ウェブカレdreamブログ

乙女ゲーム「ウェブカレ」をモチーフにした二次創作小説です。

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20年後―ほのか

メールを送信し終え、ふーっと大きく息を吐き出しながら、ガランとした部屋を見回す。
家具の中でも本当に残しておきたいものだけを貸し倉庫に送り、あとのこまごましたものは、ほとんどフリーマーケットに出したり、友達に譲ったりして処分した。
 
「すぐに帰ってくるんでしょ?」
 
と、友達には何度もそう聞かれたけれど、それは自分でもわからない。
とりあえず契約は2年だけど、気に入ったらそのままずっと住み続けるかもしれないし、もっと他に行きたいと思う場所が出てくるかもしれない。
先のことなんてわからない。
そのときの気分と、感覚次第。
 
 
アフリカで診療所を開きたい・・・それは、わたしの長年の夢だった。
 
医療設備と医師の不足のために、発熱や下痢など簡単な病気で命を落としていくアフリカの子供たち。
本来なら輝かしい未来への入り口である出産という場でも、妊娠や出産に対する知識が乏しいために、死産や妊婦の死亡率が圧倒的に高いアフリカ。
そんな世界があるということを、そして、何ひとつ不自由のない日本という国で暮らすわたしたちでも、意思さえあればその人たちを救う一端を担うことができるのだと・・・それを教えてくれたのは、1人の少年だった。
 
彼の影響で興味を持った医療への道。
親に強制されて、仕方なく進む道なのだと彼は言っていたけれど、本当は誰よりも医療に対して真摯な情熱を持っていることは、わたしにはわかっていた。
なぜなら、医療のことを話すときの彼の顔の輝き、ただ死を待つだけのアフリカ難民の人たちのことを話すときの彼の憤りや悲しみは、誰に強制されたものでもなく、彼の本当の心の声だったから。
 
そんな彼と心を通い合わせるうちに、彼の見る夢を一緒に見たいと思うようになった。
 
アフリカで一緒に診療所を開こう・・・今から思えば、幼稚な夢だったかもしれない。
でも、その夢に支えられて、わたしは看護士になった。
 
 
彼と一緒に見た夢に、少しずつズレが生じ始めたのは、ちょうどわたしが大学を卒業する年。
まだ2年大学生活の残っている彼と、社会という現実に直面し始めたわたしとの間に、気付かぬうちに小さなヒビが入り、いつの間にかそれは修復できないほどに大きな溝になっていた。
何度も話し合ったり、距離を置いたり、一時的に別れてみたり、そんな試行錯誤を繰り返しながらも、結局二人の夢の行き着く先は「別れ」だった。
 
青春時代の大半を一緒に過ごした彼との別れは、自分の体の半分をもぎ取られるような思いだったけれど、それでも看護士になって、毎日が新しい挑戦と失敗の連続で、ゆっくり悲しみに浸る暇もなく足早に日々が過ぎていった。
そんな慌しい毎日の中で、結婚、出産という転機が訪れ、忙しさはピークを迎え、それでも心のどこかにあの日の夢はずっと小さな火種となってわたしの心の隅にくすぶり続けていた。
 
あの日、二人で何時間も飽きることなく語り合った、アフリカへの夢。
彼と一緒にその夢を叶えることはできなかったけれど、その夢を今度は自分一人で見てみたい。
二人の見た夢が何だったのか、それを自分のこの目で確かめたい。
そんなことを思い始めた矢先に、訪れた第二の転機・・・離婚。
そのとき、わたしの決心はついた。
 
絶対、何があってもアフリカに行こう・・・。
 
その後、何年か経って、ようやく手にしたアフリカへの赴任。
もちろん、娘も連れて行く。
元夫とは、今でも良き友人関係でいるために、娘は常にどちらかの家を行ったり来たりしているけれど、好奇心の強いわたしに似たのか、アフリカ行きの話を告げると、諸手を挙げて賛成してくれた。
 
少女だったわたしが、一生懸命に心を傾け、彼の話す一語一語に釘付けになって聞いていたアフリカへの夢。
それを、自分のこの目で確かめる日がやっと来る。
それを思うと、今から楽しみで仕方ない。
アフリカで素敵なアフリカ人男性と出会う可能性だってあるしね。
 
元夫とは憎み合って別れたわけじゃない。
ただ、家庭という小さな枠の中にはまる生活がわたしには合わなかっただけ。
離婚後、わたしはお気楽な独身生活をエンジョイし、いくつかの出会いと別れを繰り返してきたけれど、結婚にはもう興味がない。
「寂しくないの?」なんて、人には言われるけど、結婚を前提としないですむ若いボーイフレンドたちに囲まれて過ごすのも、この年になったらいいものよ。
 
でもね、薫くん・・・。
わたしが今、こんな風に思えるのは、あなたが最後に言ってくれたあの言葉があるからだと思う。
 
「君はずっと変わらずに、自由な君のままでいてほしい。」
 
最後の夜に、あなたがくれたこの言葉。
わたしは、今までもこの言葉に従って生きてきて、それでとても幸せな人生だったし、きっとこれからもこの言葉を胸に抱いて生きていく。
 
そうやって、自由気ままに生きて、人生最期のときは、草間病院で迎えられるといいな。
最期の瞬間は、病床に、元夫をはじめとした歴代の彼氏をズラリと並べて、一人一人の手を握りながら、今までの感謝とお別れの言葉を言うの。
 
でもね・・・一番最後に手を握るのは、やっぱり薫くん、あなたがいいな。
わたしが一番輝いた、夢見た季節を一緒に駆け抜けたあなたの手を握りながら、「ありがとう」って言えたなら、それだけで十分、素晴らしい人生でしょ。
 
わたしは、これからも自由に自分の夢を追って生きていく。
あなたと人生を共にすることはできなかったけど、あなたと過ごした日々はわたしの心の中に美しい思い出として永遠に輝き続ける。
あの日、あのときわたしの人生にかけがえのない夢を与えてくれたあなたの人生に、幸多きことを・・・。
わたしは遠くの乾いた大地からずっと祈っているわ。
 
 
 
 
 
 
 

閉じる コメント(4)

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ほのかちゃん、なかなか未練があるみたい?
薫君と別れないでほしかったような気もします。

薫君も別れ際になんてヒドイ言葉をw
変わるのも難しいけど、全く変わらないでいるのも結構難しいような。

他の人達の20年後も気になります。
3組のうち、いずれかは続いているんでしょうか。楽しみ♪(^^)

2011/5/6(金) 午後 6:27 [ かおる(orum) ]

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かおるさん

多分、未練という意味ではお互いにまったくなくなることはないでしょうねぇ。
でも、多分、それはいい意味で。www

「ずっと変わらずにいてほしい」というのも、かおるさんの言う通り、ある意味ひどい言葉なのかもしれません。
でも、アフリカ行きを決意している今のほのかちゃんにとっては、それが励みの言葉になってほしいな。

他の3組の20年後も、これから少しずつアップしてきます。
お楽しみに♪

2011/5/6(金) 午後 6:39 [ ]

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うきゃー
離婚してたーwwww
そうかそうか。フムフムww
自分を持ち続けるのは、なかなか大事。

世間様からは、ちょっと違う人扱いされるのかもしれないけど。
羨ましいなーって思うひがみもあったりしちゃうのよねw
過去の思い出が1本軸、ブレないものになったからこそ。
また、自由でいられるのかなー
強いよねー かっこいい!!

人生最後のときwww
笑ったー
ぜひ、並べて欲しいwwww

2011/6/24(金) 午前 9:54 [ うり ]

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うりさん

お久しぶりー!
20年後も読んでくれてありがとう♪

あはは〜、ほのかちゃん離婚してましたね。www
なんか、あの人は結婚生活に向かない気がするのよね。
人生最期のときは、ちゃんと会長に看取ってもらいましょう。www

2011/6/24(金) 午後 6:56 [ ]


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