ウェブカレdreamブログ

乙女ゲーム「ウェブカレ」をモチーフにした二次創作小説です。

綾川 司

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きっといつか 第3話

君が学級委員になってから、国語準備室が明るくなりました。
毎日花瓶の花を活けかえて、部屋の掃除をしてくれるおかげで、殺風景だったこの部屋が生き返ったようです。
それに何よりも、明るい無邪気な君の笑顔は、どんな疲れも吹き飛ばしてくれるわたしの唯一の癒しなのです。
そんな君が今日はなぜか浮かない顔。

「どうかしましたか?元気がありませんね。」
「先生、結婚するって本当ですか?」

おや、これはまた唐突な質問ですね。
独身教師というものは、生徒たちのこういう噂の的になりやすいもの。

「誰かそんなことを言っている人がいるのですか?」
「クラスの女子が噂してます。先生がもうすぐ結婚するって…。」
「根も葉もない噂ですよ。そんな特別な人はいません。それに第一、竜士が学校を卒業して一人前になるまでは結婚なんてできませんよ。うちは、両親を早くに亡くしていますからね。」
「そうなんですかぁ…良かったぁ…。」

そう言って子供のように喜ぶ君を見ていると、思わずこちらの口元までほころんでしまいます。
君にとってわたしは少女がマンガの主人公に恋をするようなそんな淡い憧れなのでしょうね。
本当の恋はもっと切なく、苦しいもの。
特に若すぎる恋は悪戯にお互いを傷つけ合うものです。
君がどこかの少年と恋をして泣いたり傷ついたりする前に君をさらってしまいたいと思うけれど…。
でも、それが大人になるために必要な痛みなのだとしたら、わたしは黙って見守るしかないのでしょうね。

「これ、竜士くんにもらったんですよ。可愛いでしょ?」

そう言って、君はゲームセンターで取った小さなマスコットをわたしの机の上に飾ろうとしています。
弟に嫉妬するほど子供ではないけれど、まだ恋の痛みを知らない君たちの若さに嫉妬してしまいます。

いくつかの恋をして、傷つき泣きたくなったときはいつでもわたしの元に帰ってきてください。
わたしはいつでもあなたの涙を受け止める準備をして待っています。
そのときにはあなたはきっとわたしだけの素敵なレディになっているはずです。

神様、お願い 第2話

「おや、まだ学校にいたのですか?下校の時間はとっくに過ぎてますよ。」

国語準備室の扉を開けると、先生はデスクランプだけをつけた薄暗い部屋の奥で、山積みになった書類から目を上げ、微笑んだ。
その笑顔がわたしの胸を締め付ける。

今日、クラスの男子に告白された。
一瞬迷ったけど、やっぱり頷けなかった。

…先生に恋をした…。

叶わない恋だってことはわかってる。
こんなに近くにいても、自分の気持ちを伝えられない…伝えちゃいけない…。
この手を伸ばせば今すぐにでもあなたに触れることができるのに…。

「悩みがあるなら何でも先生に相談してくださいね。」

…って、そう言うけど、あなたを想うこの胸の苦しさを打ち明けたら、先生、あなたは困るんでしょ?

「無理に話さなくてもいいんですよ。あゆみさんがわたしに相談したいと思ってくれるまで、わたしはいつまでも待ちますからね。」

先生はわたしの肩に手をかけてそう言った。
その優しさはわたしだけに向けられたものでないことは百も承知しているけれど、こんな日はついその優しさに甘えてわがままを言ってみたくなる。

「家に帰りたくないんです。」
「ご両親と喧嘩でもしたんですか?先生がちゃんとご両親に話してあげますから、さあ、わたしの車で一緒に帰りましょう。」
「嫌!絶対帰らない!」

わたしは、まるで子供のようにその場にしゃがみこんだ。
わたし、何やってるんだろう?
なんだか、自分のバカさ加減に涙が出てきた。

「困りましたね…。じゃあ、こうするしかありませんね。」

先生はそう言うと、素早くわたしを抱き上げた。

「自分の足で帰らないと言うのなら、こうやって家まで連れて帰りますよ。」

先生…大好き…。
喉まで出かかったその言葉を飲み込むようにわたしは先生の胸に顔を埋めた。

「さあ、涙を拭いて。せっかくの美人が台無しですよ。」

神様…お願い、もしこのまま時を止めてくれるなら、わたしはもう一生恋なんてできなくても構わない。

夢の中で 第1話

急に目の前が暗くなって、わたしは夢の中で誰かに抱きかかえられて宙をフワフワと漂っていた。
目を開けたいけど開けられなくて、体も動かない。
でも、なんだか心地よくてまるでゆりかごに揺られてるみたいで…。

まだ頭がクラクラする…ここはどこだろう?
殺風景な天井に白い蛍光灯の光。
そうだ、わたし朝礼のときに貧血で倒れて…。
ここは保健室?

「もう目が覚めましたか?」

わたしの目に飛び込んできたのは綾川先生のちょっと心配そうな笑顔。

「あ…あの、わたし…」

わたしをここまで運んでくれたのは…先生?

「大丈夫ですよ。軽い貧血のようですね。」
「あ…いえ、わたし、もう教室に戻ります!」

そう言って起き上がろうとした途端、目の前の風景が崩れた。
よろめくわたしの体を力強く何かが支えてくれたと思った瞬間、先生の胸に顔を埋める格好になってしまった。
細身だと思っていた先生の腕がこんなに力強いとは思わなかった…。
そして、こんなに先生の胸が広いことも…。

「これだから目が離せませんね。」

先生はそう言って笑った。

「わたしの車で家まで送ります。さあ、荷物をお持ちしましょう、お姫様。」

わたしのカバンを持って保健室を出る先生の後姿を見ながら、このまま時が止まってしまえばいいのに、と思った。
先生の後姿に追いつくのはたったの一歩なのに、その一歩が今はとても遠い。

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