイイなぁ。
(もうあまり歌詞と関係ナイっす、ゴメン!)



奈姫、お誕生日オメデト(*^∇^*)


フライング更新!失礼しました・・・。

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