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Q7
アメリカは日米同盟をどう考えているのですか? A 戦後一貫して、日本の政府も国民も「アメリカに一方的に守ってもらっている。そのアメリカに『ノー」と言うなどとんでもない」という卑屈な思いを抱いてきました。
じつは、これこそとんでもない錯覚です。 1984年、私はアメリカ政府の正式な許可のもと、在日米軍基地を徹底的に調査し、日本で初めて日米同盟の実情を『在日米軍−−−軍事占領40年目の戦標』(講談社)という単行本にまとめ、出版しました。この調査を通じて、米軍基地を提供する日本はアメリカ本土と同じ位置づけの戦略的根拠地であり、すでにアメリカとの間で集団的自衛権を行使している状態にある、と考えるようになりました。 私の調査で明らかになったのは、日米安全保障条約は単に米軍基地を提供しているにとどまらず、アメリカが各国と結んでいる同盟関係のなかで、もっとも「双務的」な関係だという現実でした。日本以外のアメリカの同盟国に置かれた米軍基地は、企業にたとえれば支店や営業所のレベルですが、これから明らかにするように、日本に展開しているのは本社機能そのものと言ってよい巨大で戦略的な能力なのです。 そればかりでなく、アメリカが戦略的根拠地とする日本は、アメリカにとって唯一無二の存在であることも忘れてはなりません。 アメリカに基地を提供しているというと、兵隊がいて、軍艦がいて、戦闘機がいてという光景が浮かびますが、これは「出撃機能」と言って、大きく分けて三つある基地機能のひとつにすぎません。そして、出撃機能にしても、日本とアメリカの平和と安全を図るためには、数十万人の兵力を動かすことが前提になります。そうなると、燃料、弾薬、食料を見ただけでも、巨大な補給・兵姑能力がなければなりません。これが基地機能のニつ目、「ロジスティクスの機能」です。さらに三つ目として「情報の機能」も高いレベルになければなりません。 日本はアメリカにとって最大のロジスティクス拠点
このうちロジスティクスの要である燃料と弾薬について簡単に触れておきましょう。 私が調査した当時、アメリカは海軍が戦略的に使うための燃料を日本の3カ所に備蓄していました。トータルで1107万バーレル。国防総省管内で最大の燃料貯蔵能力を構成していたのです。内訳は国防総省第2位の鶴見(横浜)570万バーレル、第3位の佐世保(長崎)530万バーレル、八戸(青森)7万バーレル。これは、海上自衛隊を2年間支えられるだけの巨大な備蓄量です。 ちなみに、日本政府が92年の米軍撤退まで「米軍最大の軍事基地」と思い込んでいたフィリピン・スービック海軍基地は佐世保の半分以下、240万バーレルにすぎませんでした。その後、横浜の施設の一部が返還されるなどの動きはありましたが、基本的な姿は変わっていません。 弾薬のほうも同様です。たとえばアメリカ陸軍は広島県内に秋月(江田島)、川上(東広島)、広(呉)という3カ所の巨大な弾薬庫を置き、その貯蔵能力は11万9000トンと、自衛隊が持っているすべての弾薬11万6000トンを入れても3000トン分の空間が残る規模ですし、佐世保にある海軍と海兵隊の弾薬庫はアフリカ南端の喜望峰までの範囲で最大の陸上弾薬庫と明記されていました。 情報についても、青森県三沢基地を中心とする情報関連施設群は、戦後、英語圏5カ国(アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド)で維持されてきた通信傍受システム「エシュロン」の重要な一角をなしていると言われています。 以上を見れば、日本列島に置かれた基地機能がアメリカ本国と同水準にあり、文句なしに戦略的根拠地、つまりは「本社機能」だということがわかるでしょう。 2014年現在、在日米軍基地は83カ所にのぼり、そこに巨大な基地機能が置かれています。その日本列島から展開する海軍の第7艦隊や海兵隊など米軍の行動範囲は「地球の半分」、要するに太平洋の日付変更線からアフリカ南端まで、インド洋の全域と西太平洋、その沿岸部に及びます。 この「地球の半分」の範囲で行動する米軍を支えることができるのは、アメリカの同盟国のなかでも日本だけです。経済力の規模から考えても韓国や台湾、シンガポールでは米軍を支えきれませんし、日本のような工業力、技術力、資金力の三拍子が備わっている国はないのです。 日本がなければアメリ力は地球の半分を失う
忘れてはならないのは、アメリカの「戦略的根拠地」である日本列島を、日本の国防と重ねる形で守っているのは自衛隊だという現実です。防空任務ひとつとっても、アメリカの戦闘機は要撃(スクランブル)の任務には就いておらず、それは日本の航空自衛隊が行うという役割分担の関係なのです。 その日本が日米同盟を解消すれば、アメリカは「地球の半分」の範囲で軍事力を支える能力の80パーセントほどを喪失し、回復不可能なダメージを被ると考えられます。そうなってしまったアメリカの言うことなど、ロシア、中国だけでなく、北朝鮮までもが聞かなくなり、アメリカは世界のリーダーの座から滑り落ちる可能性が大きい。だからこそ、アメリカは日本国内でナショナリズムが高まり、日米同盟を解消する方向に動くことを懸念し続けてきたと言えるのです。 以上は、既に日本が集団的自衛権を行使してきた現実を浮き彫りにしてあまりあるでしょう。ところが残念なことに、日本の政府と国民にはアメリカに戦略的根拠地を提供しているという自覚さえ、まったくなかったのです。しばしば日本の政治家の口から「日本は基地を提供している代わりに守ってもらっている」という言葉が、まるで決まり文句のように飛び出します。しかし、私が「それでは、どんな基地を提供しているのか、それを踏まえたうえで『守ってもらっている』と言うのですか」と問いただしても、答えられた政治家は皆無に近い状態です。むろん、政治家が頼りにしている官僚や学者も、これまで紹介した程度のデータを押さえた答えを口にした人すら、いなかったのです。 アメリ力に物申せるのは日本だけ
日本人が日米同盟の現実について自覚していれば、そのときのアメリカヘの対応によって、日本の国益のみならず、世界平和の実現に大きく寄与することも可能になるはずです。 たとえば、アメリカが在日米軍基地を使って軍事力を行使しようとするときも、日本が掲げる平和主義や国連中心主義に合致する場合には容認するが、日本の原理原則と矛盾する 場合には在日米軍基地の使用を拒絶するということになれば、中国や北朝鮮にしても「アメリカが耳を貸す同盟国」として日本との関係改善に努めることになり、それが地域の安定につながるのではないかと思います。
日本がアメリカにとって最も重要かつ不可欠な同盟国であり、アメリカ合衆国の一部を構成しているとさえ言える現実は、中国の習近平国家主席に対するアメリカ側の発言にはっきりと現れています。 2012年9月17日、北京を訪問したアメリカのパネッタ国防長官は国家副主席だった習近平氏に対して、「尖閣諸島といえどもアメリカの国益であることをお忘れなく」と述べました。 2013年6月初旬には、国家主席となって訪米した習近平氏に対して、オバマ大統領が「中国はアメリカと日本が『特別な関係」にあることを理解すべきです」とまで述べて、尖閣諸島の領有権をめぐる中国の姿勢にクギを刺しているのです。 マスコミの報道だけを見ると、丁寧で紳士的な言葉遣いなのでアメリカの凄みが伝わってきませんが、「尖閣諸島はアメリカの戦略的根拠地である日本列島の一部であり、手を出したりすると容赦しないぞ」と怒りをあらわにしているのと同じことなのです。 アメリカは旧ソ連に対しても、「日本列島に対する攻撃はアメリカ本土に対する攻撃とみなす」と警告していました。これは、戦略的根拠地・日本列島を守り切ろうとするアメリカの決意表明でもあったのですが、日本の政府と国民は単なるリップサービスだと聞き流してきたのです。 |

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