Innocent World いつだって君の傍にいて、いつも笑っていたい。 ずっとずっと手を握り合って・・ なんてもう、全ては夢物語なのかい? あれは夏休みの中で、一番暑い日だったと思う。 短い間彼女だった君と『友人』として逢った最初の日のことだった。 病室を訪ねると、これから散歩の時間だということで・・俺たちは、病院内を歩くことになった。 だけど、君の足腰は弱っていて、だから俺は率先して車椅子を引くということで漸く外出することになった。 そして君の案内で辿り着いたのは、向日葵が満開に近い・・そんな中庭の花壇だった。 「今の私たちの生きてる時代って、まるで『innocent world』よね」 公園によくある長い木製のベンチに、二人並んで座り君は空を見上げながら・・ポロっとそんな台詞を口にした。 「ん?『innocent world』って和訳すると・・『無邪気な世界』か?実際どうなんだろな〜・・」 誰に言った問いかけでもなく、俺は座ったままストレッチをして、クゥ〜ッ、と身体をベンチの背もたれ 部分に預けた。 頭上に広がるのは雲一つ無い夏晴れな空、風も・・そう強くは吹いておらず暑さを凌ぐには十分だった。 「ん〜・・どうなんだろ?」 ちょっと長めに沈黙を破った一言は、いつもの君らしさで溢れていた。 俺はそんな君の姿にチョット安心して、身体を元の体勢に戻し、君の横顔を見つめた。 「でもね、今私たちは17歳でしょ?・・あっ私はまだだけど・・そう考えるとね、今が一番楽しいんだよ?ってよく言われるんだ。そうすると・・とちょっと考えちゃうの」 そうしてはにかんだ笑みで俺を見ると、君はまた俯いてしまった。 その一言が彼女にとって何を意味するのか、俺はすぐ悟ることが出来た。 だが、今俺には彼女に何が出来るだろう・・そう考えてしまうと、考えないようにしていた事までが、頭を巡り始めてしまった。 おかげで・・俺は何時の間にか膝においてたてが拳をつくり、そこに力が入っていた。 「・・・・・・・・」 続く言葉が見付からず、俺はただ黙ってるしかなかった。 だが・・こんな状況では、少しも彼女が救われる訳でもなく一生懸命、次の言葉を捜した。 「じゃあさ、その色々考えてる中に俺って・・・・・いる?」 ホントはもっと気の利いた言葉を告げたかったが・・その言葉は余計彼女を困らせてしまったらしい。 今度はさっきより気まずい空気が流れていた。 「なぁ!!そろそろ戻らないとっ!・・ほら風もだいぶ冷たくなってきたし・・戻ろうか」 「あ、そうだね」 苦し紛れの逃げ道、俺と来たら・・これだから、爪が甘いと言われるんだ! そう自分を心の中で叱りながら、でも君は素直に俺の提案を受け入れてくれたから・・ 俺はこれ以上、手に汗を握ることはないと安心したのに・・ 「でも、もうちょっとココにいたかったね」 なんて言うから、俺も思わず「じゃあ・・・あと3分だけココに居る?」なんて言ってしまった。 君は凄く意外そうな顔で俺を見たが、すぐに満面の笑みで、ウンと頷いてくれた。 「はぁ〜でも良かった。今日がこんなに晴れてくれて!!」 彼女の今日一番の元気な声、それは一方で・・俺に影を落として・・訴えているようでもあった。 「だって、これが最期の外出許可だった・・かもしれないんだもん。ゴメンネ、急に呼び出しちゃったり して」 俺はそんな恐縮しきった君を見るのが辛くて辛くて・・目を閉じ、かぶりを振った。 「俺ってさ・・そんな役に立つようなヤツじゃないから、せめてこういう時はな・・」 男らしいところを見せたかったし、一緒に居たかったのが本音だ・・だから、呼んでくれてこっちが嬉しかった。 だが、こんなコトを言ってしまえば・・もう友達関係すら、壊れてしまいそうで・・俺はグッと自分を閉じ込めた。 「もう、そろそろ行かないとヤバイな・・戻ろう」 俺は彼女の車椅子を押して、ベンチを後にした。 そうして、来た時とは違った道を通り、白い棟のある建物の方から病棟へと向った。 君と歩く時の癖がまた再発したのか、俺の歩くスピードはゆっくりになっていた。 たとえ・・君がこうして車椅子に乗っていても、明らかに俺の歩くスピードはスローになっていた。 「あのね・・」 不意に開いた君の口。僕は軽く相槌を打ち・・君の言葉に耳を傾けるため、歩みを止める。 「ホント私の勝手なワガママで来てくれたり、一緒に居てくれて・・こんな私に…短い間付き合ってくれて・・今更だけど本当に有難う御座いました」 そういって振り向きながら頭を下げる君、もう最後の方はもう涙声だったが・・それはまるで最期の別れ の台詞のようでもあった。 俺は何も言わず、後ろから君を抱き寄せた。 もう・・君の涙は見たくなかった。 あの別れを告げた日ですら見せなかった君の涙。 どうして・・今に限って、そんな顔をするんだ・・? 「なぁ、そんな事言うなよな・・生きろよ、明日を見ようぜ?俺はまだ―」 その先は今言うべき台詞ではないと咄嗟に判断した。 何故なら、君が声を殺しながら俺のTシャツを濡らしていくのを感じていたから、だから俺はそんな君の存在をこの腕の中で・・シッカリ抱きしめた。 今の自分に出来る精一杯の想いを込めて・・。 幸い君が泣いた場所は、棟と棟の間で傍から見ると死角の位置だった為、周りを気にする心配はなかった。 それから暫くして君は顔を埋めたまま口を開いた。 「だって・・本当は早く忘れて欲しかった。アナタから告白された時だって、断ろう断ろうって、ずっと 考えたの。でも・・自分の気持ちに嘘はつきたくなかった・・」 彼女のコトバが・・・・・・・・・・俺のココロに浸透する・・。 「それが返って、アナタに甘える結果になって・・苦しめちゃったんだけど。そうして貴方の負担になっ ていったわ、重荷に・・・・だから!!」その先は言わなくても判っていたから、俺はもう一度力強く君を抱き寄せた。 初めて訊かされた君の本音、友達に戻るときでさえ教えてくれなかった君のうちに秘められた真実。 俺は正直驚いたが、ひとつだけ大きな誤解があった。同時に『それくらいどだっていうんだ?』とも感じていた。 「え・・、重荷だって?そんな荷物があるなら、半分ずつに分ければイイことじゃん。君が半分で、俺も半分・・まぁ俺の重荷なんて勉強以外ないに等しいかな。俺は少しでも君の力になりたいんだ」 ・・・・共に、闘おう・・・・ そういうと、君はまた申し訳なさそうに首を前後に振ってくれた。 俺はホッとして、君の柔らかい髪を優しく撫でた。 「そんな顔するなって、あのなぁ〜・・深く考え過ぎだって。俺はこの通り、見た目も中身も単細胞なん だからさ!!!」 そういうと君はこの日初めて、何の陰りも無い笑顔を見せてくれた気がした。 ―あの日から今日で2週間近くが経った。 丁度あの日を境に、だいぶ気温も秋へと歩み始め、流石の体力馬鹿な俺も今日は長袖のYシャツなくらい だ。 そして俺は、今日も学校帰りに君のいる病室へと向った。 秋の訪れを感じさせてくれる、白いカーテンのなびく部屋に居るあの部屋へ・・。 「おぅっ・・・・元気か?相変わらず、クラスのみんなも心配してたぞ?」 「ホントに〜?マナとかアイが叫んでる姿が目に浮かぶなぁ〜」 クスクスッと君はゆっくり身体を起こし、俺を迎えてくれた。 「でも、もう少しで退院だな・・んで、これが今日の授業のノート」 俺はカレンダーに付けられた赤い丸を横目にしながらハイ、と俺がノートを渡すと「いつも有難う」と君は笑う。 「それと、こっちが―」 俺はワザとらしく、もったいぶりながら・・学校鞄のリュックから大きな包みを取り出した。 「 H a p p y b i r t h d a y !!」 昨日の帰り際に駅前で買った、クマのぬいぐるみを彼女へ渡す。 「手術の成功祝いも・・兼ねてな」 ホントは買う時とか凄く恥しくて、何分も店内をうろついてしまった!!とは言えなかったが、ただただ 俺は頬を掻くだけだった。 まぁ〜あと2、3日で退院だというから・・その時はどこか出掛けよう、と密かに計画中なんだが・・。 「アレ・・?その様子だと自分の誕生日も忘れてたりした??」 「えっ・・・・・?あっ、違うよ・・今日が私の誕生日だって、知ってたの?」 そっちを突かれたかと思い、あぁ。とだけ軽い返事をした。 本当は・・昨日さっきも名前が出たマナに言われて知った、とは言えなかった。 (どうやら、俺が未練タラタラでいたことも・・気付いてたらしいし) そして俺は、ゆっくり君のいるベッドに座るのを見届けた。 これだけでも相当俺は勇気の居る行動だと思うのだが・・。 「それとさ・・ホント今更だけど俺たち、やり直さない?」 更に意外な発言に君は戸惑いを隠しきれなかった様子。 私なんか・・と終いに言い出したので、俺は咄嗟に手で君の口を塞いだ。 「・・ったくまだ言う?それは言わない約束だろ?」 そしてお仕置きだと言わんばかりに、今度は口唇を重ねた。 君は、何の拒否反応も示さなかった。 なので、俺を受け入れてくれたという・・また同じスタートラインに立った喜びも込めて・・言葉の要ら ない時間が流れた。 彼女の病室を後にして、再び外に出ると昼間の気温とはうって変わって、思わず身震いしてしまうほどの寒さだった。 闇に包まれた空を見上げると星たちが まるで俺らを祝福してくれる様に散々と眩いていた。 【痕】
暇つぶしSTORY完結。(をぃ;; 当時、授業2時間かけて完成に至ったと思います。ただコレは改良☆改訂版。しかも5回目(笑) 当時考えていた様々な疑問を彼らに課せてみた。 んで名前が無いのは…まぁ気まぐれ(苦笑) 勿論Innocent Worldはミスチルから拝借!!グフフw このBlogNAMEもミスチルですw |
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